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2019年バーゼルワールド、新興メーカーのための新たな試み

時計を並べた展示スタンドを挟んで向かい合う二人の男性
時計コレクターのベンジャミン・ラヴィツァーリ氏(左)とジュネーブの新興時計メーカーVALPINのラファエル・ラパン氏(右)は、バーゼルワールドの新しい試み「ウォッチ・インキュベーター」で共同開発した商品を披露した Carlo Pisani

世界中の老舗時計メーカーが集う国際時計・宝飾品見本市、バーゼルワールド。今年は約20社の新興メーカーが商品を披露する新しい展示場を設けた。競合する見本市への対抗策の一つだ。

バーゼルワールド外部リンクは生き残りをかけて試行錯誤している。過去2年で出展者は半分に減った。特に昨夏、スウォッチグループが傘下の18ブランドもろとも撤退を宣言したのは晴天のへきれきだった。昨年7月に見本市の新ディレクターに就いたミシェル・ロリス・メリコフ氏は「今回の約500社で底を打ったのではないか」と話す。

眼鏡をかけた男性のポートレート
ミシェル・ロリス・メリコフ氏(54)の前職はチューリヒのストリート・パレードのディレクター。バーゼルワールドの再興という難題を抱えている © Keystone / Alessandro Della Valle

26日に最終日を迎えた今年の見本市は一つの節目となった。2020年からは完全に新しい形で開催される。「バーゼルワールドを、時計業界に携わる全ての人のための新しいコミュニケーションと実験の場にしたい。ブランドや卸業者、販売店、ジャーナリスト、評論家、消費者など全ての人が一体となる場だ。こうしたミックスが見本市を面白くする」。ロリス・メリコフ氏はスイスインフォにそう展望を示す。

ロリス・メリコフ氏は、時計製造の下請け業者に関する見本市のこれまでの戦略は「理解できない」と突き放す。過去10年、スイス西部の時計産地・ジュラ地方にある部品メーカーは見本市で重要な役割を果たしてきた。ところが高過ぎる出展料や主催者の認識不足を理由に、出展を取りやめる部品メーカーが相次いだ。

そうした企業が昨年、バーゼルワールドと同時期に、時計産業の町ラ・ショー・ド・フォンで独自の見本市を開催した。ロリス・メリコフ氏は「自分の車で見本市に乗り込み、次の年はバーゼルに戻ってくるよう説得した」と振り返る。

新興メーカーを育てる

バーゼルワールド主催者は今後、各出展者の自由度を広げていく考えだ。2020年はスイスやフランスの時計製造の職業訓練校と共同事業を行う。

今年は約20社の新興時計メーカーや関連企業が「ウォッチ・インキュベーター外部リンク」と称するイベントに参加した。全世界から時計関連企業が集まるバーゼルワールドの舞台を使って、その商品や事業をプレゼンする。

展示スタンドの出展料は特別料金の約4000フラン(約44万円)。「客の反応は上々だ。来年は宝飾品・宝石企業向けにも同じようなインキュベートイベントの開催を考えている」(ロリス・メリコフ氏)。

スイスインフォは「ウォッチ・インキュベーター」に参加した3社に話を聞いた。

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「バーゼルワールドは大きなチャンス」

このコンテンツが公開されたのは、 バーゼルワールドは世界の大手高級時計メーカーが牛耳ってきたが、小さな新興メーカーも居場所を見出そうと奮闘している。独特の製品を開発したり、伝統的な製品に工夫を凝らしたり。参加した約20社のうち3社に話を聞いた。

もっと読む 「バーゼルワールドは大きなチャンス」

(独語からの翻訳・ムートゥ朋子)

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