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スイス人になるために


スイスの国籍取得手続き 一部の人には辛い経験?


Clare O'Dea


スイスでは婚姻関係を結ぶ3分の1以上のカップルがスイス人と外国人のカップルだ (Keystone)

スイスでは婚姻関係を結ぶ3分の1以上のカップルがスイス人と外国人のカップルだ

(Keystone)

スイス人と結婚した外国人に適用される簡易な国籍取得手続きは、スイス国籍を入手する早道だと考えられてきた。しかしこの手続きの一部で、スイス社会に溶け込んでいる度合いを評価されるステップでは、立ち入った質問をされることもある。また、地方自治体によって申請者への扱いにかなりの差がある。

 毎年、スイスに居住する約8千人が簡易な手続きでスイス国籍を取得している。これは、全ての国籍取得者の4分の1に当たる。スイスインフォは数人の申請者にインタビューを行った(うち2人はまだ決定を待っている状態)。これらの例が代表的だというわけではないが、この手続きが公平性と一貫性を欠いていることをうかがわせる。

 タイ出身で2009年からベルン州のある村に住むクラープ・サイポポーさんは、手続きが迅速で分かりやすかったと感じている。「面接は30分ほどで、面接官はとても親切だった。警官は私と夫がどのように出会ったか、私がスイスで何をしているかと聞いただけだった」。サイポポーさんの手続きは2014年、申請後7カ月で完了した。

 英国出身で、米国とアジア勤務の後、2年前にアールガウ州の小さなベッドタウンに引っ越してきたジャネット・ワートリさんも同様の経験をした。申請して5カ月後、2014年のクリスマス直前にスイスのパスポートが付与された。サイポポーさん同様、ワートリさんもスイスの政治や文化の知識は問われなかった。面接は数分で終わった。

 「小さな町なので、みな地方自治体の事務所の職員と知り合いだ。家主さんに推薦状を書いてもらった他に、これまでに築いてきたスイスとの深いつながりを示す写真を集めて送った」とワートリさんは話す。

「奥さんは売春婦ですか?」

 その一方、手続きが不透明で、私事に立ち入りすぎると感じる人もいる。例えば、4年前にスイス人女性と結婚した南米出身の申請者カルロスさん(仮名)の場合だ。カルロスさんはベルンの都市部に住む。まだ国籍取得手続きの半ばなので、本名と出身国を伏せておくことを希望した。

 2014年12月に警察による自宅アパートの抜き打ち訪問を受けた際、カルロスさんは留守だった。その後、地方自治体の事務所で面接を受けた。カルロスさんは、婦人警官からの最初の質問にショックを受けた。「奥さんは売春婦ですか?」

 「一瞬自分の耳を疑った。その警官は全てコンピューターに入力していて、申し訳ないが質問表にそういう項目があるのでと言われた。でも、そんな質問をされた人の話は聞いたことがない。しかも、提出した書類から、彼らは私と妻についての情報を全て持っており、妻の職場も知っているはずだ」

 「僕は8年前からスイスに住み4年前に結婚した。職業訓練を受けているところで、まず資格を取得したいので子どもはいない。そのせいで怪しまれたのだと思う。面接で集中して聞かれたのはこの子どもがいない点だった」とカルロスさんは言う。

 判断の基準を定めるのは連邦移民事務局だが、国籍を与えるか否かは申請者についての州の報告書に基づいて判断される。一部の州ではこの任務は地方自治体に任されており、それに取り組む熱意は州や自治体によって差がある。

 連邦移民事務局によると、連邦(国)では州の報告書作成のためにサンプルとなる質問表を作成している。「州はそのまま質問表を使ってもよいし、質問を変更することもできる。質問が一律に決まっているわけではない」と事務局はEメールで回答してきた。

「本当にストレスがたまった」

 欧州連合(EU)市民のガブリエルさん(本名と出身国は本人の意向により明かさず)は、スイスの公用語のうち二つを流暢に話し、ずっとスイスで雇用されてきた。この国がとても好きだと話す。15カ月前にスイスへの帰化を申請したが、今はそんなことをしなければよかったと後悔しているという。

 今年の初め、ガブリエルさんは住んでいるスイス西部の州の移民局に呼ばれた。

 その州で20年近く生活し、働き、スイス生まれの子どもも3人いるガブリエルさんは、簡易な国籍取得手続きの面接が単に形式的なものだろうと期待していた。ところが、実際は「本当にストレスのたまるもの」だった。

