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スイス主要新聞社で相次ぐリストラ

広告収入が減り続けるスイス主要紙 swissinfo.ch

スイスの主要紙で、人員削減の発表が相次いでいる。広告収入の減少による予算削減が原因だが、回復が見込まれない現況から、さらなる人員削減や買収が予想される。

スイスを代表する日刊紙の1つ、独語のノイエ・チューリッヒャー・ツァイトゥン(NZZ)氏は今週、2000万スイスフランの予算削減のため、従業員を10%にあたる80人削減すると発表した。NZZのライバル紙とされるターゲス・アンツァイガーは、オンライン部門の15%人員削減を決めた。スイス最大のメディア・グループRingierは9月初め、来年3000万スイスフランの予算削減を計画していると発表、来週にも大規模な解雇の発表があると伝えられる。また、Ringierの姉妹紙である週刊経済紙Cashと仏語日曜紙dimanche.chは、すでに数十人の解雇通知を出した。

主要紙の相次ぐ人員削減の最大の原因は、広告収入の激減だ。ベルン大学マスコミュニケーション学部のブルム教授によると、97年から01年にかけて広告収入が大きく伸びたため、メディア各社は事業拡大を進めた。が、01年から広告収入は減少に向かい、2%減の56億スイスフランに落ちた。以来、広告収入は減り続け、特にインターネット広告部門は急落し2000年6月以降は40%減となった。打撃を受けた主要各紙は、特にオンライン部門を中心に人員削減や新規事業のキャンセルを余儀無くされているという。16日に発表された数字によると、9月の広告は8月よりも11.5%減少した。2002年の9月までの広告収入は前年同時期比ー13.8%と、メディアの広告収入は下降線を続けている。

新聞の広告収入減少は、世界経済の停滞と読者の変化に原因がある。スイスの大手新聞社は、市場の構造変化を認識していないか、認識するのが遅すぎたとアナリストらは見る。最近の調査によると、スイスでは未だかつて無いほどメディア依存度の高い世代が出現しているが、伝統的な日刊紙を購読しないようになった。「30年前よりもスイスのメディアは増えた。30年前のツールガウでは、ツールガウの生活と海外主要情報を伝える地方紙5紙から7紙しか選択の余地がなかった。今でも新聞読者は1紙か2紙の選択しかできないだろう。が、今は世界情勢専門の週刊誌、日曜紙、無料の日刊紙などがある。新聞の読者が減ったわけではない。が、多様化が進んだのだ。」とブルム教授はいう。

スイスの日刊紙は、鉄道やバス、トラム(路面電車)などの乗り物で無料配付される通勤新聞の追撃も受ける。権威の確立を追求しない無料通勤新聞は、昨年の広告収入5%増だった。無料提供紙の広告が増加する傾向から、ターゲス・アンツァイガー紙が通勤紙に進出するとの情報もある。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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