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住む人がこっそり明かす観光スポット その4 ローザンヌ

「ローザンヌ」という街の名は有名な振付師モーリス・ベジャールのバレエ団があり、国際オリンピック委員会(IOC)の本部があることで耳にした人も多いだろう。いまだに多くの金持ちを惹きつけるこの街の魅力をローザンヌ在住の日本人に聞いて探ってみる。

ローザンヌはジュネーブから電車で約30〜40分。ジュネーブとは60キロほど離れたレマン湖畔にあり、対岸にはフランス領、エビアンが見える。坂が多く、一方通行だらけで、車での交通が困難な街としても有名だ。車を駐車場に置いて、歩き易い運動靴を履いて散策するのがベストかもしれない。

 ローザンヌの地形はやや複雑だが大きく分けて3つの地区に分けられる。まずは丘の上の旧市街、中間に位置する国鉄の中央駅、そして坂の下の湖畔にあるウシー(Ouchy)界隈だ。ホテルもその3つのエリアに集中する。

 これらの丘で区切られた地区をメトロがトンネルで突っ切って便利なのだが、2006年の1月から拡張工事のために閉鎖された。このため、あと2、3年は我慢して歩くかちょっと遠回りのメトロバスに乗るかしかない。長年ローザンヌに住み、ジュネーブに通勤している大久保敬三さんは「街が小さいので15分で横断できる」と言う。丘が二つあるローザンヌを歩き回るには前日にたっぷりと睡眠をとった方が良さそうだ。

まずはホテル

 ホテル選びだが、デラックス気分を味わいたい人は昭和天皇が泊まったこともあるという、由緒正しい5つ星の「ボー・リヴァージュ・パラス(Beau Rivage Palace)」が良い。値段はもちろん、470〜780フラン(約4万2000円〜7万円)と張るが眺めが素晴らしいとの定評がある。もう一つの5つ星、ローザンヌ・パラス(Lausanne Palace)の最上階はIOCのサマランチ前会長が改造させ、住んでいたことでも有名だ。

 もっと手頃な値段では「日本人が好きそうな小奇麗なところでしたら、湖畔では『モーベンピックホテル(4つ星)』か『ウシー城ホテル(Le Château d’Ouchy/ 3つ星)』をお勧めします」と大久保さん。中間地点の駅周辺を選ぶなら最近、改築工事できれいになった「アルファホテル(Alpha-Palmiers/4つ星)」が便利という。このホテルは食事も美味しく、タイ料理レストランもあるのが嬉しい。

楽しくて、美味しいコース

 さて、ホテルに荷物を置いて、さあ繰り出そう。まずは、大聖堂を中心とした旧市街をそぞろ歩きし、中世の街の雰囲気を味わうことからはじめるのがいい。屋根付き階段を上がって、創建12世紀のゴシック大聖堂に行く。レマン湖と街の全景が一望できるこのカテドラルの鐘楼に登るのも忘れないで。

 坂歩きでお腹が空いてきたら、大聖堂の下に位置する安いインド料理「ラクシミ(Laxmi)」に寄ってみては?と勧めてくれるのはローザンヌ歴12年の主婦、金子なみさん。「子供連れなら行き易いのがクレープ屋の『シャンドルール(Chandeleur)』」、子供コーナーや幼児用の椅子も揃えてある。金子さんがその他、ひいきの中心街のレストランには、ピザが美味しい「ブルスケッタ(Bruschetta)」やいつも混んでいて雰囲気が楽しいメキシカンの「ポコロッコ(Poco Loco)」がある。

 旅疲れでアジア料理が食べたい人は高めだけれど「スイス一おいしい中華」と大久保さんが絶賛の「キャナール・ぺキノワ(Canard Pekinois)」がある。いつも満席なので予約を忘れないようにとのこと。

