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お笑い文化 スイス人漫才師シラちゃん 「闇営業は個人の問題」

フリップを持った男女

国際夫婦漫才コンビ「フランポネ」のシラちゃん(左)はスイス・ジュネーブ出身。マヌーと組んで2019年4月に吉本興業からデビューした。ノーベル平和賞受賞者のムハンマド・ユヌス氏と吉本興業が提携した「ユヌス・ソーシャルビジネス」にも参加している

(本人提供)

厚切りジェイソン、パックン、チャド・マレーン。今も昔も茶の間で愛される日本の文化「お笑い」に挑戦する外国人は少なくない。夫婦漫才コンビ「フランポネ」のシラちゃんもその一人。お笑い厳禁とされるスイス・ジュネーブ出身の彼女の目に、日本のお笑い界はどう映るのか。スイスなら闇営業にどう対応するのか。

フランポネのシラちゃん

1980年生まれ、スイス・ジュネーブ出身。イタリア人の父とフランス人の母を持つ。母語はフランス語。ジャン・ビアジェ総合文化学校他のサイトへを卒業後、庭師や警備員、税理士事務所の事務員などの仕事に就く。ジュネーブ州オネ(Onex)の市会議員を兼業で務めたこともある。

2009年に商社マンでベルギーで勤務していたマヌーさんに出会い、12年の帰任に合わせて日本に移住、結婚した。マヌーさんが18年3月に勤務していた会社を退職して、吉本興業の芸人養成所、吉本総合芸能学院(NSC)に夫婦で入学。19年4月に吉本興業から国際夫婦漫才コンビ「フランポネ」としてデビューした。

現在は日本で唯一フランス語で漫才ができる芸人として、ヨシモトホール(渋谷)での出演や民間の日本語教室などで「漫才で覚える日本語」の講師など日本を拠点に活動している。来年2月にはスイス・ローザンヌで開かれるジャパン・インパクトに出演し国際デビューする予定。 

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スイスインフォ:日本のお笑いに出会ったのはいつですか?

シラちゃん:子供のころから日本の文化が好きでした。小さいときは芸者になりたかったけれど、そのころスイスでは売春婦のイメージがあったので、父親に反対されました。当時は欧州で日本のお笑い番組はあまり見られませんでしたが、「風雲!たけし城」は有名で、私も姉とよく見ていました。

マヌーと結婚して2012年に日本に移住して、ユーチューブやテレビでお笑い番組、コマーシャルをたくさん観るようになりました。初めて見た時は、言葉は分かっても、何が面白いのか全然分かりませんでした。今も時々あります。

例えば「飴はあめぇ(甘い)」「カレーはかれぇ(辛い)」といったおやじギャグ。なぜ日本人が笑うのか分かりません。フランス語にも同音異義語はたくさんあり、それを並べる言葉遊びはありますが、フランス語圏ではそれほど面白がらないです。個人的にはブラックジョークが大好きですが、日本では厳禁です。

スイスインフォ:スイスと日本のお笑い形式はどのように違うんですか?

シラちゃん:そんなに違いませんが、欧米ではピン芸人が舞台に立って社会的な風刺やブラックジョークを並べるスタンドアップ形式が一般的です。でもそれは日本ではツッコミがなく悪口を垂れ流しているだけのように見えてしまい、受け入れられないと思います。

反対に、日本のようにボケとツッコミがやり取りする形式は、スイスではあまりウケないと思います。なぜそんな対話形式を取るのか、分からないでしょう。

Franponais

夫婦漫才「フランポネ」の漫才「スイス」の動画

スイスインフォ:言葉の壁は感じますか?

シラちゃん:日本語は12年に移住してから3年間語学学校に通い、今も勉強していますが、難しいです。しゃべるのがとても速いし、学校で習う日本語と全然違います。

また、私はスイス出身なので日本でスイス関連のイベントでネタを披露したいのですが、スイス大使館が主催するイベントは(スイスで主要な公用語の)ドイツ語で出ることを求められます。だから出るのはベルギーやフランスに関連するフランス語のイベントになってしまいます。ドイツ語を求められるのは、スイス国内でも同じですが。

スイスインフォ:スイスのユーモアは地域色が強いと言われますが、出身地のジュネーブにはどんなジョークがありますか?

