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ブログ「もっと知りたい!スイス生活」


この夏、ひとりで怠惰に過ごした日@バーゼル郊外


今年の夏も忙しかった。けれど合間をぬって、羽を伸ばせた日もあった。今回はそんな、ある1日をつづってみる。その前日、私は夫と娘をイタリアの実家に残してスイスに戻ってきた。諸事情により、ひとりで先に帰ることが許されたので(……まあ、ご想像におまかせします)。

スイスに来る前から、すでにミューズリーは私の毎朝の習慣になっていた (swissinfo.ch)

スイスに来る前から、すでにミューズリーは私の毎朝の習慣になっていた

(swissinfo.ch)

 やるべきことは山ほどある。荷ほどきもまだだし、家じゅう散らかったまま。とりあえず、やることリストを作ってみた。それで満足し、まずは朝食。

 私はいつも、ミューズリーにヨーグルトをかけて食べる。これさえ食べていれば、お腹の調子はとりあえず順調である。食べ過ぎることの多い旅行の後も、スイスに帰れば体調はすぐに整う。

 朝食をとりながら、ニュースを見る。ふだんは毎朝、ネットで日本のニュースを見ているが(娘の日本語維持のため)、ひとりの時はそれをパスして、ローカル局のニュースを見る。

「ライン川遊泳では、ブイを超えると危険」「野草が原因で炎症を起こした犬が手術するケースが多発」「ポケモンGOが大流行」……。犬のニュースでは、獣医が犬の足を手術する映像も流れた。ある女性は赤い包帯を巻いた犬を連れて、草を見せながらインタビューに答えていた。 

 その日はゴミ収集日。庭の切り株のまわりに出してある黒いゴミ袋を窓から見て気づいた。しかし帰ってきたばかりでゴミはほとんどないため、出すのをやめた。ここでは、17Lのゴミ袋に貼るシールが0.95フランかかる。このシールがないと持っていってくれない(生ゴミや瓶カン、紙類は別なので、一般ゴミはもともと少ない)。

 洗濯物の山に着手した。天気がいいので、すぐに乾くのはありがたい。

 スイスのどこが好きかと聞かれたら、何でもすぐに乾くことと答えたくなるほど、私はこの乾燥した空気が心底気に入っている。……なのに3棟約30世帯のうち、洗濯物をベランダに干しているのは我が家くらい。みんな乾燥機を使っているのだ。ベランダはガーデニングやリラックス、もしくは喫煙するところなのである。

私たちのベランダにもテーブルは置いてあって、物干の横で食事をする…… (swissinfo.ch)

私たちのベランダにもテーブルは置いてあって、物干の横で食事をする……

(swissinfo.ch)

 そして、たまっていた郵便物を見る。

 スイスの建国記念日8月1日が近くなると、スイスの文化や歴史についてメディアが取り上げる。例えば、小売り大手のコープが発行している週刊コープ新聞では、スイスの特産品がどれだけ輸出されているか等を特集していた。チョコレート(輸出相手国157カ国)の次はチーズかと思いきや、なんとオヴォマルティーネ(Ovomaltine、ミロに似たドリンク。110カ国)。しかし実際の輸出量は、コーヒーの加工品がトップなのだそうだ(これは大企業ネスレのおかげ)。

この植木たちは、閉店後も外に置かれたまま……盗まれたりしないのか? (swissinfo.ch)

この植木たちは、閉店後も外に置かれたまま……盗まれたりしないのか?

(swissinfo.ch)

 昼食の買い出しに、近所のコープへ行く。店の前に、テントが立っている。覗くと、花火をそこで販売していた。建国記念日には花火大会が開催されるが、個人でも花火を楽しむので、毎年この時期はあちこちで花火が売られている。

 コープ店内には、スイス国旗をあしらったコップやランチョンマットなど、スイスグッズを集めたコーナーがあった。われわれ外国人は建国を祝うというより、里帰りの際のおみやげに最適なので、つい買ってしまう。

 帰宅したところで、お隣のおばあちゃんに会った。彼女も先日、息子さんとアメリカ旅行から帰ってきたばかりだそうだ。亡くなったご主人の話になり、仕事中にオフィスでいきなり倒れ頭を打ったら、もう意識が戻らなかったという。おばあちゃんが会社を引き継ぐことになり、必死に頑張って、5年前にようやく人に譲った。

 このおばあちゃんは、季節ごとに家の中をきれいにディスプレイしたり、老人会のお仲間を食事に呼んだりと、シングルライフをかなり楽しんでいるように見える。が、この話を聞いて、私の中で印象がすこし変わった。

