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スイスの短い夏を楽しもう!~夏のアウトドアスポーツ~

キャンパー(幅2.5m×高さ3.4m×長さ6.5m)でノルウェー初旅行。景色のいいところで車を停め車内でコーヒー休憩。食べるのも寝るのも自由自在の旅ができる。 swissinfo.ch

今年は7月に入ってもなかなか夏らしい陽気にならず、曇りや雨の日が多かった。初旬には突然ピンポン球ぐらいの大きな雹が降って来て驚いた。その数日前に新車が届き大喜びしていた友人は、運悪く外に駐車していたためにボンネットと屋根がボコボコになってしまい、ずいぶんと落ち込んでいた。幸い修理代は保険でカバーできるらしいが、気の毒な話である。風が強く肌寒い日も多かったので、アイスクリームの売り上げも例年に比べ10%以上落ち込んだそうだ。そう言えば今年外でアイスクリームを食べたのは、まだ一回しかない。

 そんな今ひとつパッとしない今年の夏ではあるが、不安定な天気の合間を縫って人々はハイキングやサイクリングに出かけ、それなりに夏のアウトドアスポーツを楽しんでいるようだ。特にスイスでは、サイクリングをする年齢層が幅広く、小学生から70才を超えたご年配の方まで実によく自転車に乗る。スポーティなヘルメットとサングラス、体にピッタリとフィットしたサイクリングスーツに身を包み颯爽とサイクリングしている人が、サングラスとヘルメットを取ると白髪のご老人だったりして驚くことも多い。日本でよく見る安価な“ママチャリ”はあまり見かけず、ほとんどの人がそれなりのレベルの自転車を1台は持っている。用途に合わせて2、3台持っている人も多く、最近は老若男女問わず電気自転車がトレンドになりつつあるようだ。

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 加えてハイキングもスイスの国民的な夏のスポーツだ。1~2時間程度の簡単なコースは、こちらでは単なる「散歩」と呼ばれることもある。というのもスイスに来た頃、義両親から「一緒にちょっと散歩しよう」と誘われ、日本の感覚で30分ぐらいだと思ってついていったら、2時間近くも歩かされてヘトヘトになった経験がある。似たような話は他の日本人からもよく聞くから、きっと全国的にそうなのだろう。もし日本とスイスで60歳以上のご老人の「アクティブ度」を比較したら、圧倒的にスイスの勝ちだ。

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 スイスでこんなにも夏のアウトドアが盛んな理由は、①自然がごく身近にあること、②ハイキングコースがきちんと整備され、難易度や距離など十分な情報が与えられていること、③日照時間の長い短い夏をなるべく戸外で過ごそうとする意識が強いこと、等があげられる。日陰に入れば涼しいスイスの夏と、日陰でも蒸し暑い日本の夏との違いは、戸外での過ごし方にも大きな影響を与えているようだ。

 さて、数年前からの夫婦共通の趣味は、ハイキングがきっかけで始まったキャンプである。2人共“少し不便で非日常的な”サバイバル生活を好んで楽しむ傾向があるから、まさにキャンプはもってこいなのだ。おまけにホテルよりもずっと格安に宿泊ができる。ヨーロッパのキャンプ場は1~5つ星のランク付けがされており、ランクごとに料金も違うのだが、スタンダードの3つ星ならば一泊、約35フラン(2800円)、5つ星ならば約60フラン(4800円)ぐらいで泊まれる。5つ星のキャンプ場のなかには、電子レンジ&オーブン付きの大型キッチンや、フリーインターネット、レストラン、売店、サウナ、温水プールといったゴージャスな設備がととのった所もあり、このようなキャンプ場に泊まることを「グラマラス(glamorous)な キャンピング(camping)」 を略して“グランピング”というそうだ。

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 スイス国内には湖畔や山中を中心にキャンプ場が400カ所以上もあり、滞在中いろいろな体験ができることが多いから全く退屈しない。家族連れには超おすすめである。日本と違うのは7割ぐらいの人がキャンプ場の一区画を一定期間借り切り、そこにトレーラーハウスを常設している長期利用者であるということだ。トレーラーハウスは車輪付きのミニハウスなようなもので、トイレ、シャワー、ベッド、キッチン付き。常用車で牽引すれば移動することもできる。

 中・大型キャンパーや自家用車でテントを持参してやって来るのは、数日間の短期利用者である。ちなみにキャンパーとは、トイレ、シャワー、キッチン付きのトラックのようなもので、運転席の上に通常大人2人用のベッドがあり、座席とテーブルを収納すればエクストラベッドもできるようになっている。トレーラーハウスに比べ移動が楽で機動力が高いため、数箇所のキャンプ場を廻って旅行するような場合にとても便利だ。キャンパーは一日100フラン程度(8000円)でレンタルできる。実は7月初旬に初めてキャンパーで10日間ほどノルウェーを旅行し、天気、時間、場所を全く気にすることなく自由な旅が快適にできてとても楽しかった。

 皆さんもこの夏、大自然の中で“ちょっと非日常な”生活をしてリフレッシュしてみませんか。

森竹コットナウ由佳

2004年9月よりチューリッヒ州に在住。静岡市出身の元高校英語教師。スイス人の夫と黒猫と共にエグリザウで暮らしている。チューリッヒの言語学校で日本語教師として働くかたわら、自宅を本拠に日本語学校(JPU Zürich) を運営し個人指導にあたる。趣味は旅行、ガーデニング、温泉、フィットネス。好物は赤ワインと柿の種せんべいで、スイスに来てからは家庭菜園で野菜作りに精をだしている。長所は明朗快活で前向きな点。短所はうっかりものでミスが多いこと。現在の夢は北欧をキャンピングカーで周遊することである。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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