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日・スイス社会保障協定、3月1日に発効


小山千早(こやま ちはや)


企業の経済的負担が減り、日本とスイスの間で交流の促進が期待される (Keystone)

企業の経済的負担が減り、日本とスイスの間で交流の促進が期待される

(Keystone)

2012年3月1日、日本とスイスの間で結ばれた社会保障協定が発効する。対象となるのは年金制度と医療保険制度。

これにより企業駐在員などにみられた保険料の二重負担の問題が解消されるほか、両国での保険期間を通算してそれぞれの国における年金の受給権の確立が可能になる。

 同協定締結に関わった在スイス日本国大使館一等書記官の柳迫泰宏(やなぎさこ やすひろ)氏は、「企業、駐在員等の負担が軽減され、日・スイス両国間の人的交流及び経済交流が一層促進されることが期待される」と協定発効を喜ぶ。

 社会保障協定の目的は、国際的な人材交流の活発化に伴う年金等の問題(保険料の二重負担の問題、保険料の掛け捨ての問題)を解決することだ。日本は2000年から、経済的な結びつきの強い国々と同協定を結ぶようになった。スイスは1964年にイタリアや旧ユーゴスラビアと結んだのが最初。スイスと日本の間でも、企業から派遣される駐在員や相手国で就労する人が増えたことから、今回の協定締結・発効に至った。

保険料の二重負担の解消

 日本の企業等からスイスに派遣されてきた社員はこれまで、日本ですでに年金や医療保険に加入しているにもかかわらず、スイスでも現地制度への加入を義務付けられていた。そのため保険料の二重負担が生じていたが、3月1日以降は派遣期間が5年以内と見込まれる場合であればスイスの制度への加入が免除され、日本の制度にのみ加入すればよいことになる。

 ただし、日本の厚生年金保険・健康保険の加入者であることと日本の企業との雇用関係が継続していることが条件だ。自営業者の場合は、国民年金(第1号)・国民健康保険に加入していることが条件であり、スイスにおける自営活動も同様に5年以内と定められている。

 二重加入を避けるための手続きとして、日本から派遣期間が5年以内の企業駐在員などは、まず日本の年金事務所で適用証明書の申請をしなければならない。そして、この証明書の写しをスイスの当局に提出することが必要となる。新しくスイスに派遣される人だけではなく、すでにスイスで就労している人もこの手続きは必要だ。

 派遣期間が5年以内と見込まれていた企業駐在員などは、派遣当初には予想できなかった事情が発生した場合、最高1年まで一時派遣の延長が認められることがあり、1年の延長を超える場合は、その時点でスイスの制度に加入しなければならない。その際には、日本の年金事務所に資格喪失届を提出する必要があり、日本側の社会保障制度の適用が免除されることになる。

スイス老齢・遺族年金保険料の還付制度の変更

 スイス老齢・遺族年金(AHV/AVS)制度では、スイスと社会保障協定を締結していない国の外国人は、スイス国外における年金受給ができないため、スイス老齢・遺族年金保険料を1年以上納付した日本人又はその遺族はスイスから帰国した後、その納めた保険料を還付金として受給していた。

 しかし、日・スイス社会保障協定の発効により、スイス老齢・遺族年金制度上、スイスから帰国した日本人等は保険料の還付を受ける仕組みから、スイスの老齢年金又は遺族年金の受給要件を満たしたときに年金(年金が少額の場合には一時金)として受給する仕組みに移行する。

 期間通算(保険料の掛け捨ての防止)

 今回の協定発効によるもう一つの改善点は、保険料の掛け捨てが無くなることだ。これには「期間通算」という考え方が用いられる。

 日本の制度では、老齢年金を受給するには原則25年(300カ月間)の年金加入期間が必要だ。これまでは、長いスイス生活の間に日本の保険料を収めず、年金加入期間が25年に満たなかった場合は日本の年金の受給資格を得ることができなかった。しかし3月1日からは、スイスの年金加入期間を加えて通算で25年間加入していれば年金を受給できるようになる。

 一方、スイスの老齢年金の受給資格は1年間の加入(保険料納付)期間で得られるため、日本の年金加入期間を足し合わせることはしない。

 年金制度には障害年金も含まれるが、スイスの障害年金は年金加入期間が3年以上と定められている。そのため老齢年金とは異なり、スイスの年金加入期間が1年以上ある場合には、日本の年金加入期間を通算することができる。

 ここで注意すべきことは、それぞれの国の年金を受け取るにしても、給付額はそれぞれの国で納めた年金保険料を元にして計算されるということだ。つまり、この協定による改善点は受給資格を得られやすくするということであり、受給額の計算の対象となるのはあくまでもその国で支払った保険料のみ。また、両国で重複して年金に加入していても、その期間は二重には計算されない。

交渉は順調に

 スイス側を代表して交渉に当たった連邦内務省社会保険局(BSV/OFAS)法務担当のステファニー・コッホ氏は「同協定の締結は経済連携協定交渉の際に取り上げられ、弾みがついた形となった。経済連携協定と並行し、両国の経済的交流を支えるものだ。社会保険料の二重負担が無くなり、スイスの経済界はこの協定発効を非常に歓迎している」と語る。

 また、交渉について「内容的にはほぼ見解が一致しており、時間がかかったのは表現の問題に限られた。全体的にはとても良い雰囲気で交渉が進んだ」と述べる。

 スイスは現在、ボスニア・ヘルツェゴビナやモンテネグロなどと社会保障協定の交渉中だ。また、コッホ氏によると、ほかのヨーロッパ諸国同様、昨年外国人就労者に高額の社会保険料を課すことにした中国との交渉にも臨む予定だ。

スイスの年金を日本で受け取る場合

老齢年金は男性65歳、女性64歳から受給可能。

スイスの年金の受給申請は、日本の年金事務所で行うことが可能。

受給権発生の5~6カ月前から申請可能。

年金は月1回銀行送金で支払われる。

スイスフラン建てで行われ、日本円に換算して振り込まれる。

年金が少額の場合は、一時金で支払われる場合もある。

スイスとの間で社会保障協定を締結・発効した国・地域

イタリア(1964年発効)、旧ユーゴスラビア(1964)、ドイツ(1966)、イギリス(1969)、オーストリア(1969)、ルクセンブルク(1969)、スペイン(1970)、オランダ(1971)、トルコ(1972)、ギリシャ(1974)、フランス(1976)、ベルギー(1977)、ポルトガル(1977)、ノルウェー(1980)、スウェーデン(1980)、アメリカ(1980)、デンマーク(1983)、サン・マリノ(1983)、イスラエル(1985)、フィンランド(1986)、リヒテンシュタイン(1990)、カナダ(1995)、カナダ・ケベック州(1995)、キプロス(1997)、チェコ(1997)、スロベニア(1997)、スロバキア(1997)、チリ(1998)、ハンガリー(1998)、クロアチア(1998)、アイルランド(1999)、マケドニア(2002)、フィリピン(2004)、ブルガリア(2007)、オーストラリア(2008)、インド(2011)、日本(2012)

日本との間で社会保障協定を締結・発効した国

ドイツ(2000年発効)、イギリス(2001)、韓国(2005)、アメリカ(2005)、ベルギー(2007)、フランス(2007)、カナダ(2008)、オーストラリア(2009)、オランダ(2009)、チェコ(2009)、スペイン(2010)、アイルランド(2010)、ブラジル(2012)、スイス(2012)

swissinfo.ch



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