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イタリア北部ジェノバで橋が崩落「スイスではありえない」と専門家

イタリア北部ジェノバで14日、幹線道路の橋が崩落し、多数の死傷者が出た。現場は交通量の多い場所として知られていた。スイスのメディアは「スイスでは起こらない事故だ」と伝えた。

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スイス公共放送(SRF)報道番組「Tagesschau」2018年8月14日放送

 スイスにも多くの道路橋がある。連邦運輸省道路局(Astra)によると、通常の橋1500本、道路の上を越えるために設置される架道橋が1600本、道路などの下をくぐるアンダーパスの形状の橋が2千本以上あり、同局がこれらの橋の維持管理を行っている。Astraの広報担当トマス・ローバッハ氏が国内における道路橋の事故防止策を語った。

橋の維持費に予算の最大3分の1を投入

ローバッハ氏が大衆紙ブリックに語ったところによると、道路予算の総額は年間13億フランだが、橋の維持費に2~4億フラン(約220~440億円)が投じられている。

スイス公共放送協会(SRF)ニュース: ジェノバのような道路橋崩落事故がスイスで起きる可能性は?

トマス・ローバッハ: 私たちの業務は、道路橋を常に安全な状態で運用することです。コンディションの多少の異常では、橋の崩落はほぼ起こらないと言って良いでしょう。

SRFニュース: なぜそう言えるのですか?

ローバッハ: 道路橋は(異常がないか)絶えずチェックしています。担当部署の職員が日々現地で安全点検を行い、異常があれば直ちに報告します。すべての橋は5年ごとに定期点検が行われます。橋の近くで事故や火災が発生した場合は、橋に被害がないか調べます。

「橋の調査は終わることがない」ートマス・ローバッハ、Astra

SRFニュース: 5千本以上に及ぶ橋の安全点検は可能なのですか?

ローバッハ: 計画次第ですね。どの橋をいつ点検したかは把握していますし、5年ごとの定期点検も記録に残します。必要な作業はAstraだけでなく、関連の技術会社も行っています。作業は絶え間なく続いています。橋の調査は決して終わることがありません。

SRFニュース: 橋や陸橋の監視にドローンを使っていますか?

ローバッハ: 最も標高が高い橋は(ティチーノ州の)レベンティーナにあり、支柱は高さ110メートル超にもなります。このため安全点検にはまずドローンを飛ばし、映像を確認して精密な検査が必要かどうか判断します。こうした場所の第一段階のチェックにドローンを使用することは有用といえます。

SRFニュース: 道路橋を不安定にする要因はどのようなものが考えられますか?

ローバッハ: 業務が適切に行われていたと仮定すれば、地震などの大規模災害といった外的要因でしょう。スイスの国道の耐震性は比較的高いといえます。地震のほかには洪水、地すべり、落石、大規模火災も要因となりえます。しかし、本来の道路管理業務が行われていれば、橋の崩落がスイスで起こるとは考えにくいでしょう。

スイス人の犠牲者はゼロ?

スイス連邦外務省は、イタリアの橋崩落事故でスイス人の犠牲者が出たという情報は入ってきていないとしている。

SRFニュース: ジェノバの橋は1960年代に建設されたものです。スイスにも同時期に建設された橋がありますが、橋の古さはリスクになりますか?

ローバッハ: 橋の耐用年数は75~90年ですが、それより長く運用することも可能です。年数の古さだけでリスクの程度は測れません。国道橋のほとんどは建設されてから30~40年経ちますが、それ以上古いものはありません。すべて崩落の危険はありません。きちんと維持すれば、長期間の運用が可能になるのです。

「世界では1年に数回発生する」

連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)のトマス・フォーゲル教授(構造設計・建設)もドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーのインタビューで、ジェノバの橋崩落事故はスイスでは起こりにくいと指摘する。「おそらく点検段階で気づくだろう。橋を建設する段階でも、崩壊につながるような明らかな亀裂やゆがみがないか確認する」と語った。

フォーゲル氏はその一方で、このような橋の大規模な崩壊事故は世界中で毎年、数回発生するとも述べたが「全ての崩壊事故を把握しているわけではない」と付け加えた。しかしこのような事故が起こったのが隣国だった場合、不安はいっそう増す。「例えば南米のどこかで起こった事故ならば、スイスでこのような事故がなぜ起こらないのかという言い訳がすぐ見つかる。しかしそれがイタリアだった場合は同じようにはいかない」

(独語からの翻訳・宇田薫)

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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