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世界潮流の先端を行く 多国籍企業よ、人権を守れ! スイス市民が求める企業責任

Indian child carrying metal wheels at an automobile reycle market in Calcutta.

国際連合教育科学文化機関(UNESCO)によると、世界の最貧国で子供の4人に1人が健康に被害を与え得る職場での労働を強いられている

(Keystone)

スイス連邦議会下院はこの夏、人権や環境に悪影響を及ぼした企業の引責を求めるイニシアチブ(国民発議)の対案を可決した。これは、原案を否決したスイス政府へのメッセージでもある。 

ここ最近、企業の社会的責任を国内法に盛り込む動きが世界各地で急速に目立ち始めている。スイスでもこの夏、下院が「責任あるビジネス」イニシアチブ他のサイトへの対案について協議した。この案が両院を通過すれば、スイスは最前線へと躍り出る。 

同イニシアチブは2016年、80以上の民間組織から成る団体、スイス企業正義協議会他のサイトへが発起した。大きな支持を得る一方で、熱い議論も巻き起こした。連邦内閣はこれを否決したが、その核心は対案にも残されており、下院の可決に上院も続きそうだ。両院が可決すると、イニシアチブが取り下げられる可能性も出てくる。

イニシアチブも対案も、その目的は、スイスに本社を置く企業に世界各地で人権と環境を尊重してもらうための法的基礎を構築することにある。具体的には、人権デューディリジェンス(人権の侵害に関する評価や防止対策など)の義務付けや、子会社が引き起こした損害の引責だ。 

しかし、対案が対象としているのは、社員500人、年間売上高8000万フラン(約91億円)、資産総額4000万フランという下限のいずれか二つを超える企業のみ。別途、人権侵害の恐れのある活動を行っている企業も対象となり、合わせると全国で推定1万から1万5千社がこれに相当する。また、企業が責任を負うのは、法律で定められている子会社が行う活動、および身体、生命、財産に対する損害に限られている。 

このように対象範囲はイニシアチブの原案より狭まっているものの、「この対案はまだ受け入れ可能な妥協策だ」と、スイス企業正義協議会のトム・カッセー氏はあるインタビューで語っている。「直接法律が変わるなら、何年もかけて憲法改正を要求し、法制化の議論を行うよりずっと早く事が進む」 

「新しい標準」

11年に国連がビジネスと人権に関する指導原則他のサイトへを導入して以来、ハードロー(法律・法令・条令など)の中に企業が尊重すべき人権の基準を組み込む動きに弾みがついた。このイニシアチブもその一例だ。同指導原則を策定した米国際政治学者のジョン・ラギー氏は、経済紙ハンデルスツァイトゥングに対し、人権デューディリジェンスの義務付けは「新しい標準」であり、「革新的な変化を生み出そうとしているのはスイスだけではない。下手をすると、遅れを取るかもしれない」と語っている。 

11年以降、世界ではビジネスと人権に関する法律やイニシアチブが30以上導入されている。非財務情報開示に関する欧州議会・理事会指令2014/95他のサイトへ英国現代奴隷法2015他のサイトへ、紛争鉱物に関するドッド・フランク法他のサイトへ1502条、そして最近オランダで可決された児童労働デューディリジェンス法他のサイトへなど、これらはすべて人権デューディリジェンスの義務化を求めたものだ。 

国内法に新たに導入されるのは、企業責任および被害者が裁判所に訴え出る権利だ。これらはスイスのイニシアチブで特に激しい論争の的となっている。人権を侵害しないための方策を盛り込んだ「注意義務の計画」を発表しなかったり、デューデリジェンスを行わず予防可能だった被害を出してしまったりした企業への罰則を定めた世界初の法律は、17年2月に採択されたフランス企業注意責任法だ。 

フリブール大学でビジネスと人権についての講義を行っているエリザベス・アムラス氏にとっては、これらの法律の制定はほんの端緒に過ぎない。「企業が自国の領土外で違反をしても、その責任を明白にする国際司法裁判所がないため、現在は当事国の政府の対応に頼るしかない。だが現実には、独立した司法が確立していなかったり、報道の自由が制限されていたりする国で、被害者が正義を得るチャンスはほとんどない」と言う。 

連邦統計局によると、スイスでは57万8千強の企業が400万人以上を雇用している(全人口の約半数)。そのうち99%は社員数が250人に満たない中小企業だ。一方、大企業は割合では低いが、社員数で見ると民間企業の3分の1を占めている。 

ハードローへのシフトは、自主的な取り組みでは不十分という見解から生じたものでもある。「企業の人権侵害を指摘する報道は絶えない。企業の自己規制は機能していない。もっと厳しくする必要がある」とアムラス氏は言う。

変革か、単なる見せかけか

このイニシアチブは、スイスの企業にどんな変革をもたらすのか。その見方はさまざまだ。シェレンベルク・ヴィットマー弁護士事務所のアンニャ・ジョルジュ弁護士は、あるインタビューで次のように話している。「イニシアチブが可決されようがされまいが、スイスの企業は今後もっと頻繁にこれらの問題と向き合っていくことになるだろう。人権デューディリジェンスや報告の義務は、リスクマネジメントを考えている大企業にとっては常識になっていく」

企業責任の義務化はそれよりさらに大きな変化をもたらしそうだ。スイス企業正義協議会のカッセー氏は、「責任を義務付けなければ、企業は悪弊を予防しようとしない」と批判する。

一方、イニシアチブに反対している経済連合エコノミースイスのエーリヒ・ヘアツォーク氏は、これにより、「スイスの企業が不公平に罰せられるかもしれない」と危惧する。「自社の管理外で行われた活動によって、競合他社も含め、国外から告訴される可能性が出てくる」

だが大事なことはおそらく、このイニシアチブで他国に模範を示すことだ。またスイスには多国籍企業も多いため、人権保護に関するスイスの立場をはっきりと表明することではないだろうか。

連邦統計局他のサイトへの17年の発表によると、スイスで外資系の多国籍企業の子会社1万1524社に勤務する人は、10人に1人。また、世界の企業番付フォーチュン500他のサイトへにリストアップされている企業の密度で見ても、100万人に約2社とスイスは世界一を誇っている。


(英語からの翻訳・小山千早)

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