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ランビエール、世界選手権を目前に

「一度スウェーデンでの大会で、バイキングの角をつけたブロンドの女の子がTシャツを脱ぎ、裸の胸に書かれてある僕の名前を見せた。それが僕のスウェーデンのイメージ」と笑った Keystone

3月17日から始まる世界フィギュアスケート選手権大会を前に、同大会で2連勝し、「ダブル世界チャンピオン」の名を持つスイスのフィギュアスケーター、ステファン・ランビエールが「新たな気持ちで臨む」と抱負を語った。

フリーでは、今回が最後となる「フラメンコ」を踊る。

 ジーンズ、青いストライプのシャツに灰色のセーターというラフな姿で記者会見場に現れたランビエールは、矢継ぎ早に飛んでくる質問に、言葉を選びながらも率直に世界選手権へ向けての新たな抱負を語った。

初心に戻って再挑戦

 昨年から途切れなく続く大会やショーが一段落し、スウェーデンでの大会を前に一息つけたのではという開口一番の質問に、
「世界選手権が終わるまで休みはない」
 と、大会前の緊張感を漂わせた。

 大会に臨む気持ちを聞かれ
「自分が2回世界選手権でチャンピオンになったことを忘れ、いまは単なる1人のフィギュアスケーター。だから、今度の世界選手権で優勝するのだと言い聞かせ、練習に励んでいる。世界選手権をアタックするには大切な心構えだと思う」
 と新たな意欲をみせた。
 
 ライバルとなる日本の高橋大輔に話が移った。昨年12 月中旬に行われたトリノのグランプリ・ファイナルで高橋を抜いて1位になったことを聞かれ、
「とてもうれしかった。最後まで分からないのがコンクールの世界と思った。また、競争相手がいるのはいいこと。チャレンジ精神が湧き上がる、とても大切なもの」
 とコメントした。

 四大陸選手権での高橋の得点に驚いたか?との質問には、特に高橋にびっくりしたというより、全員の高得点に驚いたと答えながら、採点方法にも触れ、
「フィギュアスケートは本来、音楽、技術、などの要素がすべて調和して成り立つのに、今や厳格な技術に重点をおいた点数制となってしまったことに対して疑問を抱く。スケーターはそれぞれ体重も違えば、体の作りも違うのだから、厳格にするというのならそうした身体的違いまでも考慮すべきでは」
 と語った。

 ショートプログラムに関しては、トリノのグランプリ・ファイナルでは3回転アクセルもうまく行ったので、今度の世界選手権も同じシナリオで臨みたいと述べ、
「もちろんトリノよりうまくやりたいが、トリノと同じレベルで終わっても十分に満足する」
 と結んだ。特に3回転アクセルは自分のウイークポイントだと知っているので、十分に練習を続けているという。

最後のフラメンコ

 フリープログラムは、新しくなるのではという噂に反してフラメンコを踊る。しかしこれが最後になる。
「フラメンコを踊る最後の機会が世界選手権になると発表するのは悲しいこと。でも、同時に次のシーズンに新しいプログラムが誕生するという喜びもある」
 と語りながらも、
「いつもそうだが、これが今季最後の大会で、最後のフラメンコの練習をしているのだと思うと少しメランコリックな奇妙な気持ちになる」
 とフラメンコに対する思い入れを語った。

 フラメンコに関しては、特に2007年の世界選手権の東京大会の話を持ち出し、
演技中、観客のパッションが伝わってきて自分の内面の感情を盛り上げてくれたという。
「フィギュアスケートの、特にフリープログラムでは、振り付けはテクニックとしてあるが、表現されるものは内的な感情によるものが大きい。内から湧き出てくるものの強さによって毎回パフォーマンスが違ってくる。日本のファンは自分の感情を沸き立たせ、同時に相互的な交換があった」
 と振り返った。

 最後に今回の大会を前に、日本のファンに感謝の気持ちを伝えたいと語った。

swissinfo、里信邦子 ( さとのぶ くにこ )

1985年4月2日、スイスのヴァレー州、マルティニに生まれる

身長177cm

コーチ、 ペーター・グリュッター  

1992年、7歳でフィギュアスケートを始める

2005年3月、モスクワでの世界フィギュアスケート選手権大会で1位、19歳

2006年2月、トリノ冬季オリンピックで銀メダル
2006年3月、カルガリーでの世界フィギュアスケート選手権大会で1位

2007年3月、東京での世界フィギュアスケート選手権大会で3位

2008年1月、ザグレブでのヨーロッパ選手権で2位

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