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『観て、理解して、好きになる』現代彫刻がいっぱい – 第六回スイス彫刻トリエンナーレ「Bad RagARTz」

これは何かな? 子供も興味津々 swissinfo.ch

いま、ザンクト・ガレン州(Kanton St. Gallen)のバート・ラガッツ(Bad Ragaz)では、温泉リゾートの開業175周年を記念して、第六回スイス彫刻トリエンナーレ・イン・バート・ラガッツ&ファドゥーツ「Bad RagARTz」(Bad Ragartz - 6. Schweizerische Triennale der Skulptur in Bad Ragaz und Vaduz)が開催中だ。今日は、広い空間を散歩しながら現代芸術を楽しむことのできるこの催しをご紹介しよう。

 チューリヒから100kmのところにある温泉リゾートバート・ラガッツ外部リンクは、日本人にとっては「アルプスの少女ハイジ」で、クララが温泉療養に来た街と言った方が馴染みがあるかもしれない。そう、この街はライン河を挟んで「ハイジの村」として有名なマイエンフェルト(Maienfeld)の向かいに位置している。

 中世から、この街の近くにあるタミナ峡谷(Taminas-Schlucht)の温泉はよく知られていて、 プフェファース修道院温泉(Bad Pfäfers)外部リンクがあることが知られていて、人びとが療養に来ていたが、厳しい崖の谷間にあったため、訪れるのも一苦労であった。

彫刻も木陰でひと休み swissinfo.ch

 そこで、タミナ渓谷からパイプラインで温泉を引いて、バート・ラガッツにリゾートホテル「ホーフラガッツ(Hof Ragaz)」を開業したのが今から175年前の1840年5月31日である。現在このホテルは、隣接する「クエレンホフ(Quellenhof)」の2つの高級ホテルと専用スパ「ToB」、ホテル宿泊者でなくても利用できるスパセンター「タミナテルメ(Tamina Therme)」、ゴルフ場、カジノを含めた総合リゾート施設「グランドホテル・バート・ラガッツ(Grand Hotels Bad Ragaz)」外部リンクとして、街の中心的存在となっている。

テーマカラーの青で塗られた猫 swissinfo.ch
思いもかけない所に彫刻が置かれている swissinfo.ch

  そして、第六回目となった現代アートの祭典「バート・ラガッツ 彫刻トリエンナーレ」外部リンクは、バート・ラガッツの存在意義を大きく変えたリゾート開業175周年を記念して、「青と水」をテーマに、2015年5月9日から11月1日まで開催中だ。「トリエンナーレ」は、三年に一度開催される美術展のこと。三年前の「バート・ラガッツ 彫刻トリエンナーレ」はのべ40万人の来訪者があったそうだ。今回は13カ国から90人の芸術家の作品が展示され、日本からも安田侃(かん)外部リンク氏の作品が展示されている。テーマは「観て、理解して、好きになる(sehen verstehen lieben)」だそうだ。

 私と連れ合いは五月の終わりに、このトリエンナーレが開催されていることを知らずに、カフェで一服するために、久しぶりにバート・ラガッツに寄ったのだが、街の様子がいつもと違うのにすぐに気付いた。街の至る所に大きな彫刻が置かれているのだ。

  ツーリストインフォーメーションの前に掲げられているのは、映画「エイリアン」の美術で世界的に有名になったH.R. ギーガー(Giger)の特徴ある作品。また、トラクターからペンキが滴っているような作品や、噴水と一体になっている作品など、子供たちも触って楽しめる作品があちらこちらにあった。 

H.R. ギーガーの作品はツーリスト・インフォーメーションに掲げられていた swissinfo.ch

 作品の多くは、広い「グランドホテル・バート・ラガッツ」の敷地内、主に庭園に置かれている。私が行った日は週末だったので、多くの人びとが散策がてら彫刻を鑑賞していた。

散歩の途中にアートを鑑賞 swissinfo.ch
たくさん歩いて疲れたら、素敵なカフェでひと休み swissinfo.ch

 参加作品は屋外に置かれているので、入場料などを払う必要はなく誰でも楽しめる。一方で、希望者は有料ツアーに参加してガイドによる解説を聞くことができる。また、興味深いのは、満月の近くの週末に合計6回開催される「満月ツアー(Vollmondführungen)外部リンク」で、月夜に浮かび上がる彫刻を見て回るものらしい。明るい月の光に照らされる彫刻は、昼とはまったく違う表情を見せてくれるに違いない。

 この夏スイスを訪れ、「アルプスの少女ハイジ」ゆかりの土地を見て回る予定のある方は、ほんの少し足を伸ばして、バート・ラガッツも訪れてみてはいかがだろうか。水着を着て楽しむ遥か遠くのアルプスを眺めることの出来る温水プールを満喫することもさながら、街の散策と買い物の合間に、ぜひ期間限定の現代彫刻の祭典も楽しんでほしい。

ソリーヴァ江口葵

東京都出身。2001年よりグラウビュンデン州ドムレシュク谷のシルス村に在住。夫と二人暮らしで、職業はプログラマー。趣味は旅行と音楽鑑賞。自然が好きで、静かな田舎の村暮らしを楽しんでいます。

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