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インクルーシブ教育の限界? 教室で問題行動を起こす児童、問われる学校の対応

手を挙げる幼稚園児

幼稚園児の大半は行儀が良い一方で、教室で問題行動を起こす児童の数が増加しているとメディアは報道する

(© Keystone / Christian Beutler)

スイスでは、教室で問題行動を起こす児童の数が増加しており、教師は対応に追われている。幼稚園から既に問題は始まっていると報道は指摘する。しかし、そのような児童に対して何ができるかについては意見が分かれる。

スイスでは約10年前に障害の有無にかかわらず共に学ぶインクルーシブ教育が導入された。インクルーシブ教育の下で、行動に問題を抱える―「感情的・社会的な特別の支援」を必要とする―子供の多くが普通学校に通う。特別支援学級や特別支援学校で教えていた以前の教育モデルとは対照的だ。

特別支援教育

スイスでは特別支援教育は法律で定められており、2008年以降は教育政策を管轄する各州の裁量に任されている。各州が独自の教育概念を策定してきたため、教育現場での適用にも州間で違いがある。特別支援教育は、さまざまな障害のある子供や学習が困難な子供を対象とする。また、才能のある子供や現地語を話さない子供への支援も含む。

>>スイスの特別支援教育についてもっと読む

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ただ最近は、教室で問題行動を起こす児童や教室の備品を振り回す児童、暴力的な児童の対応に追われる教師のエピソードを取り上げ、インクルーシブ教育は本当に機能しているのか疑問を投げ掛ける報道が目立つ。

議論の再燃

チューリヒとその近郊都市ヴィンタートゥールで実施された調査を引用したドイツ語圏の日曜紙ゾンタークス・ツァイトゥングの記事他のサイトへは、この議論を再燃させた。同記事によると、5人に1人の児童が学校職員によって行動に問題があるとされた(950人、調査対象校の児童数22%)。調査は250人の教師を含む450人の学校職員を対象に実施された。学級を担任する教師の60%が言うことをきかない児童が最大の負担だと回答した。

ただ、2018年に発表された同調査は対象をチューリヒとヴィンタートゥールの学校に限定しているため、調査で判明したことがスイス中で起きていると言うことはできない。主任調査員で「特別な教育的ニーズ」を専門とするチューリヒ教育大学他のサイトへレト・ルーダー他のサイトへ教授はそう話す。

「とは言うものの、調査結果は他の調査・研究から得られた国際的知見に合致し、学校における問題行動に関する最新の知識とも矛盾しない」

言うことをきかない幼稚園児

ゾンタークス・ツァイトゥングによれば、他の州でも問題は―幼稚園でさえ― 起きていることが報告されている。4歳児の方が13~14歳の生徒よりも問題行動を起こす子供が多い、というジュネーブ州教育局のデータ(未発表)を同紙は引き合いに出した。バーゼル・シュタット準州など他の州でも年齢の低い児童の問題が報告されている。

フィリップ君の場合

チューリヒ郊外の幼稚園に通う4歳のフィリップ(仮名)君はよく、先生の言うことを無視したり、先生の言うことに反抗したりしていた。また、他の園児にけんかをふっかけたり、他の園児の絵や工作を壊したりした、とフィリップ君の前担任教師はゾンタークス・ツァイトゥングに対し話す。問題が深刻化したのは、フィリップ君がひどく怒って、他の園児を叩き、おもちゃを壊した後だった。その教師はフィリップ君を年長に進級させることを拒否し、フィリップ君はより手厚い支援が受けられる小規模の幼稚園に転入させられた。

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「今日、幼稚園児や小学生の約5分の1はすでに教えることが難しい子供達だ」とバーゼル・シュタット準州教職員連盟他のサイトへのジャン・ミシェル・エリティエさんは記事中で答える。また、特別支援学級の段階的廃止や、家庭で子供は友達と遊ぶよりむしろテレビやパソコンの前で多くの時間を過ごしていることを、問題行動を起こす児童の増加の要因として、エリティエさんは挙げた。結果として、子供の欲求不満への耐性や集中力の低下を招いていると言う。

問題はフランス語圏スイスでも

言うことをきかない児童の問題は、ドイツ語圏スイスでは数年前から認識されてきたが、フランス語圏スイスでは最近になって認識され始めた。

ゾンタークス・ツァイトゥングの記事と並行して、フランス語圏の日曜紙ル・マタン・ディマンシュ他のサイトへは、フリブール州が言うことをきかない児童のための特別支援学級をどのように始動させたかを取り上げた。また、ヴォー州は、児童の親、教師、社会事業や教育事業を支援するため、段階的に1200万フラン(約12億9600万円)を投入する予定だ。

学校は何ができるか

スイスのインクルーシブ教育は危機に瀕しているとドイツ語圏教職員連盟(LCH他のサイトへ)の会長ベアト・ゼンプさんは考えている。LCHとフランス語圏の教職員連盟とが発表した最近の調査他のサイトへによると、問題行動を起こす児童は教師の約90%にとって最大の問題だ。また、教師もインクルーシブ教育も「限界に達し」つつある。

「我々は特別支援教育の資格を持つ教師やソーシャルワーカーをもっと多く必要としている。そして、インクルーシブ教育に十分な時間を割けるよう、教師の負担を軽減する必要がある」とゾンタークス・ツァイトゥングが5月に出した追跡調査記事の中でゼンプさんは強調した。特別支援学級への全面的な回帰は否定しながらも、場合によっては「慎重な評価」の後に例外を設けることはできるかもしれないとゼンプさんは考えている。

インクルーシブ教育賛成派の主張他のサイトへによれば、特別支援学級という不名誉に耐えられる子供はいない。さらに、インクルーシブ教育を受けた(特別支援が必要な)子供はその後の職業生活により良くなじむことが出来ているだけに、多くの場合、みんなと一緒に学ぶことがこれらの子供たちにとって最良の方法だという。

チューリヒとヴィンタートゥールの調査から得られる教訓がある。「問題行動は多くの教師にとって最大の課題だが、インクルーシブ教育の下でも、根拠に基づくアプローチを取れば、上手く対処できることを調査結果は示している」とルーダー教授は話す。問題行動への具体的なアプローチは、学校のプログラムから個人的措置まで多岐にわたる。

このような根拠に基づくアプローチは、状況のより良い理解、新しい行動指針の策定、教師と児童との関係改善につながるだろうと同調査は指摘する。


(英語からの翻訳・江藤真理)

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