スイスの視点を10言語で
ローザンヌで羽を広げるバレエダンサー

ローザンヌバレエ優勝者ミケーレ・エスポジートさん、ダンサー目指し11歳でたった一人でスイスへ

.
「ニジンスキー」で、エネルギッシュな表現をしたミケーレ・エスポジートさん。 Gregory Batardon, Prix de Lausanne

ローザンヌ国際バレエコンクール2017で見事に優勝に輝いたミケーレ・エスポジートさん17歳。バレエ人生での成功をつかむため、チューリヒのダンス・アカデミーで寮生活を送りながらレッスンに励んで6年になる。自炊しながら、自分の責任を自覚して学生生活を送っていると語る。

 エスポジートさんは、イタリア南部のテヴェローラという小さな田舎町出身で、さほど裕福ではない家庭に生まれ育った。バレエを始めたのは3歳のときで、ダンスの好きなお母さんの勧めで姉と一緒に始めた。だが6歳頃からバレエをやりたいと思うようになり、11歳のときにスイスのチューリヒ・ダンス・アカデミーへ留学することにした。

 11歳で国外へ行くことを決意したのは、「将来、もっと(プロダンサーになる)チャンスがある場所に行きたかったから」だという。ヨーロッパ内で留学したいと思い、最初に受けたオーディションの一つに、家族からあまり遠くない隣国スイスを選んだ。スイスは生活環境が良いだろうと親が判断したことも決め手となった。

 「最初は、家族から離れて生活することが寂しかった。でも、友達ができてからは、好きなダンスができて楽しい生活。今ではスイスでの生活にもすっかり馴染み、ここに来てもう6年になる」と語る。チューリヒはドイツ語圏だが、ダンサーを目指す若者が集まる国際色豊かなダンス・アカデミーではレッスンが英語で行われるため、普段は英語での生活を送る。今ではイタリア語よりも英語の方がダンスの話をしやすいと言い、インタビューにも英語で答えた。

 現在は学校寮で、独りで自立した生活を送っている。「レッスンが終わると学校近くのスーパーで買い物をし、洗濯も掃除も料理も自分でする。プロダンサーになるために、食事制限や規則正しい生活をすること、健康管理もちゃんと自分が責任を持ってこなしている。自分のことはすべて自分でする。すべては自分次第なのだなと実感している」と話す。昨年は、スイスでダンス教育を受けるためのスカラーシップ試験に合格し、獲得した奨学金が生活費の一部になっているので経済的にもやりくりできているという。

 ローザンヌ国際バレエコンクール2017で、エスポジートさんの踊りで特に注目されたのは、コンテンポラリーの「ニジンスキー」での表現力。迫力あるジャンプには、会場から大きな拍手が沸いた。エスポジートさんは、決勝での踊りを振り返り「あの時は、自分の気分がまさに(ニジンスキーの)ムードにのれて、快適に踊れた」。「表現して聴衆に見せたいと思う感情が、自分の中ではっきりしていた」と思い返す。

外部リンクへ移動

 エスポジートさんは、ローザンヌ国際バレエコンクールで勝ち取った奨学金と留学制度を利用し、今夏からはオランダ国立ユースバレエ団へ入団する。「今の学校を7月に卒業したら資格が取れる。将来はダンスの教師、または、ダンス学校のディレクターにもなれるかな」と笑顔で話す。

 チューリヒ・ダンス・アカデミーのディレクター、オリバー・マッツ氏は、「バレエのコンクールで賞を獲得するには、ひたすら練習に勤しむのみ。昨日やったから今日突然できるようになるものではなく、コンクールで実績を上げるには長い道のりがある。成功するのに秘訣などはない」と考える。

 そして「現在はコンクールで更に高い技術が求められ、レベルがますます高くなっている」「今どきのダンサーは18歳までに、あらゆるジャンルのダンスを異なったスタイルで、そして多彩な表現で踊れるようになることが必要とされる。18歳までに、アーティストにもならなければならないのだ。クラシックダンサーであっても、即座にボディーランゲージで感情をあらわにできるという、素早いスタイルの適用が求められる」と述べる。若いダンサーは、「振付家や教師が求めるものを素早くつかんで、自分の中に取り入れて身体で表現し、作品の創作過程の担い手の一部として貢献できる能力を学ぶことが大事だ」と言う。

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部