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ジャスミン革命から2年


チュニジア、経済変革が緊急課題


ダニエレ・マリアーニ, チュニスにて


革命から2年たった今でも、失業は社会の最大の問題 (AFP)

革命から2年たった今でも、失業は社会の最大の問題

(AFP)

「仕事!自由!尊厳!」と叫びながらベンアリ政権に抗議したチュニジア国民。あのジャスミン革命から2年が経つが、多くの国民にとって仕事に就くことは、いまだ夢の話だ。スイス連邦外務省開発協力局(DEZA/DDC)はこの分野でチュニジアを支援する。

 「テレホンオペレーター募集(男女不問)」。これはチュニジアの新聞に掲載された、月600チュニジアディナール(約3万7000円)の求人広告だ。現地の雇用市場をみてみると、ヨーロッパの言語に精通した大卒者には、こうした広告の仕事さえ、なかなか手に入らないという印象を受ける。

 「印象ではなく、それが現実だ」と、首都チュニスで行われた2013年世界社会フォーラム(World Social Forum 2013)に参加したスイスの支援関係者に向かって宣言するのは、チュニジア大学卒業生失業者組合(UDC)のメンバー、ベルガセム・ベン・アブダラーさんだ。UDCは、2010年12月に起こった革命の火付け役となったいくつかの組織の一つ。「仕事、自由、尊厳」というスローガンは、革命時にこうした組織の抗議運動から生まれたものだ。

 チュニジア政府の公式統計によると、2012年末の失業者数は65万3000人で、これは人口の16.7%に相当する。だが、この数字を多くの人が納得していない。例えば、UDCによれば失業者数は100万人にも上り、そのうち3分の1が大学を卒業した高学歴若年者だというのだ。

 しかし、状況はさらに深刻化している。「不完全就業者は増加し、主に物価の急激な上昇が原因となり、社会不安が広がっている」と、レッド・アタック・チュニジア(Raid Attac/Tunisie)のメンバー、ファーシ・チャムキーさんは説明する。2012年、チュニジアのインフレ率は5.6%といわれたが、地元の消費者保護団体によると、実際は10〜15%と推定される。

スイスからの開発援助

「アラブの春」後にスイスは、北アフリカ諸国が「革命後の経済的移行」をスムーズに行えるよう開発援助を強化した。

チュニジアでの開発援助は次の3点を基本にしている。

-民主化への移行を支援し、同時に人権擁護を推進。スイス政府はチュニジアのラジオ放送や選挙の民主化などを助けている。

-経済発展と雇用創出を支援。自国での生産力を伸ばすよう助け、またプロジェクト「小規模企業支援イニシアチブ(I-SEMER)」でカセリーヌ(Kasserine)地域の水のインフラの整備を援助している。

-チュニジアからの移民とその保護。スイスとチュニジアは移民に関し三つの協定を結んだ。スイスは、チュニジアへの「本国送還」やチュニジアの国境整備などを支援。

失われた経済ビジョン

 「誰も、どうしたら80万人もの失業者を減らすことができるのか分からない」と、今年3月末チュニスで開催された世界社会フォーラムに参加した、経済学者で世界銀行のコンサルタントも務めるハイディ・スライブさんは言う。「だが最も深刻な問題は、今までのモデルが明らかに終わりを告げたということだ。かつて、チュニジアでは大学卒業証書は社会的地位を得るのに必要とされていたが、今では高学歴も役に立たない」

 チュニジアの革命は、期待されたほどの成果をこれまで挙げていない。「ベンアリ政権の頃と、経済的にも社会的にも何も変わっていない。まだ新自由主義の道を辿り続けている」と、強い口調で話すベルガセム・ベン・アブダラーさんは、数万人もの他の青年と同様、時給4チュニジアディナールの家庭教師をしながら、かろうじて生活している。1人の若者が新しい会社を起こそうとするのは至難の業だ。「いまだ官僚制が強く、融資を受けることはとても難しい」と、自然科学科卒業のアブダラーさんは話す。

 だが、チュニジアの将来についての討論では、今のところ経済問題は取り上げられていない。「アンナハダ党(チュニジアのイスラム系の政党で現在、連立政権与党)は、毎週国会で一夫多妻制、女性は男性の補助的存在などと、自分たちの党を際立たせる発言のみを続ける。だが、革命中の重大なテーマについては一切触れない。今チュニジアが抱えているのはイスラム教をめぐる諸問題ではなく、貧困と失業問題なのに」と、記者のソフィア・ハンマーミさんは言う。

新たな雇用を生み出す

 まさにこうした状況のチュニジアを支援するため、スイス連邦外務省開発協力局は、雇用を生み地元企業の競争力の向上に集中してきた。2013年のチュニジア経済支援計画に計上された予算は、3000万フランに上る。そのうち3分の2が新規事業に充てられている。

 例えば、プロジェクト「小規模企業支援イニシアチブ(I-SEMER)」を立ち上げた。このプロジェクトの狙いは、2年前の革命の中心地となったカセリーヌ(Kasserine)、シディブジド(Sidi Bouzid)などの貧困層の多い四つの地域で、およそ1万人分の雇用を生むことだ。

 I-SEMERは、時には金利(およそ15%)が高いと批判されることもあるマイクロクレジットを活用しているが、今のところ順調に利益を生んでいるようだ。

 「マイクロクレジットはこれまでに1800件の貸し付けを行っている。計算上、1件あたり平均2.5人分の雇用を生んでいることになる」と、連邦外務省開発協力局のダニエレ・ミューリーさんは説明する。

スイスのプロジェクト

 国連工業開発機構(UNIDO)およびチュニス環境技術国際センター(CITET)と共同で経済的支援をするスイスは、より良い資産運営法や再生可能エネルギーに関する技術革新を武器に、チュニジア企業の競争力を向上させるプロジェクトを実施する。また、200人のチュニジア人の太陽光発電設置技術者も育成される。

 「プロジェクトの主な狙いは、環境分野への事業進出は経済的視点から見て利益につながるということを理解させることだ」と、連邦外務省開発協力局と共同で事業を行う、ジュネーブの環境ビジネス専門企業ソフィエス(SOFIES)社のアルバン・ビッツさんは指摘する。

 「例えば、ある大きなホテルで、プールの水のシステムに改善を施した結果、1泊1人当たりの水の使用量を3000リットルから700リットルに低減することができた」と、ビッツさんは話す。

エネルギーの節約

 チュニジアでデーツ(ナツメヤシの果実)を生産する最有力企業バクパ(Vacpa)社は、1200人の労働者(殆どが女性)を雇用している。環境ビジネス専門企業によるコンサルタントをうまく活用した75企業のうちの一つだ。

 「デーツの生産では、冷却システムにエネルギーを多く消費する上、洗浄などにも大量の水を使用する」と、同社のアフェフ・フトウヒさん。「コンサルタントの指導で、総エネルギー消費量を5%低減させるという目標が達成できた」と説明する。

 「これでおよそ3万ユーロ(約387万円)も節約できた。エネルギーコストを低減できる分、別の投資に回すことができるため、これからも省エネを続けていくつもりだ」とフトウヒさんは言う。この節約で新たな雇用を生むことができるかもしれないからだ。


(伊語からの翻訳 リッソーネ光子), swissinfo.ch



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