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本に親しむことを忘れないために

ティチーノ州ベリンツォーナにある異文化間図書館の常連客のほとんどは本に魅了されている子どもたち

(bisi)

わたしたちの身の回りにある書籍は、知識、魔法、娯楽、物語と無数のジャンルにあふれ、そしてまた、過去、現在、未来と時空にも限りがない。

スイス国境なき書籍協会 ( Verein Bücher ohne Grenzen Schweiz /VBOGS ) はスイスに住む外国人が本を通して異文化と融和する場を提供している。

読書の価値

 毎年4月23日は、読書の大切さを見直すために「世界・本の日」に制定されている。あらゆる情報伝達技術が生み出されている時代に、あえて読書の記念日を尊重することはいささか時代錯誤のように思える。しかし、世界的に書籍市場が重要な転換期を迎えている今、記念日は読書に対する意識を高め、熟考するきっかけを与えてくれる。それは時代の変化に逆らうことではなく、「新技術の発展を評価しつつ、本の表現形式や価値が損なわれることのないよう、全ての利益を享受すること」だとイリナ・ボコヴァユネスコ事務局長は世界・本の日に語った。

 特にこの記念日は全人類の財産を共有する日でもある。今なお世界で約8億人が文盲だという。しかし、本は寛容と希望を表す最善のメッセージであり、自由で開かれた社会の要となる存在だとボコヴァ事務局長は主張する。

多文化主義を尊重

 国境なき書籍協会は思想の産物、つまり本の重要性を伝えることを義務としている。同協会の創設は1988年10月、保護者や教師の発案によって、ローザンヌ郊外の町レネン ( Renens ) にスイス初の異文化間図書館、 「世界の本 ( Globlivres ) 」 が開設されたことがきっかけとなった。

 レマン湖畔の住民は約2万人。そのうち半数が外国人だ。地域の住民が話す言語の書籍を幅広く取り揃える異文化間図書館を創設するというアイデアは今も拡大しつつある。スイス国内には外国人が母語で読書ができるように外国語の書籍が取り揃えられている図書館が約20あるが、今年、ルガーノ市に新たな図書館が開設された。

 これまでは7年前に開設されたベリンツォーナ にある図書館がスイスイタリア語圏唯一の異文化間図書館だった。同図書館では30カ国語、約4000冊の書籍を閲覧することができる。

 「ベリンツォーナよりもルガーノの方が外国人住民の割合が高いため、異文化間図書館がより必要とされていることが分かり、ルガーノにも図書館を開設するに至った。現在、両図書館では住民が視野を広げ、意見交換ができるような読書プログラムが数多く用意されている」

 とベリンツォーナ図書館の創設者兼責任者、フレディ・コンラッド氏は説明する。 

 異文化間図書館では、外国人が母語で読書し、自国の文化を再発見することができる。一方で、スイス人が他言語や異文化に触れ、未知の世界を探求する機会も得られる。コンラッド氏は、異なる言語を話す人々の文化交流が以前より盛んになるという副次的効果にも恵まれたと明かす。

 「デジタル文化の到来は書籍業界に対する打撃ではなく、補足的な道具だと捉えている」

 とコンラッド氏は書籍は没滅する運命にはないと確信している。そして、今日の子供たちは進んで読書をしないと思い込まないよう勧める。両親や教師が読書の指導を行えば、子どもたちは読書に火のごとき情熱を持つはずだと言う。

ボランティアによる図書館運営

 「現在のところ、最大の難関は政治家の関心を引くことだ」

 とコンラッド氏は語る。協会の計画を保証するためにも、財政状況を改善する必要があるという。

 国境無き書籍協会の運営はほとんどがボランティアによって支えられている。協会の主な収入源は古本販売だが、そのほかの収入源から得られるわずかな資金を集めても、家賃などの固定費を賄うのは到底不可能だ。

 協会はボランティアの人々の熱意や創造性、惜しみない協力で維持されているものの、財政は困難であり、それが組織の運営を不安定にしている。責任者が病欠すると図書館の開館時間が短くなるという事態が起きることもある。

 書籍専門家のコンラッド氏はベリンツォーナの図書館で週に数日責任者として従事し、さらに余暇を文化活動のために費やしている。財政困難な状況に陥ったくらいでは協会の運営を断念することはない。

 本来、教師を職業としているラウラ・ライア氏は余暇の大半を費やし、ルガーノに新設された図書館の一室で幼児のためのプログラムを用意している。ベリンツォーナには幼少グループを対象としたプログラムはなく、新しい試みだとコンラッド氏は言う。

 ベリンツォーナの図書館はユネスコネットワーク図書館協会 ( UNAL) に加盟している。これはただ名誉を与えられているだけでなく、図書館が国際的な文化交流を行っていることを意味する。現在は、ルーマニアの高等学校と書籍を交換するための準備が進められている。

 異文化間図書館はそれぞれ独自性があるが、活気があり、全ての人々に開放されているという点は全図書館に共通している。また、一冊の本が社会や文化といった大きなモザイクの一片の役割を果たしてくれる。図書館は、本を通して人々が出会い、交流する場でもあるのだ。

ユネスコ世界本と著作権の日

1955年、読書、出版部門の促進と著作権の保護を目的として制定される。

スペインのカタロニア地方では、4月23日、セントジョージの祝日に本を買うとバラの花が贈られるという伝統があり、それに倣ってこの記念日が制定された。

4月23日は文豪、ミゲル・デ・セルバンテス、ウィリアム・シェイクスピア、インカ・ガルシラーソ・デ・ラ・ベーカの命日であり、ウラジーミル・ナボコフ、ハルドル・ラクスネスの誕生日でもある。

スイスでは書籍市場の圧力団体「本のロビー ( Buchlobby Schweiz )」が世界・本の日を採用した。これをきっかけに、初めて作家から出版社、書店、図書館に至るまで、書籍部門に関する全ての関係者が提携することになった。

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書籍に関するデータ

スイスには出版社が約500社あり、年間総計約1万冊の新書を出版している。

書籍の言語はスイスの全公用語で揃えられている。

スイスの文化経済部門にとって重要な 書籍・文学市場 ( 印刷産業を除く) の年間売り上げは20億フラン ( 約1877億円 ) 。

スイスの書店は年間総計約4000万冊を販売、約10億フラン( 約939億円 ) の売り上げを計上している。書籍の8割は外国から輸入。

スイス国内では約2500人の作家が年間1500冊の新書を出版している。

図書館は約5000あり、総計約5000万冊の書籍を所蔵している。

近年の調査では、スイスの約4割の成人は読書をしないと報告されている。

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( 独語からの翻訳、白崎泰子 ), swissinfo.ch

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