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再保険 スイス・リー、ソフトバンクと「ECプラットフォーム関連」で提携 キールホルツ会長インタビュー

スイス・リーのウォルター・キールホルツ会長はデジタル化が自動車保険の保険料に価格破壊をもたらすとみている

スイス・リーのウォルター・キールホルツ会長はデジタル化が自動車保険の保険料に価格破壊をもたらすとみている

(Goran Basic / NZZ)

スイス・リーのウォルター・キールホルツ取締役会会長は、将来、保険業界に大変革が起こると予測する。日本のソフトバンクからの出資受け入れ交渉がまとまれば、電子商取引(EC)プラットフォーム関連で提携する可能性を示唆した。

NZZ:デジタル化はいたるところで話題になっています。保険業界ではまだあまり進んでいませんが、なぜでしょうか。

ウォルター・キールホルツ: 世界のどこを見ても、保険会社がビジネスモデルにまだ本格的なデジタル技術を取り入れていないのは驚きだ。アジアなどの大投資家からは、次は保険業界の番だと何年も前に聞かされたものだが。

 その理由の一つとして挙げられるのは、経営コストがかかること。アジアでは、経営コストが保険料収入の半分を占めるところもある。もう一つの理由は、今日の保険業のビジネスモデルでは、リスクの低い商品は収益を生まないことだ。

 そのため、根本的に保険ビジネスを懐疑的な目で見ている人が多い。その第一の理由は、やはり経営コストが高過ぎること。第二に、リスクの高い加入者にかかる費用を加入者全員が負担しなければならない構造だ。

NZZ:デジタル化で透明化が向上することで、加入者間の連帯がなくなるということですか?

キールホルツ: 正直者と嘘つきの間にはそもそも連帯はない。私が言う高リスクとは、備えがなく保険でカバーできるリスクであり、運の悪い人という意味ではない。デジタル化はむしろ、膨大な事案のなかからこのような高リスクをふるい分け、それに対する保険料を高めに設定し、低リスクには安めに価格設定できるようにする。

 また、経営コストを大幅に縮小し、極端なケースではほとんどゼロにまで下げる後押しにもなる。

 そして三つ目として、この先契約者数の拡大を追求するビジネスモデルは大幅に減るだろう。今日最大のビジネスは一次保険、特に自動車賠償責任保険だ。ほとんどの車には所有者個人が保険に加入している。だが近い将来、私たちの見方では、個人所有の車両が閉める割合は15%程度まで下がり、多様なプラットフォームの所有する車が増えていくだろう。

NZZ:もう少し具体的に説明してください。

キールホルツ: 例えば、自動車メーカーのプラットフォームが車を所有するようになる。自動運転車が使えるようになれば、特にロンドンやニューヨークなどの大都市圏ではもう誰も車を買わなくなるだろう。ボタンを一つ押せば、数分後にメルセデスが顧客の玄関先に来ている。それも無人で。ドライバーはこのシステムでは危険な存在だ。

NZZ:保険会社は顧客、つまりそういうドライバーについても知る必要があるのでは?

キールホルツ: もちろんだ。だが、いずれドライバーはまったくいなくなるだろう。デジタル化によって道路交通量は減少し、車は公共交通機関と個人の交通手段の中間に位置するようになる。自動車販売業者も姿を消すかもしれない。そして、保険業者もまたこの変化のあおりを受けるだろう。保険料収入の半分を占めている自動車保険の大部分がなくなるのだから。

NZZ:それはたいへんなことではないですか?

キールホルツ: 保険業者の名前やブランドが持つ意味は、絶対に変わってくる。賃貸アパートの検索サイトが家財保険も提供するようになり、顧客にとってはもはやどこの保険かは問題でなくなる。そんなことを尋ねる人はほとんどいなくなるに違いない。

NZZ:スイス・リーにとってそれは何を意味するのでしょう。

キールホルツ: リスクがどこにあるか、現場にもっと近づかなくてはならなくなる。再保険会社であるスイス・リーは今、一連の保険システムの末端にいるが、好転を期待して指をくわえて待っているわけにはいかない。常にリスクにアクセスできるようにしておかなくてはならないのだ。

NZZ:ということは、顧客情報を収集する事業者との提携が重要になってきますね。

キールホルツ: その通りだ。アマゾンのような大きな電子商取引(EC)事業者は、こんなふうになるかもしれない。あなたの奥さんがサイトのレジに進むと、そこで生命保険の加入を勧められる。奥さんは例えば次から買い物1回ごとにレジで生命保険に5ドル支払い、買い物で1%の割引を受ける。そして、そのお金も保険に払い込まれる。こうして、買い物をするたびに保険金額が増加するという仕組みだ。

NZZ:スイス・リーと交渉中の日本のソフトバンクは、そういう世界に精通した企業なのですか?

