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ロシア人がスキーリゾート地を征服するとき

ロシアからの観光客は近年、増加の傾向。スイス観光業界の大切なお客様である。 Keystone

スキーシーズンとはいえ正月が終わった途端、客足が途絶える。そんな1月、サンモリッツ、ツェルマット、ヴェルビエ、クラン・モンタナなどの観光地にロシア人が押し寄せるようになったのは、観光業界としては誠にありがたい現象である。                         

キリスト教でもロシア正教は、クリスマスが1月。ロシア人が国内外を旅行する時期は他のヨーロッパ人と外れている。しかもロシア人の旅行者は大金持ち。高級リゾート地でショッピング三昧も稀ではない。スイス観光局は今シーズン、ロシア向けのキャンペーンで、更なる観光客を動員しようとしている。                  

チャールズ英皇太子も毎年訪れると言われ、世界各国から貴族やお金持ちが集まるスイスのスキーリゾート地にロシア人観光客も多く訪れるようになったのは最近のこと。
高級志向で沢山お金を現地に落としてくれるロシア人のニューリッチ。スイスの観光地は物価が高いことが欠点といわれているが、ロシア人にとってみればこれが魅力という。物価が高いことが生活水準の高さと繋がってロシア人には「高品質」に映るらしい。1年を通してみれば、ロシア人観光客の数は高が知れている。しかし、正月後、一旦観光客の足が遠のく時期はロシア正教のクリスマスにあたり、スキーリゾート地はロシア人で埋まる。

スイスがロシア人に見出す魅力と観光客がスイスに見出す魅力

 観光局は今シーズン、ロシア人をターゲットとしたキャンペーンを張った。すでに15万部のパンフレットが刷られ、雑誌などに織り込むなどして宣伝をしている。ポスターやビデオをロシアの旅行会社にも送った。もちろん、ロシアの主要なインターネットのサイトに宣伝を載せることも忘れてはいない。
 2002年に10%増加したロシアからの観光客はその後、3.2%ずつのゆっくりした伸びで推移している。ロシア人観光客の占める割合は昨年で全体の1.3%で、総計、24万泊だった。
 ロシア人のお気に入りの観光地は人気順に、サンモリッツ、ツェルマット、クラン・モンタナ、ヴェルビエと続く。いずれも高級リゾート地。その中でも5星のホテルにロシア人は泊まる。
「日本人観光客は、ホテルの部屋にスリッパやバスローブが備え付けられていないと不満。ロシア人はホテルの近くにあるショップに注目する」とベルビル観光局のマドレーヌ・サビオ氏は、ロシア人のショッピング好きを指摘した。「ロシア人が宝飾店に入ったら、文字通り店をすっかり空にして帰る」。ロシア人向け旅行会社を経営するセドリック・ノウジャイン氏は、並々ならロシア人のお金持ち度をこう表現した。
 

お金持ちのいるところに行くロシアのお金持ち

ロシア人は「プレスティージ」を重視するので「世界でも有名な観光地に行きたいと思うのでしょう」と語るのはスイス観光局のダニエラ・ベアー氏。旅行ができるロシア人は一般に大金持ちで「お金持ちのいるところに行くのは、やはりお金持ち。スキーをするにもインストラクターを引き連れてスキー場にお出ましになる」。
 需要に応え、スキーのインストラクターとして東欧出身者が雇われるようにもなった。もともと寒さには慣れているロシア人。大雪になろうがスキーに熱中するというから、スイスの観光地としては願ってもないお客さまなのである。

スイス国際放送 佐藤夕美 (さとうゆうみ)意訳

2002年はロシア人観光客が10%増加した。
2003年は3,2%増で、全体に占める割合は1,3%。
スイス観光客は今年、ロシア向けキャンペーンを張る。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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