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ユーロ救済で割れるEU

「メルコジ」と呼ばれる独仏両首脳。EU各国の国家予算の管理強化を求める AFP

欧州連合(EU)では、ユーロ救済を目的とした条約改正に向けて努力が続けられている。しかし、現在開かれているEU首脳会議では、加盟27カ国すべての合意はこれまで得られていない。

12月8日の数時間に及ぶ交渉の後、関係者は9日未明、ユーロ圏17カ国で解決策を決めることになりそうだと語った。

 条約改正をけん引しているのはドイツとフランスだ。危機に瀕している通貨ユーロの保護に向け、法的拘束力のある規則の承認に持ち込みたいところ。焦点は、ユーロ圏における債務上限の制定や過剰債務を抱える国に対する措置の強化など。関係筋によると、会議出席者の間ではこのような財務管理の必要性はおおむね支持されているという。

 だが、交渉は難航している。その元は主にイギリスのデービッド・キャメロン首相だ。関係筋によると、キャメロン首相は、金融市場の規制に関する決議にはEU加盟国の全会一致が必要だと主張。しかし、ドイツとフランスがこれを拒んでいる。

改正案は不十分

 ジュネーブ大学欧州研究所のルネ・シュヴォク氏は「アンゲラ・メルケル独首相とニコラ・サルコジ仏大統領が掲げる目標は新しいものでもなく、観測筋の期待からもほど遠い」と独仏の主導を批判する。

 「欧州中央銀行(EZB)の役割強化に向けて交渉するでもなく、ユーロ共同債発行などの金融上の措置や、欧州委員会に新たに国家財政監視を任せるなどといった案もまったく盛り込んでいない」。方向性としては正しいが、ユーロ圏に将来発生しうる問題に対処するには不十分だという見方だ。

新たな問題

 この先、ユーロ圏17カ国のみで動くことになれば、新しい条約の制定は必須。しかし、新条約はEU条約の規則に反してはならないため、多くの法的な問題が発生することになると専門家はみている。

また、シュヴォク氏は今後について次のように予測する。「来年初めの数カ月間は、さらに重要な会合が数多く開かれるのではないか。ユーロがさらに危なくなったときや、欧州理事会が正式に条約改正を行うとき。また、議会による批准もあれば、国民投票が行われる可能性もあり、EUの会議が目白押しになりそうだ」

 

 EU首脳会議は12月8日、9日の2日間、EU本部のあるベルギーのブリュッセルで開催されている。

(独語からの翻訳・編集、小山千早)

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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