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アルプス地域の観光 温暖化にも負けない!

夏に一日、二日かけ、自然の豊かさを発見する山歩きも「好みで選ぶ公園」の一つのコース

(Parc naturel régional Gruyère Pays-d’Enhaut)

スイスアルプス地域の氷河面積は100年後8割も縮小。2050年代にはすでに、標高1500メートル以下の降雪量がほぼ半減。そのため低地域のスキー産業は大打撃を受けるといわれている。

だが温暖化にはプラス面もある。地中海の猛暑のバカンスに耐えられない人が山を再発見する可能性は高い。アルプス低地域の観光は今後いかに生き延びて行くのか。その対策を探った。

雪が半減

 「アルプス全域はほかの同様な地域より温度上昇が顕著で、過去250年間で2度上昇。それは温暖化のなかった時代比で2倍の上昇率に相当する」
 と連邦国土開発局 ( ARE ) の報告書は述べている。

 現時点でもすでにアルプス氷河の後退は著しく、アルプス低地域の降雪量も1980年以降、その減少傾向が頻繁に観測されている。
 「今年は雪が降ったが、昨年や一昨年は降らず、この地方では人工雪に頼った」
 とヴォー州アルプス地域の観光開発を実現するコーディネーター、フィリップ・ソルムス氏は言う。

 さらに、「気候変動調査機関 ( BOFK / OcCC ) 」の報告書「温暖化と2050年のスイス」によれば、標高1000メートル前後に宿泊施設がありゲレンデが標高2000から3000メートルの低地域のスキー場は2050年には大打撃を受ける。現在ほぼ100%保障されている雪が50%から60%に減少するからだ。ヴォー州のアルプス地域は、フリブール/フリブルク州、ティチーノ州などのアルプス地域と共にこうしたスキー産業存続の危機にさらされている場所だ。しかもこれらはスイスの全スキー場の3分の1に当たる。

レザン 村

 「こうした標高の低いスキー場は、人工雪に多額の投資を行い、何としてもスキー場を維持しようとしている。しかし長期的視野からスキー場を閉鎖し、冬に行えるほかの観光を探し、また夏の観光の幅をもっと広げるよう舵を切り替えるべきだ」
 と、州と健康保険会社が支援する「山岳地域のスイスグループ ( SAB ) 」のトマス・エッガー氏は主張する。

 また、ヴォー州のアルプス地域は、州の観光多様化計画に沿いこうした形の開発を地域全体で推し進め、その計画を実現していくソルムス氏というコーディネーターが存在するという意味で、スイスで唯一の場所だと高く評価する。

 この地域にあるレザン ( Leysan ) 村は、レマン湖の東部エッグル ( Aigle ) から登山電車で20分程上った風光明媚な場所だ。かつて結核の療養所として発展したが、現在はホテル学校、アメリカンスクール、公文レザンアカデミーなど学生が人口3800人のうち1000人を占め、スキー場としても有名だ。

 ここに2008年、夏から秋にかけマウンテンバイクを楽しむバイクパークができた。また、2010年末には屋外で陸上競技も行える総合スポーツセンターも完成する。
「ホテルを使ってセミナーや会議を行うという、特に冬向けの観光計画も来年から始まる。レザンは、夏の観光を強化し冬の観光の多様化を目指す、いわば一つのモデル的な村だが、それでも冬のスキーを諦めるよう強く説得はできない」
 とソルムス氏は言う。今でもこの地域全体の観光収入の8割が冬のスキーに頼っている上、人の考えを急に変えることは難しく、少しずつずらしていくような形で多様化を実現するしか道はないという。

「メニューによって選ぶ公園」

 「温暖化はマイナス面だけではなく、チャンスでもある。今後猛暑を避け山を再発見する人も増えていくだろう。さらに低地域の開発は高齢化社会のチャレンジにも繋がる。高齢化に伴い、この年齢層が好む観光、例えば地元の産物を味わったり、山歩きであったり、歴史探訪などを開発していく必要がある」
 とエッガー氏は発想の転換を迫る。

