スイスの視点を10言語で

スイスメディアが報じた#KuToo運動 読者の反応

ハイヒール着用禁止のサイン
ハイヒール靴での登山を禁止する看板 © Keystone / Christian Beutler

職場の女性へのハイヒール・パンプス着用を強制しないで――。日本で大きな議論を巻き起こしている「#KuToo」運動は多くのスイスメディアで報じられ、反響を呼んでいる。読者からはSNSを中心に多くの声が寄せられ、意見が交わされた。

ドイツ語圏の日刊紙NZZは6日付の記事外部リンクで、「靴」と「苦痛」を掛け合わせた「#KuToo」運動が起こった経緯を説明。世界経済フォーラムの「ジェンダーギャップ指数」で日本は149カ国中110位にランクインし、男女平等の点ではアジアの発展諸国にも遅れを取っていることに触れ、安倍晋三内閣が経済政策の中心に掲げてきた「ウーマノミクス(Womenomics)」は女性の社会進出を後押ししたが、「靴一つで大騒ぎする日本の労働社会が解決しなければならない男女平等問題は未だに多い」と指摘。また、根本匠厚生労働相の「社会通念に照らして業務上必要かつ相当な範囲」とした発言もまた、日本の労働環境がすぐには変わらないことを象徴しているとした。

スイス公共放送(SRF)は8日付に配信したビデオ付き記事外部リンクに、日本に詳しいフリージャーナリスト、マーティン・フリッツ氏のQ&Aを掲載。これまで日本の働く女性は「職場の華」といった立場を負わされる傾向があったとし、化粧をしたり、洗練された服装をしたりするなど、職場での身なりに注意を払う人は多いと説明した。また、今回の運動は日本の労働市場で起こりつつある「力の逆転」が後押ししたと分析。これまで労働市場では雇用者側が大きな権力を握っていたが、少子高齢化により力関係が変わり、労働者を確保するために雇用者は職場環境を改善する必要に迫られていると読み解いた。

外部リンクへ移動

一般の反応

#KuToo運動に関するスイスメディアの報道は反響を呼び、SNSやサイトのコメント欄を中心に読者や視聴者からは意見が寄せられた。

最も多かったのは#KuToo運動への共感の声だった。「金融業界で働かない一番の理由はこれ。パンプスやスカートなんて履きたくない。スイスでも禁止すべき」(Connie Talbotさん、SRFコメント欄)「スイスだったらこれはすでにセクシズムの域」(jean-claude albert heusserさん、SRFコメント欄)「1949年まで中国にあった纏足(てんそく)みたい」(BarbeBleueさん、無料紙20min仏語版)「(ハイヒールを履くと)姿勢も悪くなるし、歩くとうるさい」(EEKHさん、同)

一方、ヒールの高さを厳密に捉えて職場ルールに理解を示す声もあった。「特定の職業では制服や統一感のある服装が求められることはわかるし、3~4センチのパンプス着用が必要な場合があることも理解できる。ただ、ヒールが8~14センチの高さとなると、理解の域を超える」(Rolf Bolligerさん、SRFコメント欄)「ハイヒールというのはヒールが10センチ位ある靴を指すのであって、ここで言われている靴は、かかとに3センチ位高さのあるシックな靴のこと」(Knut Laumenさん、NZZのFBコメント欄)

また、パンプス・ハイヒール着用は「男女不平等」という、男性を比較対象とした見方には反論の声が挙がった。「今は大丈夫だと思うが、日本のサラリーマンだって気温が35度の真夏でもスーツのジャケットを脱がないようにという同調圧力があった」(Frank Shunkanさん、NZZのFBコメント欄)「スイスの場合はどちらかというと逆。女性は夏に風通しの良い透け透けの洋服を着ているのに、男性はハイソックスを履いてスーツを着ることが求められる」(August Meierさん、SRFのコメント欄)

スイスでは10日に国際労働機関(ILO)の年次総会が始まり、14日には全国で大規模な女性ストライキが行われるなど、現在は特にジェンダー問題に高い関心が集まっている。

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部