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スイスの不法滞在者


スイスの不法滞在者7万6千人に―2015年調査、安価な労働力に需要




スイス国内の不法滞在者は特に外部委託できない経済セクターで働いている。例えば家政婦、建設業、飲食業、農業などだ(連邦移民事務局の調査より) (Reusser & Islas)

スイス国内の不法滞在者は特に外部委託できない経済セクターで働いている。例えば家政婦、建設業、飲食業、農業などだ(連邦移民事務局の調査より)

(Reusser & Islas)

スイスに住み、働くことは多くの外国人にとっての夢だ。しかし、不法滞在だったら―。スイス連邦移民事務局の2015年調査で、国内の不法滞在者が7万6千人に上ることが分かった。出身地域別では中央、南アメリカが最多。スイスの経済市場において安価な労働力に対する需要は根強く、不法滞在者が後を絶たない現状が続いている。

 グアテマラ出身のリタさん(51)は週5日家政婦として働き、週500フラン(約5万3千円)の賃金を得ている。リタさんは「給料は良い。丸1日、高齢女性のお世話をして家を掃除し、女性と女性の息子夫婦にご飯を作る」と話す。昨年9月にスイスに来た。その前は母国で2年間、秘書の仕事を探したが見つからなかったという。

 この仕事を見つけたのはリタさんの娘ラウラさん(29)。ラウラさんは「知り合いの男性教師が90歳近い母親の面倒を見てくれる人を探していたので、私の母を紹介した。もちろんリスクは大きい。不法就労の身分ではいつクビを切られるか分からないので心配だ」と表情を曇らせる。ラウラさんはベルン州の村で店員として働いている。結婚を機に、就労が可能な滞在許可証(B許可証)を得た。

 リタさんを雇った男性教師は不法就労を気に留めなかったのか。ラウラさんは「(不法就労が)彼の家族も私たちも助かる一つの道だと言われた。だが用心は必要。家政婦として雇ってくれる人がいるからといって、国が労働許可を発行してくれるわけではない」と話す。スイスインフォは男性教師に取材したいと申し出たが、ラウラさんに「とんでもない」と断られた。

 スイス連邦移民事務局は今年4月、不法滞在に関する2015年調査報告書を発表。国内に7万6千人の不法滞在者がいると結論付けた。リタさんはそのあまたの不法滞在者の一人だ。同局は結果について「正確な数を把握できないため、あくまでも概数。実際には5万~9万9千人の幅がある」と推測する。

難民申請が却下されたケースは全体の18%

 今回は2005年に続く大規模な調査となった。調査結果では、難民申請をして却下されたケースは全体のわずか18%。連邦移民事務局の広報担当マルティン・ライヒリン氏は「大半が、難民申請に関する手続きや相談先などについての知識が全くなかった。彼らの目的はとにかくスイスに入国し、とどまること。スイスの労働市場には不法就労者に対する需要があるからだ」と分析する。

 さらに、不法滞在している成人男女10人のうち9人が一つもしくは複数の仕事を持っていた。約6万人が不法就労し、半分以上がスイス人宅の家政婦だった。

 スイスにおける移民問題の専門家フランシスコ・メルロ氏は「これはいわゆる経済難民であり、彼らは許可証を保持していない。スイスは特例を除き、欧州連合(EU)や欧州自由貿易連合(EFTA)加盟国からしか就労目的の移民を認めていないからだ」と指摘。同氏はヴォー州ローザンヌの移民相談センター「ラ・フラテルニテ」に勤務。同センターは今回の調査に加わっている。

別居を機に不法就労

 不法滞在者の63%は有効な旅券を持たずに入国したか、または旅行者として国境を越えていた。

 19%は滞在許可証を持っていたが、有効期限が切れた後も滞在していた。調査によると、このケースは「社会的にも職業的にもこの国にすっかりなじんでいるため、目立ちにくい」という。

