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ミューレベルク原発、2019年に稼働停止決定

アーレ川の蛇行のように、ミューレベルク原発の歴史には紆余曲折があった Keystone

電力会社BKWは30日、ミューレベルク原発を2019年をもって稼働停止すると発表した。長期的に運営するのは、今後の政治、経済、安全基準のゆくえが不透明なことから採算が合わないと判断した。稼働停止までの6年間は、欠陥箇所の補強を続ける一方、水力や風力発電などへの投資を増やしていく方針だ。

 福島第一原発と同型で、同年代に建設されたミューレベルク原発は、今年で稼働開始から41年。これまで多くの欠陥が指摘されてきたが、今年3月の最高裁判決で無期限稼働が認められたことを受け、BKWは同原発を2026年までは稼働させる予定だった。

 しかし、技術面、経済面、政治面、安全基準面など、原発を取り巻く今後の環境が見通せないことから、BKWはミューレベルク原発の長期稼働を断念。中期的に見積もっても、こうした不安材料は取り除けず、同原発への投資分が十分に回収できる見込みがないと判断した。

今後も投資

 しかし、BKWは稼働終了となる2019年までは必要な投資を続ける。運営費及び維持費には約2億フラン(約219億円)、そのうち1500万フランを補強にあてる。特に、これまで欠陥が指摘されてきた冷却装置や貯蔵プールの補強に力を入れ、核安全監督局の要求に応える方針だ。

 今回の決定に伴う従業員の解雇は予定されていない。ミューレベルク原発に従事する専門家や技術者らは、稼働停止後も管理や廃炉作業に携わるという。

反原発運動は続行

 BKWの発表に対し、反原発派は全面的には賛成していない。ミューレベルク原発の即時停止を求めたイニシアチブ「ミューレベルク原発撤廃(Mühleberg vom Netz)」の代表、フランチスカ・ヘレンさんは「良い知らせではある」と話すものの、同イニシアチブを取り下げるつもりは全くないという。

 「稼働停止まで6年は長すぎる。ミューレベルク原発はすぐに止められる。欧州の余剰電力は多く、それを買えば電力は不足しない。BKWは同原発を補強するというが、もともと採算の合わないものを補強する意味がない。即刻停止すべき。国民の安全が何よりも優先されるべきだ」

 また、環境団体グリーンピース・スイス支部は、BKWの発表は「安全責任を回避したものであり、非常に危険な原発をまだ稼働させるという決定だ」とし、「この国のエネルギー転換を遅らせる」と批判。さらに、BKWが補強に充てる予定の1500万フランは、核安全監督局が要求する安全対策には全く足らない額だと指摘する。

 ベルン州緑の党も、BKWの補強対策を批判。核安全監督局は昨年12月、ミューレベルク原発の2017年以降の稼働に必要な安全対策をBKWに提示したが、「それに応えるにはBKWは4億フランの投資が不可欠」と指摘。国とベルン州は同原発の早急な稼働停止に向け、政治的圧力を強めるべきだと同党ホームページで主張している。

1971年 営業運転開始。
1998年 政府から2012年までの延長稼働許可が認められる。
2003年3月21日 核エネルギー法施行、稼働認可は連邦エネルギー省が管轄に。
2005年1月25日 運営会社BKW、政府に無期限稼働許可申請。
同年6月10日 政府は管轄外として、BKWの申請をエネルギー省に回す。
2006年6月14日 エネルギー省はBKWの申請却下。
同年7月13日 BKWは連邦行政裁判所に不服申し立て。
2007年3月8日 行政裁判所、BKWの申請の再審査をエネルギー省に命令。
同年4月26日 エネルギー省はこれを不服として連邦最高裁判所に提訴。
2008年1月21日 最高裁判所、行政裁判所の判決を支持。
2008年6月 エネルギー省、BKWの無期限稼働申請を公示。
同年7月 ミューレベルク原発近隣住民ら約1900人が原発の安全性を理由に異議申し立て。
2009年 連邦核安全監視局は同原発の安全性に関する見解を提示。
2009年12月17日 エネルギー省、ミューレベルク原発に無期限運転許可。
2010年 ライナー・ヴァイベル弁護士が中心となり、約100人の住民が行政裁判所にエネルギー省の決定に対し異議申し立て。
2012年3月1日 行政裁判所、ミューレベルク原発稼働許可を2013年6月28日に定め、BKW側に安全強化対策案をエネルギー省に提出するよう命令。
同年4月 BKWとエネルギー省はこれを不服として最高裁判所に上告。
2013年3月28日 最高裁判所、行政裁判所の判決を破棄し、ミューレベルク原発に無期限稼働許可を認める。

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