 「面接は1時間半に及び、非常に立ち入った質問をされた。質問は全て、結婚や家族やライフスタイルについてのものだった。国籍取得のためというより、偽装結婚かどうかチェックするための面接のようだった。また面接官は、月数を計算して、最初の子どもを妊娠したのが結婚前だったことを指摘した」

 「スイスについての一般知識の質問は問題なかったが、細かい地方政治の質問や政治家の名前になると頭が混乱してしまった。本当にストレスがたまった」。結局、ガブリエルさんの申請は、税金の未納があったため保留となった。

 2014年6月、簡易な国籍取得申請者も他の申請者と同じ社会統合の要件を満たさなければならないという条件の導入が議会で可決され、簡易帰化の水準が引き上げられた。そのため、政治と一般知識についての質問は今後必須となる可能性が高い。

国際結婚

 今後、こうした簡易な国籍取得手続きを申請する人の数は増える一方だろう。スイスでは3件に1件以上がスイス人と外国人の国際結婚で、2014年にはスイスで成立した結婚4万1223件のうち、1万5706人のスイス人が外国人と結婚しているからだ。

 ヌーシャテル大学の「移民・人口学スイスフォーラム」の社会学者ジャンニ・ダマートさんは、この簡易な国籍取得手続きを申請できる人はまだ恵まれている方だと言う。連邦が要求する条件を満たせば良いだけで、州や地方自治体のそれは満たさなくても良いからだ。

 「それでも、厄介な質問をされる可能性はある。申請者の言葉のレベル、市民となるのに必要な知識、または今の経済状況について聞かれるだろう。あらゆることについて質問されるだろう。そんな風にあれこれ探られたくなければ、永住権保持者の地位に甘んじるしかない」

 2013年と14年に、簡易な国籍取得手続き申請者にも新たに社会統合の要件を課すかどうかが議論された時、内閣は社会統合の基準見直しのみを希望した。通常の国籍取得と同じ基準を適用するならば、もはや簡易手続きとは呼べないとソマルガ司法警察相は主張した。

 しかし議会は納得せず、下院に続き上院でも、現在の一般的な国籍取得手続きの際に要求されているのと同じ社会統合要件を適用して、簡易な国籍取得手続きをより難しくする提案が可決された。

「スイスへの愛ゆえに」

 この改革の提案者の一人が所属する中道右派の急進民主党は、下院の投票前日に熱烈な声明を発表し、背景となる論拠を説明した。

 「国籍取得には、明らかに社会に溶け込もうとする努力をしていることが絶対に必要だ。スイスのライフスタイルについての知識や、公用語のうち少なくとも一つの言語の習得、そしてこの社会にうまく溶け込んでいるという証明がなくてはならない」

 「我々は、社会統合を『要求と励まし』の原理に基づいた、国の中心課題と見なす。急進民主党は本日この問題に関する意志を表明し、また外国人に対する厳しく公正な政策のために今後も尽力していく。これはスイスへの愛ゆえだ」

 一方、一般的に国籍取得の手続きは、お金がかかり、要求が高く、また場合によっては気まぐれだという評判がある。昨年10月にはある退職した米国人教授が、40年以上スイスで生活し子どもも育ててきたのに、社会に十分溶け込んでいないという理由で地元の地方自治体アインジーデルンから国籍の取得申請を却下された。

 「国籍取得の手続きは厳しく難しいという評判のために多くの人が意欲をそがれ、資格はあっても申請する人の数が減っている」とダマートさんは説明した。

社会統合

社会統合という言葉は法律用語ではなく、そのため幅広い観点から「社会統合の度合い」が判断される。連邦移民事務局によると、国籍取得の決定は個々のケースの総合的評価に基づいて行われる。申請者に要求される事項は以下の通り。

憲法の基本原則を尊重する。

法律を遵守する(犯罪や債務が理由で過去に訴追を受けたことがある、あるいは現在訴追を受けている場合は、国籍取得の妨げとなる)。

地域社会の社会生活に参加する。

十分な言語能力を有する(A2/B1レベル)。

職業面で社会に溶け込んでいる(雇用されているか勉強中である)。

スイスの政治制度、スイス文化と伝統についての知識を有する。

州によっては、申請者が自立している、すなわち福祉手当に頼っていないことを要求する場合もある。

簡易国籍取得の資格は、スイス人と結婚した外国人配偶者と、親がスイス人でまだスイス国籍を有していない子に与えられる。

連邦移民問題委員会が委託した2012年の調査によると、10年に国籍取得の有資格者数は約90万人。11年にスイス国籍を付与された人の数は合計3万6千人だった。


(英語からの翻訳・西田英恵 編集・スイスインフォ), swissinfo.ch

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