キールホルツ: そうだ。ソフトバンクは商機をつかもうとしているビジネスパートナーを探している。

NZZ:スイス・リーとソフトバンクの役割分担は?

キールホルツ: この話し合いがどう進むかまだわからないが、うまくまとまればすぐにでも、拡大したソフトバンクの世界の一部として種々の協力関係の可能性を検討するつもりだ。そうなればもちろん、まさにデジタル化という分野で両社にとって有益となるのは間違いない。

NZZ:増資をして、ソフトバンクに新株式を譲渡することも考えられますか?

キールホルツ: それは最初から考えていない。お金は必要ない。自己株式の取得と同時に新株を発行するなど不条理だ。ソフトバンクがスイス・リーに出資したいのであれば、証券取引所でリー社株を購入できる。

NZZ:協力関係は具体的にどんな形になるのでしょうか?

キールホルツ: まだわからない。まずは話し合いの結論が出るのを待つ。その後、状況次第で共同のビジネスやプロジェクトをスタートする。そして、それが機能するかどうかを見極める。

NZZ:まだすべて漠然としていますね。時間的な制限はないのですか?

キールホルツ: それについては今は何も言えない。テクノロジーの世界と保険の世界はそれぞれ違うスピードで動いている。こちらは長距離走で、向こうは短距離走だ。

NZZ:提携の核は何ですか?

キールホルツ: ソフトバンクの孫正義会長は、エコシステム(業界の収益構造)の形成を考えている。それはいずれ電子商取引プラットフォームに関連したものになる。このようなエコシステムは業界ごとに作られるのではなく、健康や移動手段などの関連業者を一体化させる。金融業界もその一部となるだろう。

NZZ:スイス・リーが単独で実現化を計画しているプロジェクトはありますか?

キールホルツ: 大きな課題はサイバーリスクだ。私は、社会も業界も、今はこれをコントロールできないと考えている。それゆえ、株主のお金をこの分野に投入することには非常に消極的だ。

 戦争は戦場だけでなくコンピュータの世界でも起こるようになり、敵のインフラに長期的な被害を与える可能性がさらに高まった。再保険会社である私たちが、このようなリスクを国の援助なしにカバーできるとは考えにくい。

NZZ:企業には事業中断リスクをカバーする保険が必要です。その中にはサイバーリスクも含まれます。

キールホルツ: サイバー被害が実際に出るのは、事業が中断されたときだ。その理由は技術にあったり、会社のコンピュータへの攻撃だったりする。もっと恐ろしいのは、会社の顧客の情報や情報技術が攻撃されたときだ。このようなリスクを抑え込む方法はまだよくわからない。サイバー関係が絡むときに私たちが慎重になるのはそのためだ。

NZZ:ほかにも取り組んでいるリスクはありますか?

キールホルツ: 気候変動も大きな課題の一つだ。嵐や大雨、洪水、あるいはその逆の干ばつ。だが、気候変動の原因をめぐる議論に関与するつもりは特にない。気候変動はもはや現実に起きているため、予防やリスクマネジメントの方に力を入れている。気候変動の原因が誰にあるかということについては、政治家や専門家が議論している。そこでは意見の一致は見られないが。

NZZ:2017年に発生した三つの巨大ハリケーンでは多くの保険会社が大きな痛手を受けましたが、これらのハリケーンをどのように見ていますか?

キールホルツ: 残念ながら特別な出来事ではない。05年には「カトリーナ」のほかにも、合わせて24のハリケーンが発生している。つまり、17年より多かった。私は巨大台風の発生頻度が増したとは思わない。60年代や70年代には被害の発生頻度が非常に低い期間があったが、現在との大きな違いは、当時は沿岸の人口が少なかったこと、そして、その後世界人口が倍増したことだ。それに都市化も進んでいる。その都市は今、どこにある?沿岸地域だ。

NZZ:保険業界は17年の痛手を消化できたのでしょうか?

キールホルツ: 米保険会社の四半期決算では、カリフォルニアの森林火災がまだ足かせとなっていることがうかがえるが、そのほかでは消化されており、業界の資本状況も申し分ない。甚大なアスベスト被害が不安感をもたらした80年代や90年代とはまったく異なる。

NZZ:話題は変わりますが、トランプ大統領の就任で貿易紛争への懸念が浮上しました。これについてはどう思いますか?

