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ステファン・ランビエール & 荒川静香、対談第2弾「プロとしての哲学は同じ」


聞き手・編集 里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) 


「どうしていつもエレガントでトップレベルを維持できるの?」とランビエール。「それは秘密」と荒川静香 (swissinfo.ch)

「どうしていつもエレガントでトップレベルを維持できるの?」とランビエール。「それは秘密」と荒川静香

(swissinfo.ch)

トリノオリンピック金メダル受賞者の荒川静香と2度世界チャンピオンになったステファン・ランビエールの夢の対談第2弾が実現した。

スイスでのショー「アート・オン・アイス」に出演した2人に、プロとしての今後の方向性などを聞いた。もちろん、2人でまた新しいペアスケートをやるのか、その可能性も聞いてみた。

swissinfo.ch : 一年前初めてシン・アイスで共演されましたが、そのときのことをお互いの評価などを交え教えてください。

ランビエール : 2人共ショーが始まる数日前に振り付けのためコネチカットに着きました。僕は凄く興奮していて。というのもペアスケートは初めての経験の上、静香とペアを組むという素晴らしい機会を与えられたので。

でも一方で少し神経質にもなっていた。力があるほうではないし、ペアスケートは2人のシンクロナイズされた動きが要求される非常に難しいもの。だから練習に長時間が必要なのに数日間で大丈夫なのだろうかと心配しました。

ところが結果は、観客に満足してもらえるハーモニーあるものが短時間で仕上がった。ヒップホップというまったく新しいものを通して、2人のスタイルをいい感じで組み合わせることもできた。こうした新しいことだらけの中でも早く完成できたのは、静香の賢く高い水準の仕事から多くを学べたからだと思います。

荒川 : わたしも心配でしたが、ステファンがはじめに動きをマスターしてくれてそれを見ながら覚えようと。ヒップホップと聞いて自分たちのスタイルではないという懸念もあったけれど、新しいことなので楽しもうと思いました。

後で映像を見たらリズムが合っていて、スピンに入る瞬間もスピンの回転の感じも合わせたことがないのにピタリと合っていた。短時間で集中力が発揮された楽しい経験で、あっという間に終わってしまったので寂しかったことを覚えています。でもこのナンバーを日本でまた滑る機会があり多くのステファンのファンにとってもわたしたち2人にとってもいい時間を持てました。

ランビエール :  ( 荒川さんの方に顔を向け)  実は言ってなかったけど、日本のファンが僕の今までやった全てのプログラムの衣装を着たクマをプレゼントしてくれた。今回のペアスケートには、静香のクマと僕のクマをプレゼントしてくれ、君のはあの時のシルバーの衣装を着ているよ。二つのクマが僕の部屋で並んでいるんだ。

swissinfo.ch : 魅力的なペアスケートでしたが、今後一緒にまた新しいプログラムを作る予定は?

ランビエール : 僕は静香とまたやりたいと思っている。最初の経験が素晴らしかったので。まだ具体的なプランはないけれど、2人ともショーでの経験が長いので、自然にその機会が訪れると思っている。しかも早い時期に。ただ今年のシン・アイスでは共演しません。

荒川 : わたしも一緒に滑りたいと思っています。今度は2人のスケートのスタイルに合わせたもの、スケートの良さを存分に見せられるようなプグラムができたらと・・・クラシックの曲で男女がデュエットしているような曲を使った、そういったきれいなものもやってみたい。ステファンのスケートもきれいで一つ一つのムーブメントが洗練されているので、実現したらわたしにも大きな刺激になると思います。

 

ランビエール : 静香の言う通りで、確かにヒップホップは楽しんだけれど、次回は2人のスタイルにマッチした、叙情的でパッションのあるような曲を選んでやりたいと、僕も思う。ただ僕は静香ほど体が柔らかくなく、足をあんなに高くあげられないけど・・・( 笑 い)

swissinfo.ch  : ステファンさんは今回初めてベルンのフィギュア欧州選手権で、また荒川さんはすでに何度も解説者として仕事をしていますが、それはスケーターとしてのキャリアに役立つと思いますか。もし役立つとしたらどういった点でしょうか。

ランビエール : 正直なところ僕にとっては、フィギュアスケートで自分を表現するほうが解説より素晴らしことは確かです。でも解説をすると、技術とアーティスティックの両面を混ぜプログラムを実現することの困難さがよく分かる。また、沢山のプログラムが見られるので振り付けにも役立つ。

解説していると、スロモーションで細部も分かり、自分が滑って自分のプログラムだけに集中しているのとは違う経験ができる。ほかスケーターの技術的、振り付け、音楽性など色々見えてくる。

ただ、かつての競走相手のコメントをするのはとても難しい。一方で、演技が終わった直後の、プレッシャーが消えた瞬間、溢れる感情でいっぱいのときにスケーターにインタビューできたのは素晴らしい経験になった。もし、もう一回やれる機会があればぜひやりたいと思っています。

