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国連特使 ミャンマーの平和促進に挑むスイス人女性

Christine Schraner Burgener arrives in Rakhine by helicopter

ミャンマーの国連特使クリスティン・シュラーナー・ブルゲナー氏は、約100万人のロヒンギャ難民が逃れたラカイン州の訪問をはじめ、多くの出張をこなす

(Keystone)

約100万人が国外に逃れ、政府が民間人と軍部から構成され、トップ政治家がジェノサイド(集団虐殺)の罪で起訴されている国、ミャンマー。国連特使を務めるスイス人のクリスティン・シュラーナー・ブルゲナー氏は、この国で平和を促進させるという難しい任務に立ち向かっている。

約100万人が国外に逃れ、政府が民間人と軍部から構成され、トップ政治家がジェノサイド(集団虐殺)の罪で起訴されている国、ミャンマー。国連特使を務めるスイス人のクリスティン・シュラーナー・ブルゲナー氏は、この国で平和を促進させるという難しい任務に立ち向かっている。

今年4月にミャンマー担当の国連特使に任命されたシュラーナー・ブルゲナー氏は先日、スイスの首都ベルンにある喫茶店で新しい任務について取材を受けてくれた。待ち合わせ場所は、絵画のように美しい旧市街にあるアインシュタイン・カフェだ。外の空気は冷たい。「そうですね」と同氏は言う。最近は出張が続いたこともあり、気温の変化を感じていた。

現在55歳。白い服に革のジャケットを身にまとい、エレガントな雰囲気を漂わせる。スイス人だが子供時代は日本で過ごした。以前はスイス大使としてドイツやタイに赴任。2人の子供の世話をするために外交の仕事を夫と分担し、ワーキングシェアの草分けとなった。スイス人でありながらアジアの要素もある彼女は、女性ならではの外交手腕を発揮してきた。趣味はバイオリンとサックス。クラッシックをよく演奏するが、ジャズも少したしなむ。

子供2人(娘22歳、息子19歳)が成人になったため、今回の任務を引き受けようと思ったという。しかしそれは途方もない挑戦でもある。シュラーナー・ブルゲナー氏にとって、これまでで最も難しい挑戦だろうか?すると同氏は「どの挑戦もそれぞれ違う」と答えた。

新しく国連特使が任命された背景には、ロヒンギャの武装勢力が警察施設を襲撃したことを機に、ミャンマー軍が2017年8月にミャンマー・ラカイン州のイスラム教徒ロヒンギャの制圧に乗り出したことがある。国連の報告書によれば、軍は地元の仏教系民兵から支援を受けつつ、村に火をつけ、住民を大量に殺害し、レイプや性暴力をふるった。隣国バングラデシュに逃亡した約70万人のロヒンギャは、現在、過密な難民キャンプに暮らす。最近発表された国連報告書では、ミャンマーの軍司令官および氏名が公表された軍幹部5人はジェノサイド、人道に対する罪、戦争犯罪で起訴すべきとしている。

シュラーナー・ブルゲナー氏の任務は、ラカイン州、難民の帰還、民主主義と人権の促進、包括的な和平プロセスと幅広い。ミャンマーではラカイン州だけでなく他の州でも民族紛争が長引いているが、同氏の優先課題は難民キャンプに暮らす約100万人のロヒンギャへの対応であり、これには「早急な解決策が必要だ」。「ロヒンギャの帰還は人権に配慮し、安全かつ自発的に行われるべきだ」と語る同氏だが、ミャンマーでロヒンギャへの人種差別的な態度が変わるには何十年もかかる可能性があることも承知している。

その一方で、「橋渡し役」に挑む同氏は、ファシリテーター(対話の促進者)として、軍を含むすべての人々から話を聞く必要があるという。「メガホン外交」や相手に扉を閉ざすことが有効とは考えない。すでに軍高官や武装勢力のほか、アウンサンスーチー国家顧問とも面会した。スーチー氏はノーベル平和賞受賞者だが、ロヒンギャ危機について言及しないため、今や同氏を称賛する声はない。だがスーチー氏にはまだ重要な役目があると、シュラーナー・ブルゲナー氏は考える。「スーチー氏は自宅に15年間軟禁されていた。そうした人物が民主化への戦いをやめるとは思えない。だがスーチー氏は厳しい状況にいる。国際社会からの期待と軍との間で板挟みにされている状態だ。個人的には、皆でスーチー氏を支援すべきだと思う。同氏が『これまでの出来事は容認できない』と強く主張しなかったために、多くの人々が失望したのも分かるが、スーチー氏が軍と協力せざるを得ないことにも留意すべきだ。軍にはすべての憲法改正案に対し拒否権があるのだから」

シュラーナー・ブルゲナー氏はラカイン州や、バングラデシュのロヒンギャ難民キャンプを訪問した。ラカイン州での出来事は「実に、実に恐ろしい」と語る。今必要なのは「説明責任と包括的な対話」だという。どのような形で説明責任をすべきかとの質問に、同氏はこう答える。「まずは事実調査だ。その次に裁判所が判断を下さなければならない。重要なのは信憑性と透明性の高い事実調査が行われることだ」

「ミャンマー政府は私の任務に反対だったが、初めて顔を合わせたとき、彼らが初めに話した言葉は『あなたがスイス人だから、我々はあなたを認める』だった」

ミャンマーは国連特別報告者で韓国人の李亮喜(イ・ヤンヒ)氏の入国を拒否した。一方、シュラーナー・ブルゲナー氏の入国要請はこれまですべて認可されている。ファシリテーターを務めるにはスイス人の立場は有利なのだろうか?同氏の答えは次の通りだ。

ファシリテーターとして成功を収めるには、現地の「メンタリティと文化」も知る必要がある。例えばアジアの人々は率直な物言いを傲慢に感じるという。

「正直に言うと、私は非公開の場ではミャンマー政府にかなり批判的だが、メガホン外交をする気は全くない。私の立場でそんなことをしても無駄だし、ミャンマー政府が扉を閉ざすことになりかねない」

状況を進展させていくには、国際社会に自分の中立的な立場を理解してもらう必要があると考える。

時には、国連加盟国などからサンドバッグにされている感じを受けることもある。頻繁に出張があるため、ベルンに暮らす家族に会えるのは1カ月に4日程度。任務中には恐ろしいことに直面することもある。それでもこの任務をこなしていけるのは、「私が辛抱強いだけでなく、成果が表れるところも見たいからだ。一定の時間が過ぎても成果が十分に表れなければ、もちろん自分の任務について考え直す。私は人から楽観的すぎるとか、辛抱しすぎだと思われることもあるが、信念もあるのだ」


(英語からの翻訳・鹿島田芙美)

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