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戦闘機グリペン


スイス軍の戦闘機購入問題 最終決断は国民投票で


ウルス・ガイザー


スイス軍のアンドレ・ブラットマン司令官 グリペンをバックに (Keystone)

スイス軍のアンドレ・ブラットマン司令官 グリペンをバックに

(Keystone)

今から約20年前、平和団体や左派政党は、新しい戦闘機購入の阻止に失敗。今回は、連邦議会が可決したスウェーデン製の戦闘機「グリペン」22機の新たな購入を阻止しようと国民投票へと持ち込んだ。一方、購入賛成派は「グリペンはロールスロイスのような高級車ではなく、信頼のおける乗用車」という。

 5月18日に行われる予定の国民投票では、スイスが31億フラン(約3590億円)掛けてスウェーデンのサーブ社(Saab)の戦闘機「JAS39グリペン」22機を購入するか否かが問われる。長年活躍した現在の戦闘機「F-5タイガー」に代わり、最新型のグリペンを投入して2050年まで空域の安全確保を目的とする。

 10年にわたる評価期間や、スイス空軍の戦闘機一部買い換えに関する政治的な論争も、この国民投票で終結する。

 昨年の9月、左派政党の反対もむなしく、連邦議会の上下両院で戦闘機の購入が承認された。これを受け、社会民主党、緑の党、自由緑の党、反戦主義団体「軍隊なきスイスのためのグループ(GSoA)」は連携し、決議をレファレンダム(国民審議)に持ち込むことに成功。その結果、戦闘機購入の最終判断は国民の手に委ねられることになった。

間違った優先順位

 社会民主党のエヴィ・アレマン下院議員は、予定されている戦闘機の購入に対し次のように述べている。「何十億フランもの税金を無駄に使う単なる贅沢だ。政府は投資先を間違えている。運用期間中、新しい戦闘機にかかるコストは100億フランを超える。そのしわ寄せを受けるのが教育、公共交通、老齢・遺族年金(AHV/AVS)などの分野だ」

 また、アレマン氏は、スイスは平和的な隣国に囲まれているため、空域の保全にはこれ以上戦闘機を購入する必要はないと言う。しかも購入予定の戦闘機はプロトタイプ(試作品)の段階でまだリスクがあり、これまで空の安全を守ってきたFA18戦闘機よりも性能が落ちる、と懐疑的だ。

 反戦主義団体GSoAの結成メンバーであるヨー・ラングさんは、連邦議会と政府は優先順位を間違えていると言う。「本当の危険や脅威は戦争とは関係ないところから迫ってくる。新しい戦闘機に何十億フランもつぎ込むのではなく、原発から手を引き、気候変動対策に力を注いでこそ、真の安全保障政策と言える」

スイス空軍

スイス空軍は現在「FA18ホーネット」32機と「F-5タイガー」54機を所有。

F-5タイガーに代わって、「JAS39グリペン」22機を投入予定。

空軍はまた、ピラトゥス社の訓練機の他、ヘリコプター、無人偵察機、特別輸送機など40機以上を所有。

政府は、新しく購入する戦闘機としてスウェーデン製戦闘機グリペンを選択。その他、候補に挙がっていた機種はフランスのダッソー(Dassault)社のラファール機、欧州の航空防衛大手、欧州航空宇宙防衛会社(EADS)のユーロファイター機。

国民の安全を最優先

 一方グリペン購入賛成派は、安全保障には戦闘機の購入が不可欠だと言う。超党派の「グリペン購入賛成委員会」の委員長を務めるヤコブ・ビュフラー下院議員(キリスト教民主党)は、「我が国と国民のこの先30年の安全にかかわる問題だ」と、その必要性を訴える。「将来のことは誰にも分からない。水などの自然資源をめぐりスイスが外国と対立したり、その他の理由で摩擦が生じたりする可能性もある」

  

 グリペンの購入は単なる贅沢だという批判に対し、コリナ・アイヒェンベルガー下院議員(急進民主党)は「グリペンはロールスロイスのような高級車ではなく、最新鋭かつ信頼のおける乗用車のようなものだ」と反論。事実、入札審査で、より高価な他の2機種は候補から外されている。

交換条件付きの取引

 戦闘機購入を強く求めてきたのが、ウエリ・マウラー国防相だ。同氏は戦闘機はスイスにとって妥当な出費で、新型を投入すればヨーロッパの空域の安全にも貢献できると主張する。特にグリペンは購入価格に見合う性能を持つうえ、スウェーデンはビジネスパートナーとしても理想的だと言う。

 また、戦闘機購入の見返りに25億フランを超える規模の「興味深い取引」がサーブ社から提示されたという。

 サーブはすでに2013年3月、スイスの国営兵器製造業「ルアク(Ruag)」にグリペン用のペイロード懸架装置(各種兵器を搭載する装置)の開発と生産を委託した。こうした取引では、機械産業、時計産業、研究分野も恩恵を受ける。

 グリペンの購入は政治的な妥協案であり、長年にわたる論争の末に出した結論だとマウラー氏は言う。また、空軍では90年代から保有機の縮小が始まり、当時の300機から90機にまで縮小している。

歴史的背景

 購入賛成派は、「購入反対は平和主義者がスイスの軍隊を弱体化させようとする最後の悪あがき」と一蹴する。

 GSoAは1993年6月、戦闘機購入に対しモラトリアム(一時停止)を求めたが、国民投票で否決された。これにより「FA18ホーネット」34機購入への道が開けた。

 今回の国民投票はGSoAの2度目のイニシアチブ(国民発議)。1989年の軍隊廃止のイニシアチブでは注目されたが、成功しなかった。当時、軍隊廃止に賛成する人は国民の3分の1にとどまった。


(独語からの翻訳・編集 シュミット一恵), swissinfo.ch



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