 ブラジル出身のアナさん(30)がこのケースに当たる。アナさんはチューリヒで「親類」と一緒に暮らす。労働許可証を持たないため、不法就労に身を投じざるを得なかった。アナさんは「スイス人の元夫が4年前、離婚したいと言ってきた。その時の私はまだ定住許可証を申請できる段階ではなかった」と振り返る。

 アナさんは不法就労の仕事を続けた。「部屋の清掃とコールガール」をしているという。コールガールは売春だ。アナさんは「お客との待ち合わせなどは全部携帯で連絡を取る。だから周囲に自分が売春をしていると知られることはない。顧客は常連ばかり。これと清掃の仕事でブラジルにいる母と私の息子を養うことができる」と話す。

エクアドル人、ブラジル人、コソボ人

 調査によれば、地域別の最多は中南米出身(43%)だった。

 メルロ氏は「とりわけエクアドル、ボリビア、ブラジルが多い。清掃員のほか個人宅で子どもやお年寄りの世話をしている」と指摘。同氏は相談員としての経験から、様々な違法入国の事例に精通している。

 2番目に多いのはEU、EFTA加盟国以外の欧州諸国で24%だった。大半が旧ユーゴスラビア出身。スイス政府が就労目的の移民をEU、EFTA加盟国に限り、2002年には季節労働者を廃止したが、EUに加盟していないマケドニアやコソボ出身者はその後もスイスにとどまり、不法就労を続けた。

EU加盟国出身の不法就労者も

 調査には、EU加盟国出身の不法滞在者の数は含まれていない。しかしメルロ氏ら専門家は、EU出身者は居住移転の自由が認められているにも関わらず不法滞在者が多いと分析。理由で目立つのは、EU出身者がスイスで失職すると滞在許可証も失うが、そのまま国内に残るケース。または労働者が母国の家族をスイスに呼び寄せる際、本来なら法律で定められた家族の規模に応じた居住空間を確保する必要があるが、それを無視して呼び寄せてしまい、結果的に家族の滞在許可証が出ないケースだ。

 メルロ氏はこうしたケースに頻繁に遭遇するといい「ポルトガルやスペイン、イタリア出身の労働者は自分の家族を母国に返さない。(法律で定められた)十分な広さの居住空間が手に入るまで不法に国内にとどまる。居住空間が手に入りさえすれば、離れ離れになった家族の再会が法的に可能になるからだ」

国外移転の限界

 不法滞在者の数は、前回の05年調査以来、比較的安定的に推移。柔軟な労働力への需要が単発的にあることと、不法就労者が従事する経済セクターのコスト圧力が背景にあるという。

 メルロ氏は「経済や社会が安価な労働力を求め続ける限り、国の移民制限策はうまく行かない」と批判。国は保育所や介護士事業の促進に力を入れているが、目立った効果が見られないことが不法就労者の助長に拍車をかけているという。

 「私たちはコストを抑えるため、可能なものはすべて国外に移転している。しかし建設業、飲食業、個人宅での仕事の三つに関してはそれができない。そのため、これらの分野に従事している人を呼び寄せている。彼らはリスクを自分で背負い、労働許可もない。私たちは偽善的なのだ」(メルロ氏)

12%が未成年

連邦移民事務局は外国人の入国、滞在、労働許可証などを監督する機関。今回の調査によると、不法滞在者7万6千人のうち12%が未成年だった。

不法滞在期間別では10年以上が19%、5~10年が35%、5年未満が25%、1年未満が21%だった。

国内に長期間居住する不法移民を合法化する動きもある。全26州のうちヴォー州、ジュネーブ州の2州が2014年、外国人法に基づき294件のうち275件(全体の93%)を合法化した。

長期にわたる外国人の不法滞在を合法化すべきだと考えますか。ご意見をお寄せください。

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(独語からの翻訳・宇田薫 編集・スイスインフォ)

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