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多才な造形家 マックス・ビル

スタジオで建築の模型を見つめるマックス・ビル

(Ernst Scheidegger/Neue Zürcher Zeitung)

マックス・ビルとは?と問うと、時計のデザイナー。建築家、工業デザイナー。いや「コンクリート・アート」と呼ばれる幾何学的な絵画や彫刻のアーティストなど、人によってさまざまな答えが返ってくる。

 バウハウスでパウル・クレーなどに学び、その理念を受け継ぐ「ウルム造形大学」の校長も務めたマックス・ビルは、生涯にわたって機能性と新しい空間の造形性を、あらゆるジャンルで追求した。この総合的な「造形家」マックス・ビルの生誕100年を記念した展覧会が、チューリヒで開催されている。これは主に、彼のアーティストとしての側面に光を当てたものだ。

11点の彫刻作品

 「まずチューリヒのバーンホフ 通りにある『パビリオン彫刻 ( Pavilion sculpture) 』を見て、その後、そこに書かれている指示に従い10カ所に建てられたパネルの解説を読みながら進むと、20分で自然に展覧会場『ハウス・コンストリュクティブ ( haus konstruktiv ) 』に到着する」と広報担当のドミニック・ランドルト氏が言った。
 
 スタートのパビリオン彫刻は、積み木のように長方形の石が組み合わさってできた「門と椅子」からなる作品だ。「座って眺めるように」というマックス・ビルの当時の指示に従って座ると、門の3重に重なって見える長方形が、通行人がその一部をよぎるため、さまざまに変化し、見ていて飽きないし、三次元を超えた不思議な空間を体験するような気分になる。

 歩きながらたどる残り10箇所の地点のパネル上で解説されているマックス・ビルの彫刻は、展覧会場に展示されている10点の「彫刻作品」に呼応する。そしてこれら10点の作品は、実際には世界各地にある彼の大型の作品の模型であったり、ヴァリエーションであったりし、マックス・ビルの「基本言語」を形成する代表的な作品群になっている。

 こうした、展覧会場の作品の一つが「空間のリズム ( rythme in space ) 」だ。これも、見る角度を変える度に、足を前に出したダンサーや海底で揺れる海草といったイメージを喚起し、初めて見るような空間を体験させ続けてくれる。

本人がすべてアレンジ

 バウハウスで学んでいた時代、自分の作品を「一つの意味を持つ方法」で展示を企画した経験を持つマックス・ビルは、その後1951年に「最も重要な回顧展」と自ら呼ぶ作品展をブラジルのサン・パウロで開催した。作品の選択から、カタログ制作、展示形式など一切を自分でアレンジし、いわば自分がキュレータになって完成させたこの展覧会が、今回の展覧会場の3階にそのまま復元されている。

 「サン・パウロに本人が行けなかったので、何通もの手紙で指示を出していた。それに従って忠実に復元した。例えばすべての絵は、その中心が1メートル20センチの高さになるよう指定されている」とランドルト氏。デッサン、彫刻、建築プロジェクトなどの「要素」が全体の展示場という「作品」をさまざまな側面から捉えられるよう構成されている。

 また、造形大学で教鞭をとっていたマックス・ビルは、「自分の創造性を観客に分かりやすく伝える」という教える立場の視点も忘れていない。例えば自分の創作の基本を理解してもらおうと、「15のバリエーション」という作品を入り口のすぐそばに展示している。

コンクリート・アート

 この「15のバリエーション」とは、3角形から4、5、6、7角形までをその内部に含む8角形が原型としてあり、そこから派生した14のバリエーションが、A 4サイズの紙に描かれた作品だ。バリエーションの一つに、輪郭線を省いて3角形から8角形の形の角のみを点で表したものがある。点だけを見つめていると、その背後に6つの形が浮かび上がってくる気がする。こうした実際に描かれた形とその背後に隠れている形の「戯れ」がおもしろい。

 ドゥースブルフが初めて用いた「コンクリート・アート( concrete art ) 」と言う概念をマックス・ビルは理論的に展開した。「concrete/具体的」をマックス・ビルは次のように定義する。
「今までに触れることもできず、目にも見えなかったものを表現すること。抽象的なアイデア、関係、コンセプトを目に見えるようにすることが具体化だ」

 「15のバリエーション」を通してマックス・ビルは、数学とアートを融合させながら、さまざまな関係、新しい造形、またそれらが生み出される過程も提示する。そうすることで、観る者に思いもよらなかった新しい表現を発見させてくれる。

 こうした「学習」をした後で、巨大な絵が展示される一階の最初の部屋に戻り、そこに表現された、鮮やかな色や形、それらの関係、それらの背後に隠された法則、空間を見つけ出す「遊び」は楽しく、マックス・ビルが考える「わたしの創造性を理解した観客」になれるかもしれない。

swissinfo、チューリヒにて 里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) 

マックス・ビル( Max Bill ) 略歴

1908年、スイスのヴィンタートゥールに生まれる。チューリヒの工芸学校を経て、バウハウスでヴァシリー・カンディンスキーやパウル・クレーの下で学ぶ。

1929年、チューリヒに戻り建築家、画家、グラフィスト、画家、工業デザイナーとして活躍。

1932~36年、パリのアーティストグループ「アブストラクション・クレアシオン( Abstraction-Création ) 」のメンバーになり、ハンス・アルプやピエ・モンドリアンと交流。1936年に「コンクリート・アート」の理論を展開させる。

1944年、スイスで「アブストラクト・コンクレート ( abstrakt konkret ) 」という雑誌を創刊し、同名の展覧会をバーゼルで開催。

1951年、ブラジルのサン・パウロで回顧展。

1952年、ドイツのウルムに創設された「ウルム造形大学」の初代校長を務め、建築学科と産業造形学科のディレクターも兼ねる。ここで、デッサウのバウハウスの理念を再現しようと努める。

1961年、大型の絵画を制作し始め、1987年まで続ける。

1967~74年、ハンブルクの造形高等学校の環境デザイン学科の教授を務める。

1980年代、モニュメンタルな彫刻を多数制作。

1994年、ベルリンで死去。

「コンクリート・アート」の実践者、理論家。環境デザイナー、工業デザイナー、建築家、彫刻家、画家、として、戦後ヨーロッパの現代美術において、重要な地位を築いた。若いアーティスト、デザイナーなどへの影響は大きく、今後ますます評価が高まるといわれている。

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「マックス・ビル100 ( Max Bill 100 ) 」展

チューリヒの「ハウス・コンストリュクティブ ( haus konstruktiv ) 」で2008年11月20日から2009年3月9日まで開催。

場所 : Selnaustrasse 25, 8001 Zürich
電話 : +41 44 217 7080
開館日 : 月曜日休館。火曜日、木曜日、金曜日は12~18時、水曜日は12~20時、土、日曜日は11~18時

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