キールホルツ: そうなったらもちろん最悪だ。しかし、保護貿易主義はトランプ以前にも芽生えていたし、これは政府の問題でもある。それに、金融危機の後に各国がどのような措置を受けたか、あるいは措置を受けなかったかということも影響している。

 欧州諸国は今、世界貿易の大ファンを気取っているが、大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定の交渉中には、これを妨害し、自由貿易は偽りごとだと言っていた人も多かった。それでも、貿易に対する米国のネガティブな姿勢には驚く。

 もちろん、中国が二国間の貿易不均衡の是正を拒んでいるのは問題だ。だが、貯蓄率が下がらず、それゆえに消費が増えず対米輸入が小さい中国を責めることはできない。中国にはしっかりした老齢年金も健康保険もないので、どうしても貯蓄に頼ることになるからだ。

NZZ:保険会社も顧客も、金利の正常化をもう長年待っています。今後の見通しはどうですか?

キールホルツ: もう待ってはいない。もはや願うばかりだ。金融危機勃発から10年、これほど長期の介入は稀だ。それ以前の02年にも、アラン・グリーンスパンが利子を押さえたことがある。米国では徐々に正常化の兆しが見え出したが、欧州ではまだまだだ。私たちの場合、スイスでのビジネスは少ないので、この国の低金利への関心は薄い。だが、金利をめぐる状況は確かに問題だ。私たちの収入源は、金融収益と保険料の二つ。それ以外の収入はない。

NZZ:スイス・リーは自己株式の比率が非常に高いですね。

キールホルツ: 法律では10%まで認められている。当社の場合は目下8%強だ。前回の自己株取得計画で処分されることになっている銘柄は含まれていない。自己株式は柔軟な行動に欠かせない大切な道具だ。自己株式には配当金は支払われないため経済的な価値はなく、自己資本利益率の計算にも無関係だ。そういう意味では、ただ持っているだけだ。

NZZ:ソフトバンクなど他社からの出資に考慮されることはありませんか?

キールホルツ: 他の株主に対してフェアになるよう、自己株は全株主の利益が目減りしないときにのみ譲渡する。魅力的な買収を行うときや大型の新ビジネスを決めたいとき、株を上昇トレンドで市場に出したいときなどには、株主の理解も得られる。

NZZ:まもなく株主総会が開かれますが、予期せぬ出来事が起こると思いますか?

キールホルツ: その可能性は低いと思う。議決権株式は当社の株の約67%で、残りは自己株や株式名簿に記載されていない株だ。総会に出席する株主は議決権株式のおよそ3分の2と比較的多いが、全体的には株式資本の半分にもならない。これまでの経験から、実際に会場に来る株主は所有権者の1%程度だろう。

NZZ:あなたの取締役会在籍期間が長過ぎるという批判も聞かれました。

キールホルツ: 株式の約5~7%は機関投資家のエトス他のサイトへや投資家グループのアクタレス他のサイトへの影響下にある。私は年に一度、保有比率上位50位の株主と個人的な話し合いの時間を持つようにしている。そのため、アメリカをはじめ、出張に出ることが多い。議決権コンサルタントのISS他のサイトへともよく話し合う。もちろん、批判があれば、総会で登壇してもらってかまわない。

NZZ:年齢的には問題はありませんか?

キールホルツ: 私はこれだけ長くこの会社にいることを誇りに思っている。会社に長く残る人は少な過ぎるくらいだ。

広い人脈、金融界で一意専心

ヴァルター・キールホルツ氏(67)はスイスの金融界や世界の再保険業界を代表する一人。米ジェネラル・リインシュアランスとスイス・クレディットアンシュタルトに勤務したのち、1989年にスイス・リーに入社し、急速に出世する。97年1月、ルーカス・ミューレマン氏に代わってCEOに就任し、6年後ジョン・クーンバー氏にバトンタッチ。98年から取締役を務め、09年に会長に就任。

銀行業務における彼の手腕は、金融危機以前から高く評価されていた。03年から09年までクレディ・スイス・グループの取締役会会長を務め、その後再びクレジット・デフォルト・スワップ取引の失敗で窮地に陥ったスイス・リーの指揮に専念。シンクタンクのアヴニール・スイスの財団理事およびチューリヒ芸術協会の会長も務める。

インフォボックス終わり


(独語からの翻訳・小山千早)

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