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バーゼルで活躍 中田浩二選手

肉離れのため休養していたが、翌日からは練習に合流するという中田浩二選手。バーゼルチームのホームグラウンド、ザンクトヤコブス・パークにて swissinfo.ch

サッカーの中田浩二選手が、スイス・バーゼルのサッカーチームである「FCバーゼル」に入団したのは昨年2月のことだ。優秀な監督の指導のもと、心暖かい現地のサポーターに囲まれ、バーゼルは居心地が良いという。

このほど、チームの本拠地であるザンクト・ヤコブ・スタジアムでスイスインフォのインタビューに応じた。

 10月中旬に左足の腿裏の肉離れを起こし休養中だったが、11月中旬にはチームに合流した中田選手。スイスのサッカーと日本のサッカーの違い、海外でプレーすることの意義などのほか、自炊もするというバーゼルでの生活について語った。

swissinfo : スイスでの生活はいかがですか。

中田 : そうですね。バーゼルという街自体、市民の皆さんがサッカーに興味をもっていて、大切にしてくれます。

スイスという国が多民族の国ですし、バーゼルのチームにもいろいろな国の選手がいます。スイス人だけがプレーしているということはないので、とてもやりやすいです。居心地はすごく良いです。

swissinfo : バーゼルの市民はサッカーに非常に興味があるということですが、日本のようなファンの「追っかけ」があるのですか?

中田 : 自宅には、さすがに来ないですね。日本よりプライバシーは守ってくれます。でも、街中を歩いていると声をかけてくれる人もいます。

swissinfo : バーゼルはスイス第2の都市で大きい街ですが、中田さんだと分かるんですね。ところで、中田さんはどのような1日を過ごされるのでしょうか?

中田 : 8時ぐらいに起きて、練習は10時から2時間ほどです。お昼は、家が近いので、帰って昼食を取ります。自炊とか、テイクアウトをします。太らないようになど、大体のカロリー計算をした自炊です。午後は練習がなければ、休んだりですね。

スイス国内は、ルツェルン、チューリヒ、グリンデルヴァルトまでは行きました。国内旅行も、みんな良いと言ってくれるのですが。時間ができるとパリ、ロンドン、フランクフルトの友だちや知り合いに会いに行ってしまいます。

swissinfo : バーゼルのクリスティアン・グロス監督は、スイス国内で評価が高い監督です。中田さんにとってグロス監督はどのような人ですか。

中田 : 練習ではすごく厳しい方ですが、普段はすごい優しく冗談も言うし、選手のみんなに話しかけてくれます。ドイツ語だけではなく、英語もフランス語も喋れるので、僕としてはやりやすいですね。

厳しいというのは、彼の要求もより高く、1つのミスでも指摘しますし、練習に集中していないと怒るといったこともあります。

監督によって違うのですが、わたしの経験から言えば、練習量は日本のほうが多く時間も長く、技術の練習が多くありました。スイスはより実践的な練習が多いですね。練習試合とか、多いです。

swissinfo : スイスはジュニア育成に力を入れていますが、優秀な選手はスイスで育った後、外国で活躍しています。日本も同じような傾向があると思いますが、どう思われますか。

中田 : それ自体は素晴らしいことだと思います。日本はスイスと違い、海外にはなかなか出て行けません。プロになってからも海外でプレーすることは難しことです。

ただ、日本もスイスも、国のリーグのレベルはほかと比べて、そんなに高くありません。より高いレベルでやるのなら、海外に出て行くことは良い。それも若いうちに出たほうが、より良いと思います。

スイスでは、若手で優秀な選手が日本と比べてもたくさんいます。スイスからであれば、イタリアなど隣国に出やすいですよね。監督としては、手元において育てたいということはあるかもしれませんが、( ナショナルチームを形成する際に ) スイス自体が、強くなるのなら、それも仕方ないと思います。

swissinfo : スイスとオーストリアの共同主催による「EURO2008」の準備では、フーリガンの暴動対策に開催者は頭を悩ませています。中田さんは、暴動に走る人々を選手として苦々しく思っていらっしゃるのではないでしょうか?

中田 : 熱狂的に応援してもらえるのは選手として嬉しいことです。ただ、人に迷惑をかけないということは、最低限だと思います。サポーターの倫理の問題です。( 暴動に走るのは ) 一部なだけなのに、それがサポーターだと思われるのはかわいそうだと思います。いずれにせよ、サポーターに向かって僕らが言うことではないと思います。

swissinfo : 5年後はどんなプレーヤーでいたいと思いますか。

中田 : 5年後というと、33歳ぐらいですからね。まずは、現役でプレーしていたいですね。日本に帰って、若い選手にこちらで学んだことを還元したいです。

swissinfo : サッカーをしている子どもたちにメッセージをお願いできますか。

中田 : 今の子どもたちは、僕らが子どもだった時とは違います。僕たちのときは、海外に目を向けるとか、ワールドカップに目を向けるといったことはありませんでした。中学生の時に「Jリーグ」ができたという時代ですから、海外は別世界。夢を抱きにくい状況でした。なんとなくサッカーをやっていきたいなと思うだけで、プロの選手になりたいということもありませんでした。

今は、海外からの情報も普通に入ってきますし、海外で活躍している人もいるので、子どもたちは海外に目が向いていると思います。大きな夢を持ってサッカーをやって欲しいですね。可能性があるのですから。それが一番、子どもには大事だと思います。

swissinfo、聞き手 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ )  バーゼル、ザンクトヤコブス・パークにて

中田浩二略歴 ( オフィシャルサイトから抜粋 )
1979年7月9日生まれ。滋賀県出身
1998年 鹿島アントラーズ入団
1998年 Jリーグ2ndステージ、年間優勝
2000年2月5日 メキシコ戦で代表デビュー
2001年1月 天皇杯優勝
2003年8月30日 全治6カ月の重症を負う
2004年8月 アジアカップ優勝
2005年2月 フランス、マルセイユへ移籍
2006年2月 スイス、バーゼルへ移籍
2006年5月 ドイツ・ワールドカップ出場

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