シラちゃん:ジュネーブをネタにした話はあるけどあまり面白くないです。ジュネーブは昔からユーモアに厳しく、お笑いは絶対ダメでした。それには歴史的な理由があります。16世紀の宗教改革で、ジュネーブはカルヴァン派の拠点になりました。カルヴァン派はジュネーブで演劇を上演することを禁止しました。服も暗い色のものしか着てはだめで、寂しい街でした。フランス人哲学者ヴォルテールは、スイスとの国境の街フェルネにジュネーブ人向けの劇場を造り、喜劇を書きました。

ジュネーブで人気があるのはアム・ロマノフ、フローレンス・フォレスティ、レザンコニュなどフランスのコメディアンばかり。スイス人で有名な人はいません。

お笑い文化 スイス流ユーモアのちょっとした歴史

スイス人はユーモアに欠けつまらない、と思われることは多い。それでも、あるいはそのせいで、スイスとスイス人にまつわるユーモアに富んだ逸話には枚挙にいとまがない。その歴史を見てみよう。

スイスインフォ:そんなジュネーブ出身のシラちゃんがなぜ日本でお笑い芸人になろうと思ったのですか?

シラちゃん:2009年にベルギー駐在中だったマヌーとオンライン語学学習パートナーとして出会い、11年7月にパリで開かれていたジャパン・エキスポを2人で見に行ったんです。その時、日本のお笑いがまだ欧州では知られていなかったことに気づいたマヌーが「これは市場が伸びる余地がある」と言い出して、私もいいなと思いました。

スイスインフォ:スイスでも芸人になる道は厳しいのですか?

シラちゃん:とても難しいです。ジュネーブにはお笑い専門の学校はないので、フランス語圏スイス人が学校に行きたかったらカナダのケベックにある「ナショナル・ユーモア学校他のサイトへ」を目指します。厳しいオーディションなど入学審査をパスするのはとても難しいです。ただ無事に卒業すれば一定の仕事がもらえます。

吉本総合芸能学院(NSC)の入学審査でもオーディションはありますが、才能よりは芸人になりたいという本気度が問われる。やる気があれば入れるので、簡単で驚きました。でも卒業しても仕事がない。今は2人の貯金を切り崩したり、新宿にあるルミネTHEよしもとや渋谷にあるヨシモト∞ホールで呼び込みのアルバイトをしたりして生活しています。薄給ですけど。

スイスインフォ:日本ではお笑い芸人が事務所を通さない「闇営業」をしたことが話題になっていますが、スイスではそうした問題は起こりにくいのでしょうか。

シラちゃん:ありえます。老後までにお金が底を尽きてしまうことへの心配は誰でも抱えています。でもヤクザに関わることはないです。日本では新宿のゴールデン街や浅草の三社祭に行ったら誰でもヤクザと知り合いになれると思いますが、スイスでマフィアと知り合いになることはまずありません。

今回の問題は個人の問題で、個人と会社は違うと思います。欧米でも芸人は事務所に所属しますが、立場は個人事業主のようなものです。だから事務所に対する帰属意識は薄く、何か問題があっても事務所ではなく個人で責任を負います。欧米でも俳優などのスキャンダルは報じられますが、事務所が記者会見を開くことはないでしょう。

「舞台に立つのが好き」と話すシラちゃん。故郷の家族・友人は「私が何をしているか詳しくは分かっていないと思う」

(本人提供)

スイスインフォ:岡本昭彦社長のパワハラ発言も問題視されていますが、スイスではこうしたパワハラがありますか?スイスでも徒弟制度がありますが、「家族のような関係」とは違うのでしょうか?

シラちゃん:スイスではパワハラや上下関係という概念はないですね。今回の件ですが、日本独特の家族主義だと思います。

吉本は政府のクールジャパン事業や国連の持続的な開発目標(SDGs)プロジェクトにかかわってきました。でも今回反社会的勢力とかかわりを持ったことが問題視され、そうした公的プロジェクトへの関与が打ち切りになるかもしれません。フランポネはフランス語でも漫才ができるので、欧州・アフリカのフランス語圏に日本のお笑いを輸出するという目標を掲げているのですが、プロジェクトが凍結になってしまうかもしれず心配しています。

スイスインフォ:それでも日本のお笑い芸人になってよかったと思いますか?

シラちゃん:よかったです。言葉の壁は高くても、舞台に立つのが大好きです。

swissinfo.ch

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