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日本でスイスの高品質を売る「スイスブランド」

西麻布の事務所でビクトリノックス・ジャパンの取締役顧問、ユーク・ヘルテル氏

(swissinfo.ch)

スイスという国のイメージと切っても離せないブランドが幾つかある。そんなブランドにスイスアーミーナイフを製造するビクトリノックス(Victorinox)と色鉛筆やペンメーカーのカランダッシュ(Caran d’Ache)がある。日本に進出しているこの二つの「スイスブランド」のアプローチの秘訣を聞いた。

スイスアーミーナイフという名前はアメリカの兵士が使い始めたらしい。カランダッシュも色鉛筆の箱にマッターホルンの姿が有名で、スイスという国のイメージとセットに製品を売っている会社といえる。

「我々はスイスアーミーナイフとう名前の通り、スイスと結婚していると言えます」と語るのはビクトリノックス・ジャパンの取締役顧問、ユーク・ヘルテル氏。これまでスイス軍が使う、ソルジャーナイフを作っていたのはビクトリノックスとライバル会社ウェンガー(Wenger)だったが、2005年に前者が後者を買収し、一つの会社となった。現在はスイスアーミーナイフ市場を独占している状態だ。

「スイスというラベルは大変、高い価値のあるものです。我々にとってスイス製が重要というのは明らかで、スイスを売るというのは企業戦略でもあります」と語るのはカラン・ダッシュ・ジャパンの代表取締役社長、アンジェロ・ポンツェッタ氏。

両社とも「スイス製」を前面に押し出し、労賃の高いスイスで100%製造しているのには訳がある。

何故スイス製は高級感が?

 何故「スイス製」は重宝されるのか。これに対してヘルテル氏は「スイスは中小企業が多い、小さい国なので自国の市場だけでは生き残れません。それで、外へ出て行かなければならなかった。必然的に国際競争では高品質と信用がなければ生き残れません」と分析する。アーミーナイフでは現在、安い中国製が出回っているが、ナイフの刃を出したりしまったりする動きがスムーズにいくには高い技術が必要で「違いは明白」とヘルテル氏。

 ポンツェッタ氏は「スイスは時計産業の伝統で時計師や宝飾職人など細かな手作業の機械産業がいまだに多いため、大学に行く人よりも見習いに出る人が多いのです」「書いたときの絶妙な流れるような感覚を出すには高技術が必要です」と語る。高い技術を持った職人がスイスのハイクオリティーを支えているということだ。

 どうやら、「スイス製」というラベルは消費者にとって、高品質や高級感、また、高技術というイメージと繋がるようだ。そして、そのイメージこそスイス企業の「武器」なのだ。

スイス人は誰でも持っている必需品

 両社に共通しているのは二つの製品ともスイス人にとっては日常品以上の「必需品」だということ。スイスで育った人なら必ず誰かに貰うものでもある。アーミーナイフは軍隊で配られる備品(返さなくて良い)だけでなく、スイス男子は7,8歳になると「もう、君は立派な男の子としてアーミーナイフを与えるぐらい信用のある年になりました」と両親がプレゼントするという。

 カランダッシュの色鉛筆も同じく、小学校に入学するとまず無料で配布されるという。カランダッシュの12本入り、色鉛筆と消しゴムセットは子供時代の思い出が色濃く、知らないスイス生徒はいないといっても良い。

 これらのアイテムを日本人にも必須アイテムとして定着させるのにビクトリノックス、カランダッシュとも必死だ。現在のところ、アーミーナイフはアウトドア人口に主に浸透しており、カランダッシュも画材の方がアーチストに良く知られているからだ。

日本進出のチャレンジ

 日本にスイス企業が進出するにあたって、口をそろえて挙げるのは「日本の消費者の高い品質への追及と、市場参入に時間が掛かることだ。

 ビクトリノックスのヘルテル氏も「長期的な視野がある会社ならとても良いビジネスができます。しかし、市場に参入するには忍耐がいることは確かです」と語る。

 カランダッシュのポンツェッタ氏は「中国では市場に参入するのは簡単ですが、失敗して大損するのも早いです。これに反して日本では参入するのは至って困難ですが、将来性があります」と語る。しかし、失敗が許されないのが厳しいところだという。「スイス人と日本人は精密な完成度を求めるところなど仕事の仕方などが似ていると言えます」


swissinfo、  屋山明乃(ややまあけの)東京にて

補足情報

<スイスアーミーナイフメーカー、ビクトリノックス>

- ビクトリノックスは1884年、シュヴィーツで創業者カール・エルズナー氏が発案したもので「スイス軍がドイツからアーミーナイフを買っているのはけしからん」と製造を始めた。エルズナー氏はポケットナイフの「ソルジャーナイフ」を発明し、6つのパーツにわずか2つのばねを使ったことで特許を申請して大成功を収めた。

- ライバル会社ウェンガーを2005年に買収して以来、スイスアーミーナイフを製造するのは一社のみに。現在は中国製の「スイスアーミーナイフ」が出回っており、その呼び方に関して米国で訴訟事件も起きている。

- 青山と銀座のビクトリノックスの専門店にはナイフだけでなく、旅行用品、時計やアパレルなどのアウトドア商品も売っている。

- アパレル製品は米国、日本で買えるが本国スイスではまだ購入できない。

- 9.11テロ以来、ナイフの機内持ち込みが禁止になったため、飛行場のデューティーフリーでアーミーナイフが売れなくなり、売り上げが15〜20%まで落ち込んだ。

<色鉛筆やペンメーカーのカランダッシュ>

- カランダッシュ(ロシア語で鉛筆の意)社は1924年ジュネーブで創業された家族企業で当初は画材製品、水溶性色鉛筆や水溶性ワックスパステルなどの開発で有名になった。

- スイスではカランダッシュの色鉛筆を知らずに育った人はいない。

- 日本では芸術家に愛用される色鉛筆部門は「ホールベイン」という取扱店が扱い、「カランダッシュ・ジャパン」の高級ボールペン部門と分けられている。

- カランダッシュのペンは3万円から80万円までの高級ペンがおもで、日本ではモンブラン社のペンの次に最も売れている。

- シャープペンシルの元祖、芯ホルダーを発明したのもカランダッシュだ。

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