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福島第一原発事故から4年 スイスで脱原発を訴えるデモ

「フクシマ、チェルノブイリ、すべての原発の停止を」、「スイス・ミューレベルク原発の停止を」など、各々が異なるメッセージを掲げる。しかし共通のキーワードは「脱原発」。デモはENSIから少し離れた専門学校のキャンパスで行われた Keystone

スイス・アールガウ州のブルックで福島第一原発事故から4年目の3月11日、スイスの脱原発団体がデモを開催した。ブルックには、日本の原子力規制委員会にあたる連邦核安全監督局(ENSI)がある。デモに集まった約200人の市民は、アルプホルンの音が流れる中、平和裏に行進。しかし、メッセージの「脱原発」は明確に提示した。アールガウ州の日刊紙アールガウアー・ツァイトゥングが大きく伝えた。

 同デモに参加した、スイスから日本の脱原発を訴える「スイスアジサイの会」の責任者、山本まさとさんは「福島第一原発事故は収束しておらず、一日約6000人の作業員が過酷な被曝労働をしている。汚染水も毎日海に流されている。また、子どもたちの甲状腺ガンは増え続けているが原発事故とは関係が無いと断定されている」などと日本の現状を説明し、デモ参加者に強いインパクトを与えた。 

 一方、スイスの脱原発団体「Allianz Atomausstieg」の代表、カスパー・シュラーさんは、連邦核安全監督局(ENSI)を批判し「ENSIは市民の健康・安全より、電力会社の利益を優先している」と訴えた。

 「日本で起きた津波による原発事故は他人事ではなく、スイスでも起こり得る。ところが、スイスで起きる(原発立地地域の)地震や洪水の可能性とその危険性についての調査をENSIは法的に求められているが、それを実行していない」とも批判した。

3月11日で800回目の監視

 デモ開催者の1人でブルック在住のヘイニ・グランザーさんは、デモ参加者の多さに感動し、「国籍も年齢も異なるこんなに多くの人が参加してくれて感激だ。こうした多様性こそが、脱原発を多側面から考えることに繋がるし、またネットワークを広げることにもなる」と話した。

 実は、グランザーさんはENSIの建物の前で「ENSIの仕事を監視する」運動を続けている活動家の1人だ。福島第一原発事故が起こった翌日から始まったこの運動は、「まだ収束していない福島第一原発事故を想い、スイスでも原発事故のリスクは現実としてあること」を訴えるために、ENSIの職員が退社する時間に無言で立って抗議するものだ。

 4年目の今年3月11日は、この運動の800回目の日にあたった。最近、ENSIが入居する建物の所有者が、建物前での抗議運動を禁止する訴訟をブルック裁判所に起こした。ところが、この訴訟に対し「表現の自由を侵すもの」として800人が反対し判決は保留になっていた。

 今回のデモは、こうした無言の抗議運動の存在がメディアで報道される契機にもなった。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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