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ウィリアム・テルとスイス建国の歴史   人類学者に聞く

8月1日はスイスの建国記念日。建国の英雄としてウィリアム・テルがしばしば引き合いに出されるが、人類学者ファブリジオ・サベリ氏によると、自由と独立を体現する英雄テルと同国には密接な関係はないという。

スイス人がテル伝説を好むのも、ブランドを身に付けるのと同レベルの話だとサベリ氏は話す。多言語国家スイスでは、全国民が共有できる英雄伝説が生まれにくいのが背景にあるようだ。

——「ウィリアム・テル」とはそもそも何ですか?

 スイスが創り上げたお話だ。

 テルは自由を尊び、権力に屈しなかったという人物像で広く伝わっているが、実際のスイス人とは何の関係もない。スイスには、権力に屈せず闘ったという歴史はほとんどない。自由という言葉もあいまいだ。

——テル伝説がスイスと関係ないのに、スイスの広告によく使われるのはなぜですか?

 シンボルとして使いやすいからだろう。テル伝説をスイス人が尊ぶといっても、表面的なものにすぎないと思う。

 今ではテルよりももっと身近なシンボルが存在する。スイス連邦鉄道(SBB)や、国内で人気の乳酸飲料水「リヴェラ」などがそれだ。

——スイスに国民的英雄は必要ないのですか?

 必要だ。スイスはこれまでに何度か国民的英雄を作ろうと試みたことがある。例えば、第2次世界大戦で活躍したヘンリ・ギザン将軍を英雄にしようとする動きもあった。だが、うまくいかなかった。

 スイスは多言語国家で、しかも各市町村(コミューン)、各州(カントン)の主権が強い現行の連邦主義体制下では集団意識は育たず、国民的英雄が生まれる下地がない。

 英雄はむしろ、各地域の独自の文化から生まれてくる。従って、テルが存在されたとされる中部ウーリの州民の間でテルは真の英雄と位置付けられているはずだ。 


 スイス国際放送  アレクサンドラ・リチャード   安達聡子(あだちさとこ)意訳 

補足情報

ウィリアム・テルとは:

スイス建国の英雄。

オーストリアの悪代官が自分の帽子に敬礼をしなかった弓の名手テルに、息子の頭の上にのせたりんごを射るように命じたという話。

伝説では、テルは悪代官を殺し、これを契機にスイスは独立に向かったとされている。

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