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数多いリスクと大きな負債を抱える銀行

頭上の暗雲はいつになったら晴れるのか Keystone

スイス国立銀行は6月18日、金融市場の安定に関する報告書を発表した。それによると、スイス最大銀行のUBSのみでなく、第2大手のクレディ・スイスの基盤もまだ堅実とはいえない。

自己資本を増強したにもかかわらず、大銀行の現況は安定さを取り戻せないままだ。長期的な深い景気後退が危ぶまれている。

リスクの削減

 だが、景気後退の規模に関係なく、大銀行の復調は困難だとスイス国立銀行 ( SNB、スイス中銀 ) はみている。国家援助を受けたUBSの自己資本率は現在も非常に低い。

 さらに、両銀行はまだ不良債券を多く抱え込んでおり、損失を出す可能性が依然として高いままであると同時に、特に預金高の減少などにより利益の出る可能性が低くなっている。

 スイス中銀によると、世界的な景気後退により、UBSとクレディ・スイス ( Credit Suisse ) の信用貸しは質が落ちているという。特に外国での信用貸しが減少しているため、外国にビジネス網を広げている大銀行が受ける影響はとりわけ大きい。

 これによって自己資本がさらに吸い上げられる可能性があり、利益もますます減少することになるが、それでも両銀行はこの危機を持ちこたえられそうだ。スイス中銀は両銀行に対し、ビジネスフィールドのさらなる悪化に備えてリスクの削減を求めている。

 一方、ライフアイゼン銀行 ( Raiffeisen ) や州銀行 ( Kantonalbank ) など、主に国内でビジネスを行っている銀行は、UBSやクレディ・スイスより明らかに良好な状態にある。スイス中銀によると、これらの銀行の自己資本や流動資産の状態は高いレベルで安定している。

 厳しい景気後退に対処するため、スイス中銀はこの先も非常に拡張的な金融政策を続ける意向だ。政策金利 ( ライボー ) の誘導目標値は0.25%に据え置きされる。

swissinfo.ch、外電

金額の単位:10億フラン

     2006 2007 2008 ±%

総収益
     73.0 70.7 49.0 -30.7
利子収益
     22.1 22.9 21.4 -6.6
手数料収益
     31.6 36.8 30.0 -18.5
売買収益
     13.8 5.6 -8.1  ―
業務経費
     43.1 46.5 40.3 -13.3
総利益
     29.9 24.2 8.6 -64.5
資産再評価
     1.6 4.4 6.3 43.2
年間収入
     20.1 9.8 -30.5  ―
自己資本
     139 140 141 0.6
バランスシート
     3,194 3,458 3,080 -10.9
銀行数
     331 330 327 -0.9
行員数
     127,921 136,200 135,775 -0.3

金額の単位:100万フラン

    年間収益  行員数
    2008 ±% 2008 ±%

州銀行
   2,100 -20.1 16,917 1.0
大手銀行
  -38,185 ―  63,900 -4.5
地方銀行
   457  -9.7  4,021 3.3
ライフアイゼン
   564  -19.5 7,665 6.3
外国銀行
   2,720 -17.6 23,440 6.9
プライベートバンク
   340  -23.1  4,761 10.4
全銀行
  -30,504 ―  135,775 -0.2

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