文化を満喫したい人は

 さて、この街には文化の旅を満喫したい人に欠かせない美術館が幾つかある。まずは、IOC本部がある街としてのオリンピック博物館。古代から近代オリンピックの歴史を展示した博物館だ。大久保さんのお墨付きは博物館の最上階にある3つ星シェフ、フィリップ・ロシャの元で修業した日本人コックの高橋英寿氏が料理する博物館付属のレストラン(Le restaurant du musee Olympique)。値段も高くなく、休憩がてらにピッタリだ。ただし、お昼だけ営業。

 この他、「是非、足を伸ばしたいのはオリンピック博物館の並びにある、エリゼ写真美術館」と大久保さん。18世紀のお屋敷のたたずまいも優雅だが、3カ月ごとに写真家が変わり、同時に2〜3種類の展示をやっている。オリジナルプリントなどもあり、写真好きには欠かせない場所だ。

 大久保さん、金子さん、共に推すのは「アール・ブリュット美術館(Collection de l’Art Brut/生の芸術)」。精神病患者、犯罪者などの作品を集めた画家、ジャン・デュビュッフェのコレクションが美術館になったもの。「観て一番面白く、あそこでしか観られない」と大久保さん。

 もう一つ、近代、現代画家を中心とした展示の質で定評がある「エルミタージュ美術館(Fondation de l’Hermitage)」も外し難い。もちろん、その時やっている展示のテーマにもよるが、美術館自体が丘の上にある銀行家の邸宅を改造した素晴らしい環境にある。庭から見渡せるレマン湖一望も一見の価値がある。ローザンヌの中心街から外れた山の上にあるが、時間のある人は是非行ってほしい。すぐ近くにはローザンヌで唯一スイスらしい内装でスイス郷土料理が食べられる「ル・シャレ・スイス(Le Chalet Suisse )」があるので「組み合わせると良いのでは」と大久保さん。

散歩するなら断然ウシー

 さて、ローザンヌの散歩コースとして金子さんが断然お勧めなのはウシー界隈。オリンピック博物館から下って歩いていける。「天気が良いと本当に気持ち良い」という金子さんがよく歩くコースを教えてくれた。モントレー方面で隣町のプリイ(Prilly)までバスで行って、湖畔を戻って歩いてくる2時間の散歩コースだ。歩きながら豪邸を発見したり、ヨットを眺めたり、夏には子供用の電車もあるという。時間のない人は湖畔のドナンド公園だけでも歩いてみるとよい。

夜はフロンへ繰り出そう

 まだ、体力が余って「夜にも外へ繰り出したい」という元気な人には「フロン周辺が絶対」と大久保さん。ほぼ街の中心(駅と大聖堂の間)にあるフロン界隈は昔は倉庫街だったが、ここ15年ぐらいで再開発され、若い人たちのための「イン」な街となった。ディスコ、レストラン、バーや映画館などが盛り沢山ある。「歩けば好みの所が見つかるでしょう」という。大久保さんがあえて勧めるならワインバーの「ル・ルイ(Le Louis)」。スイス国外ではなかなか飲めないスイスワイン。スイスならではの品種のワインを飲んで、旅を満喫したらどうだろう。


swissinfo、 屋山明乃(ややまあけの)

- 中華、Au Canard Pekinois : Place chaudron, 1003 Lausanne / 021-329-0323、日曜休業。

- ワインバー(Bistrot-Vinothèque)、Le Louis : place de l’Europe 9, 1003 Lausanne / 021-213-0301、日曜昼休業。

- スイス郷土料理、Le Chalet Suisse : Route du Signal 41, 1018 Lausanne / 021-312-2312。

– イタリアン、La Bruschetta : av. de la gare 20, 1003 Lausanne / 021-312-5734。

- インド料理、Laxmi : esc. du marche 5, 1003 Lausanne / 021-323-0313、日曜〜月曜18時まで休業。

- クレープ屋、La Chandeleur : 9 rue Mercerie, 1003 Lausanne / 021-312-8419、日曜休業。

(インターネット上でサイトのないもののみ掲載)

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