荒川 : 自分が試合に出ていたら分からなかった全体像、例えばこういう選手がいてこういう演技をやったからこの得点だったといったことが、解説をやると見えてくる。

一方で、スケーターの目から見ただけの解説をしてしまうと、視聴者の方々が本当に知りたいことなのかという点が問題になってくる。スケートを初めて見る方にも分かりやすく語れることを念頭に、1人でも多くの方に興味を持って頂けるような解説ができたらいいなと思います。

 

ランビエール : 確かにスケートは今システムが非常に複雑で、それを二つの演技の間にすべて正確に伝えるのはほとんど不可能。大切なのは、一般の人にスケートの全体像を伝えること。スケートはテクニック面だけでなくアーティスティックな面もあることをきちんと伝えることが大切だと思います。

swissinfo.ch : ステファンさんはプロに転向されて1年。荒川さんは5年になるかと思いますが。お二人の今後の方向性を教えてもらえますか。

ランビエール : 僕は静香から多くのインスピレーションを得たいと思う( 2人で顔を見合わせ微笑む )。静香はトリノオリンピックで金メダルを獲得した後、プロに転向して素晴らしいキャリアを積み、いつも素晴らしいプログラムを生み出している。音楽の選択もいいし、いつもエレガントだし、体の線も完璧に保ち、ジャンプを始めテクニック面でも完璧。静香は僕のプロのスケーターとしてのモデルになると思う ( 荒川さん照れたような表情 ) 。

ランビエール : ( 荒川さんの方を向き ) 君が完璧な理由を教えて欲しい。それは何なの?

 

荒川 : それは秘密 ( 笑い)。

ランビエール : どうかその秘密を教えて欲しい !

荒川 : いえ、ただ、スケートをやりたくて氷の上に立ち続けているというのが本音です。練習でもアマチュア時代のような義務がなく、自分の求めるものを追求できる。形も決まってないので無限。だからこそまた自分でしっかり掴んでいなければならず、その難しさが面白いところです。

限界がないのでチャレンジを続けられるというか。例えば、絵でも自由に描いていいとなると何を描くのかも難しい。それと同じように自由にやっていいとなると却って自分に足りないところが見えてくる。だからやり続けているのかと思います。

ランビエール : この1年はプロとして僕が願っていたようにいったので、今後もこのまま続けられたらと。静香のように、滑るのもショーも大好きで情熱を傾けられる。だから体のコンディションが許す限り、続けて行きたいと思っています。

 

荒川 : わたしも多分、やりたいと思う限りは続けると思います。でもやるからには、今自分が持っているものを全て持ち続けること、今以上のスキルを維持することが自分にとって大切。一つでもそれが欠けたり、レベルが少しでも落ちて行くと感じたらいつでも辞める覚悟なので、自分に絶えずプレッシャーをかけている。それが刺激になっていて、また辞める日が決まっていない理由なのかもしれません。

ランビエール : 僕も100%今のレベルを保てたら続けるが、一度でもそれが落ちて行くように感じたら、今と同じ喜びを感じられないだろう。だから今のレベルを維持することは大切だと思う。

( 荒川さんの方を向き ) 静香、君の意見に賛成だよ。

swissinfo.ch : では、お二人とも同じ考えですね。

ランビエール :  そう、プロフェッショナルスケーターの哲学だね ( 半分照れたような笑い方 )

swissinfo .ch : 最後に、プロとして新しいプログラムを作る場合、何が契機になるのでしょうか。

ランビエール : 「アート・オン・アイス」のようなショーでは、何の曲で滑りたいか聞かれ、多くの選択肢の中から曲を選び新しく振り付けもするので、こうしたショーが新プログラム作成の契機になる。

一方、古いプログラムに関しては、ときに「このプログラムは死んでしまった。もう今の自分ではない」と感じることは大切。昨年の自分には合っていたが今の自分には合わないと、内面のフィーリングに正直に反応すると新しいプログラムを作る意欲が沸いてくる。こうした二つのやり方で作品ができていくのです。

荒川 : ステファンが言うように、ショーが切っ掛けになると思います。自由に選べる場合もあるし、主催者側から曲が重ならないよう配慮して、これをやってほしいとリクエストがあったり。いつも色々なタイプの踊れる曲を用意しておいて、ショーのコンセプトに合わなければ新しく作るというやり方もあります。

またいつも街の中で聞こえてくる曲などに注意していて、それを拾っている。いいと思った曲は違う歌手のバージョンなども調べ、フィーリングが合うものを選ぶ。だから音楽を聞く数も増え、それが今はすごく楽しいです。

結局、ショーがあるからではなく絶えず新しいものをやりたいと探している。曲のフィーリングが合うものがいい作品を作る大事な要素でもあると思うので、とにかく沢山の音楽を聞いて、フィーリングが一つでも引っかかったらその曲をとことん聞く。そんな感じです。

swissinfo.ch



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