 お昼は、出発前にフランスで買っておいた冷凍食品のスープ。野菜をありったけ入れて煮込んだ。旅行後は野菜をたくさん摂って解毒したい。

 せっかくのいい天気なので、午後はプールに行くつもりだった。しかし屋内プールは夏の間ずっと閉まっている。近くに大きいプールがあり、娘がいたら行くところだが、必ず知っている顔に会うので、せっかくのひとりの休日には行く気がしない。……迷った挙句、街へ出ることにした。ブラブラあてもなく歩いているだけで、何かしら発見があって楽しいのがバーゼルである。

 7月は夏休みシーズン、よって大規模な道路工事が行われたりするが、今年もそうで、中心部はバスもトラムも通っていない。私はもともと歩くつもりだったので、喜んで下車した。

 ミュンスター(大聖堂)広場では、今年もオープンエアの映画祭をやっている。けれど昼間は、大スクリーンと空席が並んでいるだけ。

映画祭のホームページで予告を見ると、オリジナルの英語に、ドイツ語とフランス語の字幕が並んでついていた (swissinfo.ch)

映画祭のホームページで予告を見ると、オリジナルの英語に、ドイツ語とフランス語の字幕が並んでついていた

(swissinfo.ch)

 ライン川の横を通る。30度近くになったその日は、さすがに泳いでいる人が多かった。今年は降水量が多いため、水位が高く流れも速いから、バーゼル警察は遊泳を勧めないと新聞に書いてあったのになあ……。しかし友人は、もう3回も泳いだと言っていた。

水の色も、どことなく濁っているように見える…… (swissinfo.ch)

水の色も、どことなく濁っているように見える……

(swissinfo.ch)

 バーフューサー広場にやってきた。今年もビーチバレーの国際選手権をやっている。スイス対ノルウェーの試合がちょうど始まったところだ。入場無料なので、私も席について観戦した。 

広場の中心に砂を運び入れて人工ビーチを作る (swissinfo.ch)

広場の中心に砂を運び入れて人工ビーチを作る

(swissinfo.ch)

 帰宅途中、メアリーに会った。ドイツ語会話クラスで一緒のアメリカ人で、ご近所さんでもある。スイス人パートナーのモニカとベランダで食事をしているところだった。

 2人は3年前から一緒に住んでいる。メアリーはアメリカで結婚していたが、夫の死後にモニカと出会い、60代になって人生をやり直すつもりでスイスにやって来た。2人はどこへ行くにもたいてい一緒で、仲睦まじい。

 今度、食事に呼ぼうと思っていたのに、明日から2人でアメリカへ行くという。9月に帰ってきたらあらためて呼ぶことになった。

 夕食前に、上の階のおじさまを訪ねた。イタリア出発前にベランダの植木の水やりを頼んでおいたのだ。長く留守にするなら、信用できる人に鍵を預けて、ポストから郵便物を出してもらったり水やりをお願いしたりする。このおじさまは高級車を乗り回しているが、家のまわりではステテコ姿か!?と思わず振り返るほどラフな格好で、ニコニコ挨拶してくる。

 植木はおかげさまで、どれも大きく育っていた。お礼に、買ってきたワインをさしあげた。

 夕食は、友人から前日もらったグリーンピースを煮て食べた。庭で採れたばかりという新鮮なグリーンピースは、皮が厚く、噛みごたえがあった。今年最初の収穫を惜しげもなくくれた友人に、感謝しながらおいしく頂いた。

 やることはまだ山積みだが、もうやる気がしない。お気に入りのCDを聴くことにした。私はアドリアン・シュテルン(Adrian Stern)のファンなのだが、夫と娘に、もう聞き飽きたと言われてしまった。ひとりになったら、ここぞとばかりに聴くのである!

 彼のジャンルはポップ/ロックだが、ムントアルト(方言)と分類される。スイスドイツ語で歌うからだ。彼の歌を聴いていたら、ほとんど聞き取れないにもかかわらず、この方言の響きに魅了されてしまった。

彼はビジュアル系ではない。ファンから「年に何回ぐらい床屋に行くんですか」なんて質問されている (swissinfo.ch)

彼はビジュアル系ではない。ファンから「年に何回ぐらい床屋に行くんですか」なんて質問されている

(swissinfo.ch)

 お風呂に入ったら、もう何もかも面倒になって、台所の後片付けもせずに寝てしまった。ゴキブリが出ないのも、スイスのいいところである!

 ただし夏は、食品にいっぱい小バエがたかる……そういえば今年は少ないなあ。

平川 郁世

プロフィール:平川郁世

神奈川県出身。イタリアのペルージャ外国人大学にて、語学と文化を学ぶ。結婚後はスコットランド滞在を経て、2006年末スイスに移住。バーゼル郊外でウォーキングに励み、風光明媚な風景を愛でつつ、この地に住む幸運を噛みしめている。一人娘に翻弄されながらも、日本語で文章を書くことはやめられず、フリーライターとして記事を執筆。2012年、ブログの一部を文芸社より「春香だより―父イタリア人、母日本人、イギリスで生まれ、スイスに育つ娘の【親バカ】育児記録」として出版。



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