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在外スイス人議員候補 日本からスイス連邦議会議員に立候補「スイスに新しい州を!」

パスカル・ロッタ

スイス国民議会(下院)議員候補のパスカル・ロッタ氏。現在は早稲田大学高等研究所の講師として、研究にいそしんでいる

(swissinfo.ch)

議員候補なのに、支援者もいない土地に一人きり―。第二の故郷、日本でそう感じているのは、スイス国民議会(下院)議員候補のパスカル・ロッタ氏(33)だ。早稲田大学高等研究所で講師の職を得、研究にいそしむ同氏は、スイスから9600キロ離れた異国で当選を目指す。在外スイス人の利益を代表するため国政に打って出た彼には、ある大きな構想があるという。

東京・早稲田大学のキャンパスを歩くと、その身長の高さからロッタ氏はよく目立つ。英国の伝統的な大学キャンパスの影響を受けた構内では、約1万人の、主に日本人の学生たちが次の講義へと急ぐ。そんな中でも落ち着き、リラックスしているように見えるロッタ氏だが、それには理由がある。

この記事は、スイスインフォの直接民主制に関する特設ページ#DearDemocracy他のサイトへの一部です。ここでは国内外の著者が独自の見解を述べますが、スイスインフォの見解を表しているわけではありません。

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「博士号取得後、ここで念願の職を見つけたのです」とロッタ氏。それは同大学高等研究所の講師の職だ。「受け持ちの講義はほぼなしで、ここで3年間、中立性をテーマにした国際比較研究ができることになったのです」。

人口約3千万人の世界最大の都市圏では居心地の良さを感じている。「東京の人口は非常に多いですが、生活の質はかなり高い」。そのうえ、日本の民主主義は他のアジア諸国と比べ強固で安定していると考える。

日本に初めて来たのは、交換留学生だった18歳のとき。当時は大阪近郊の農家にホームステイし、日本語を学んだ。その後、日本を再び訪れ、市役所でインターン生をし、修士・博士課程を修了した。「自分の未来が日本とスイス両国にあると考えていました」。両国は9600キロ離れているが、ロッタ氏は本気だ。 

ブルーノ・カウフマン(Bruno Kaufmann

スイス公共放送SRFで北欧担当の特派員。スイスインフォの#直接民主制 の分野では、世界の直接民主主義の動向を分析する

(SRF-SWI)

今秋のスイス下院議員選挙に立候補した。出身地のフリブール州選挙区から出馬し、所属する社会民主党の候補者名簿に登録している。ただ、本当は他の「州」を代表したいと考える。

「当選したら、私たち在外スイス人のための仮想の『州』創設を実現させたい」。国外に住むスイス人は現在約80万人いるが、現行の確固たる連邦・州・基礎自治体スキームでは、在外スイス人のことが考慮されていない分野が多いという。

ロッタ氏は「在外スイス人は(行政単位が最も小さい)基礎自治体の選挙人名簿には登録されていますが、州では登録されていません。全州議会(上院)選挙で在外スイス人に投票を認めるかどうかは、各州の判断に委ねられています」と説明する。

また、在外スイス人は行政手続きの面でも度々苦労させられるという。「例えば運転免許証の発行です。在外スイス人があの小さなプラスチックカードをなくすと、再発行してくれるところが今のところありません。スイスで運転できる権利があることを領事館で『証明』してもらえるだけです。在外スイス人向けに運転免許証を再発行できる管轄当局がないのです」 

「ヘルヴェティア州」

そこでロッタ氏は、27番目の仮想の州を新しく作り、準州と同様に上院に1議席、下院では投票権を有する在外スイス人の数に合わせて最低5議席を設ける案を掲げる。新しい州の名称は「ヘルヴェティア州」を挙げる。

ただ、絶妙にバランスの取れたスイスの政治制度において、このような国政改革は一夜で実現できるわけがない。それは同氏も承知している。しかし「行動は起こさなければなりません。外国で暮らすスイス人の数はもうじき100万人を超えますが、彼らの権利や利用できるサービスが徐々に縮小されているのです」と訴える。

ロッタ氏がここで示唆しているのは、在外スイス人を対象に社会保障を縮小しようとする現在の政治的動きだ。「(日本の国民年金に当たる)遺族・老齢年金基金に任意で掛け金を払っているのに、困ったときに全てのサービスが受けられないなんて理不尽です」

一方、連邦政府が電子投票制度の全国的導入を当面見送り、10月19日の総選挙で電子投票の実施を予定していた数州で中止が決まった件については、在外スイス人協会が強い懸念を示した。しかしロッタ氏は特に問題にしていない。「選挙や投票ではスピードよりも安全性を優先すべきです」と強調し、いずれは電子投票が可能になると言い切る。「重大な選挙や投票で導入するよりも、まずは国民発議に必要な署名集めを電子投票で出来るようにする方が意義があるでしょう」

「非代表的な代表民主制」

今秋の選挙で当選すれば、(任期中に辞職したティム・グルディマン氏に続き)2人目の「在外スイス人議員」となるが、その見込みはあまりないとロッタ氏は考える。日本に在留資格のあるスイス人のうち、フリブール州に選挙権がある人がどれだけいるか分からない状況で、本格的な選挙キャンペーンを行う意義はあまりないと考える。

それでも今回の立候補が、日本の友人や知人と両国の政治制度について話し合うきっかけになった。そうした会話を通し、スイスと日本に興味深い違いがあることが分かった。例えば「ここ日本では、国会議員に立候補するだけで数百万円の供託金が必要ですが、スイスでは1円もかかりません」。

そのうえ、選挙制度も大きく異なっているとロッタ氏は言う。「安倍晋三首相が率いる与党自民党は、過去の衆議院選挙で得票率が3分の1でした。それにもかかわらず、約3分の2の議席を獲得しました。これは、やや非代表的な代表民主制と言えるのではないでしょうか」とロッタ氏。

パスカル・ロッタ

ロッタ氏は、日本の今の政治的状況を「やや非代表的な代表民主制」とみる

(swissinfo.ch)

その他の大きな違いには、日本には国政レベルで直接民主制の制度がないことを挙げる。「憲法改正の国民投票を除き、日本には国民発議もなければ、(国会で可決された法律に待ったをかける)任意のレファレンダムもありません」。一方、近年は市町村レベルで自治の傾向が強まりつつあり、それに伴って住民と政治との距離が近くなっていると指摘する。「日本の市町村は例えば同性パートナーシップを承認したり、代替教育を行う地元の私立学校を公式に認めたりするなどしています」。

ロッタ氏の立候補で見えたものがある。それは、在外スイス人候補者は当選の見込みは薄いものの、立候補が現地の国の人々とスイスや民主主義について対話するきっかけになっているということだ。


(独語からの翻訳・鹿島田芙美)

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