 ヴォー州アルプス地域にある「地域自然公園 ( Parc nature régional ) 」は、こうした観点からして、理想的な開発を試みようとしている。14の村が集まり地域自然公園としての認定と開発資金を政府と州から2009年に獲得。年齢や好みに応じてコースを選べる「好みで選ぶ公園」プロジェクトを立ち上げた。

 学校生徒には野生動物や自然を発見するさまざまな山歩き、高齢者などにはこの地域特有の野生の水仙を見に行くコースや特産のレティバチーズの生産方法を学ぶため山小屋まで訪ねるコースもある。また歴史文化探訪として、この地域には画家バルチュスの住んだロッシニエールがあるが、さらに2009年にバルチュスの墓を含むチャペル「シャペル・バルチュス ( Chapelle Balthus ) 」を完成させた。
 
「ただ、これは規模が小さく、やさしいタイプの観光開発。観光バスが何千人もの客を運んでくるタイプのものではない。そもそもこの地方には大型企画に投資できるだけの資金がない。従ってスキー場も維持しながら、できる範囲で小さな企画を行っていくというのが現状だ」
 とソルムス氏は言う。また、基本的にスキーに取って代わるような奇跡的な大型観光は今後存在しないだろうと考えてもいる。

 しかし、こういうソルムス氏にも密かに温めている企画がある。オーストリアのアルプス地域ヴェルフェンヴェンク ( Werfenweng ) 村の成功例「車を使わない観光」をヴォー州にも導入しようというものだ。電車で来る、ないしは車をパーキングに置きっぱなしの環境 ( エコ ) 客には、電気自動車のタクシーを呼ぶ携帯電話の無料使用や、電気自転車やの自由な使用など多くの特権が与えられる。
 
 「車の排気ガスや騒音のない山は深い休息になることを人々は発見し始めている。人の環境に対する意識の変化を逆に利用した、ヴォー州にもピタリと当てはまる企画だ。ただ都会の人間の意識が急速に変わっているのに対し、村人は車の生活に慣れ過ぎていて、わずか数メートルの歩行者ゾーンを作るのにも反対する。しかし、いつかはこうした人たちを説得していく」
 とソルムス氏は語り、夢は捨てないと付け足した。

里信邦子( さとのぶ くにこ) 、swissinfo.ch

スイスのアルプス地域の温暖化

スイスのアルプス地域はスイス全土の6割に当たる。この地方での冬のスキー観光は重要な産業で、地域総生産の8割を占める地域もある。
「気候変動調査機関 ( BOFK / OcCC ) 」の報告書「温暖化と2050年のスイス」によると、アルプス全域での温暖化による気温の上昇は、ほかの同じような地域より著しく、過去250年間で2度上昇。
このため観光業界は多大な影響を受け、氷河の後退による観光客の減少や、凍土の溶解が引き起こす土砂崩れやスキー場のインフラの安全性に問題が発生する。
しかし、最も打撃を受けるのは標高の低い地域のスキー産業。ヴォー州、フリブール州、ティチーノ州、スイス中部、東部のスキー場は標高が低く、2050年代には降雪量がほぼ半減すると見られている。
一方、スイス全体のスキー場164カ所のほぼ半分に当たる、高地のヴァレー州、グラウビュンデン州のスキー場は、冬の降雪量がかえって増加するため2050年代でもスキーは保証されている。
低地域では、冬のスキー観光に取って代わる観光の開発や、夏の観光の増強が叫ばれている。地域全体の開発をコーディネーターが行っているという意味で、ヴォー州のアルプス地域は先駆者的存在。ここでは2005年に企画書が完成し、その実施にフィリップ・ソルムス氏が選ばれた。
連邦国土開発局 ( ARE ) は以上のような温暖化によるスイス観光業を関係者が協力して模索、検討するため、2010年5月4、5日「アルプス地方の気候変動に対応する」会議を開催した。
各州政府と健康保険会社が支援する「山岳地域のスイスグループ ( SAB ) 」は、2008年以来温暖化の状況を分析し、推薦する対策やプロジェクトを州や市町村にアドバイスしている。

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