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フェデラーを麻痺させた伝染性単核症

Keystone

今年は精彩を欠くシーズン・スタートとなったロジャー・フェデラー。その背後には、全豪オープンの時に患っていた胃ウイルスだけではなく、伝染性単核症も隠れていた。

この感染症はインフルエンザに似た症状を引き起こし、体を異常に疲れさせる。この病に、フェデラーは昨年12月から侵されていたという。

 著名紙ニューヨークタイムスの電話インタビューで、フェデラーは伝染性単核症を患っていたことを打ち明けた。6週間の間に3度も体調を崩した後、フェデラーは2月にスイスとドバイで精密検査を受けた。その結果、伝染性単核症を患っていることが判明した。

その前には胃ウイルス

 今年1月に開催された全豪オープンの前から、フェデラーはすでに全力投球できない状態だった。食中毒のために十分な準備ができなかったのだ。しかし、影響はおそらくこの伝染性単核症の方が大きいと思われる。
「医師によると、僕は少なくとも6週間前の昨年12月からこの病に侵されていたらしいのです」
とフェデラーは言う。

 伝染性単核症はヘルペスウイルスの一種であるエプスタイン・バール・ウイルス ( EBウイルス ) が感染源で、インフルエンザに似た症状と極度の疲労を引き起こす。

 フェデラーは全豪オープンの準決勝でノヴァク・ジョコヴィッチに敗退したが、このような背景を考えると、この結果もまた違った見方ができよう。フェデラーは、
「伝染性単核症だと聞き、準決勝まで進めたことをいっそううれしく思いましたね。あのときに分かってたら、おそらくドクター・ストップがかかっていたでしょう」
と話す。

 長期にわたる休場を、フェデラーはすでに身近で観察している。クロアチアのテニスプレーヤー、マリオ・アンチッチは、2007年の後半に半年間の休養を強いられた。また、フェデラーがひいきにしているサッカーチーム、FCバーゼルのイヴァン・エルギッチは病気の回復にさらに長い時間を要した。

フル・トレーニングの再開

 2月下旬、ドバイ選手権を控えたフェデラーは10日間練習ができず、ようやく全力でトレーニングに打ち込めるようになったのは開催5日前のことだった。「峠を越えたのかどうか医者は確認できなかったようですが、体内に抗体が作られているし、もう大丈夫だと思います。しかし、コンディションは大幅に崩れてしまいました」

 3月10日、フェデラーはニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンで開かれるエキシビションでピート・サンプラスと対戦する。その後続いてインディアン・ウェルズとキー・ビスケインのマスターシリーズ・イベントに参加する予定だ。

 今回は大事に至らずに済んだようだが、それでもフェデラーはこの病気の影響を当分の間引きずることになるだろう。今年のスタートはプロ入りしてから最悪だっただけでなく、トレーニングも遅れている。しかし、幸いパリで開催される全仏オープンのスタートまでまだ2カ月半残されている。フェデラーにとっての本番は全仏オープン以後だ。

swissinfo、外電

伝染性単核症はエプスタイン・バール・ウイルス ( EBウイルス ) によって感染する、よくみられるウイルス性疾患で、リンパ腺のほか、肝臓や脾臓 ( ひぞう ) 、心臓に障害が出る。

最も感染しやすいのは青少年。10歳以下の子どもの場合は、通常、症状が出にくい。成人になるとインフルエンザに似た症状が出るが、合併症はまれ。

30歳までに感染する人は全体の95%と推定されている。一度感染すると、ウイルスに対する抗体が作られるため、通常は1度かかればその後かかることはない。

病原体は特に唾液から伝染しやすいが、そのほかに飛まつ感染や接触感染も認められている。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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