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ナイキ、ユニクロから「冷や水」フェデラーがユニクロのウェア着用で

フェデラー
2日のウィンブルドン選手権で新スポンサーをお披露目した男子テニスのロジャー・フェデラー Keystone

広告塔としてのセレブアスリート獲得を狙う激しい企業間競争の中で、ナイキに「サービスエース」を浴びせた企業がある。日本のファストファッション小売ユニクロだ。

 2日のダウ平均株価で、最も値を下げた銘柄の一つがナイキだった。スイスのテニスのスーパースター、ロジャー・フェデラーがナイキとの長期契約を終えユニクロと3億ドル超の契約を結んだという報道に投資家が反応。前週好調だった株価の利益を一部確定したことも影響した。

 先週、ナイキの株価は膨れ上がり、先月29日は前日比11.1%高と記録的な上昇を見せた。この直前にナイキ(本社・米オレゴン州)が発表した3~5月(第4四半期)決算は、北米の売上高が4四半期ぶりに増加。同社は2019年の成長率見通しを上方修正した。

 フェデラーは20年以上、ナイキのアスリートとして同社のシューズとウェアを着用。その間、男子シングルスのグランドスラム通算20勝という記録も打ち立てている。

 しかし、ディフェンディングチャンピオンとして9度目の優勝を狙う今年のウィンブルドン選手権で、フェデラーが身につけていたのはユニクロの立ち襟シャツとパンツだった。さらにユニクロの親会社ファーストリテイリングが2日、このテニスのスーパースターが新たなグローバルブランドアンバサダーに就任する契約を結んだと発表した。

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フェデラーほどリッチになれないスイス人アスリート

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 複数の報道によると契約は10年超で3億ドル超。スポーツ選手とアパレル企業間の契約では過去最高額レベルだ。今年3月1日に終了したナイキとの契約は10年超、1億2千万ドルだった。

 ユニクロはスポーツシューズのメーカーではない。このためフェデラーはウィンブルドンでも特注のナイキ製シューズを履いていた。今後しばらくはその状態が続くと見られる。

フェデラー効果

 ユニクロの主力商品はスポーツウェアではない。しかし世界のスポーツ業界で最も顔の知られた選手と言っても良いフェデラーを獲得したことで、同社が過去に結んだどの契約よりも高い効果を生みそうだ。

 2012年、ユニクロはノバク・ジョコビッチ(セルビア)が世界ランク1位に上りつめた直後、5年契約を取り付けた。日本の錦織圭はこれまで長い間、ユニクロのグローバルブランドアンバサダーを務めている。

 ユニクロの創設者兼会長の柳井正氏は発表文で、両者の新しいパートナーシップはテニスコート上にとどまらないと説明。「テニスで新たな高みへの挑戦を続けるフェデラー選手をサポートし、彼と共にテクノロジーやデザインの分野でもイノベーションを起こして行く」とした。

 フェデラーを失ったことは、ナイキにとってはそれほど痛手ではないかもしれない。テニス界にはほかに優秀な選手が大勢いるからだ。例えば世界ランク1位のラファエル・ナダル、四大大会の女王セリーナ・ウィリアムズ、次世代のスター、スローン・スティーブンス、ニック・キリオスがそうだ。

 米証券会社エドワード・ジョーンズの小売アナリスト、ブライアン・ヤーブロー氏は、フェデラーはスポーツ界のビッグネームかもしれないが、ナイキにとってテニス衣料品は「取るに足りないもの」と話す。ナイキの主力はランニング、バスケットボール、サッカー関連の商品だからだ。

バスケットボールは別の話

 その意味で投資家が注視するのは、米バスケットボール選手のレブロン・ジェームズ。ロサンゼルスの男子チーム・レイカースと総額1億5400万ドルの4年契約で合意した。

レブロン・ジェームズ
男子バスケットボールのレブロン・ジェームズ Keystone

 ジェームズはナイキと生涯契約を結ぶ数少ないアスリートの一人。そのジェームズの移籍は10億ドル以上の価値があるとされ、西海岸のファン向けのジャージやシューズの売上に拍車がかかると見られる。ジェームズは過去8シーズン連続で所属チームをNBAファイナルに連れて行った実力者だ。クリーブランド・キャバリアーズもジェームズが在籍していた2015~16シーズンに、歴史的な初タイトルを獲得している。

 ナイキが先月発表した2018年5月期の通期決算では、売上高が364億ドルで時価総額は1284億ドルに達した。ファーストリテイリングの2017年8月期の通期売上は1兆8600億円と過去最高。時価総額は450億ドルに上った。

 ナイキの2日終値は1.7%安の78.35ドル。ダウ銘柄(全体では0.2%高)で下から3番目に低調だった。ただ2018年はこれまでのところ25.3%上昇している。

 ファーストリテイリングは今年10.1%上昇。東証株価指数の6.7%を上回る。

 現在世界ランク第2位のフェデラーは2日のウィンブルドンを第1シードで出場。初戦をストレート勝ちで飾った。

 ナイキからコメントは出ていない。

Copyright The Financial Times Limited 2018

(英語からの翻訳・宇田薫)

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