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若い世代に民主主義を伝えるアニヤ・ウィデン・ゲルパさん

アニヤ・ウィデン・ゲルパさん(45)は、スイスで、革新的な方法で積極的に民主主義を推進する指導者とみなされている人の一人だ。

 ジュネーブ州政府の高官として11年以上にわたり、若い世代の関心を政治に惹きつけ、政治的決定によって彼ら自身にどのような影響があるかを若者たちに見せることを自らの使命としてきた。

 その人柄やこれまでの取り組みについて話を聞こうとジュネーブのウィデン・ゲルパさんを訪ねた。

アニヤ・ウィデン・ゲルパさん

1973年、ヴァレー州生まれ。テュービンゲン(ドイツ)とジュネーブの大学で政治学を学ぶ。行政学修士。

連邦経済省経済管轄局(SECO)のプロジェクトリーダーやコンピューター技術の多国籍企業IBMのコンサルタントを務める。

社会民主党ジュネーブ州支部のメンバーとして様々な機関に従事。

2009年、女性として初めてジュネーブ州の総務局長に就任。13年から18年4月末まで再任した。

 2009年、ウィデン・ゲルパさんは女性として初めてジュネーブ州の総務局長に選出された。

 ヴァレー州東部のドイツ語圏山岳地帯に生まれたウィデン・ゲルパさんは、ある意味、ペーパーワークとミーティングで詰まった日程をこなす典型的な政府高官のイメージとは合致しなかったかもしれない。

 当時36歳だったウィデン・ゲルパさんが夢中になったのは、そのような典型的ワークスタイルではなかった。見下したような態度ではなく、対等な立場で、人々に直接会って話をしたがった。いつも心にあるのは若者や子供たちのことだ。

 ウィデン・ゲルパさんは、政治的決定が若者や子供たちの住む地区、町、州、連邦にどのような影響を及ぼすのかを彼らに見せたいと強く願っていたという。

行動あるのみ

 18~25歳のスイス人の70%は大抵の場合、投票権を行使していないという事実がある。若者が今世の中で何が起こっているかを理解していないからではなく、自分たちに関係があると感じていない、あるいは投票の結果に自分たちが影響を受けるとは考えていないからだ。

 ウィデン・ゲルパさんが行動する必要があると感じたのはまさにこの部分だ。州機関を市民にとってもっと身近な存在にしたかった。庁舎を市民のところへ持っていくことは物理的に不可能だとしても、市民に対して庁舎を開き、州政府や州議会の席を開放することはできたとウィデン・ゲルパさんは話す。

 「3D機関外部リンク(Institutions 3D)」は、小・中学生や高校生が政治制度に関する基礎知識を体験しながら学ぶことのできるプログラムだ。10歳の子供たちが楽しく、しかし真剣に議員になりきるロールプレイングもある。

 子供たちは本物の議場でこのプログラムのために用意された法案について議論する。

 ジュネーブ州はその他、国連の「国際民主主義デー」(9月15日)関連イベント「デモクラシー・ウィーク(Semaine de la démocratie外部リンク)」や10~25歳の若きアーティストを対象にした短編映画とポスターのコンクール「シネ・シヴィック(CinéCivic外部リンク)」というプロジェクトを立ち上げた。「シネ・シヴィック」の実施には近隣5州が協賛している。

 これらのプロジェクトは票集めのためなどではない。有権者としての役割を真剣に考えようと若い世代を励ますメッセージだ。

政治家を志した契機

 ウィデン・ゲルパさんが政治家を志すきっかけとなった出来事は1983年に遡るという。

 12月7日、連邦内閣の選挙に際し、スイス連邦議会で過半数を占めた中道・右派が社会民主党の候補者リリアン・ウフテンハーゲンさんの入閣を阻んだ。スイス初の女性閣僚が誕生するはずだった。

 ウフテンハーゲンさんの代わりに7閣僚で構成される連邦内閣の議席を勝ち取ったのは、同じ政党に属する男性のオットー・シュティッヒさんだった。

市民が中心の政治

 ウィデン・ゲルパさんにとっては、有権者に手段を与え、有権者が十分な情報を得たうえで政策過程の決定をすることができるようにすることがすべてだ。

 ただし、その決定とは、投票することだけを指すのではないという。

 ウィデン・ゲルパさんは、州政府で11年間尽力した今、新たな仕事に挑戦する準備が整ったと力強く話す。

この記事は、スイスインフォの直接民主制に関する特設ページ#DearDemocracyの一部です。ここでは国内外の著者が独自の見解を述べますが、スイスインフォの見解を表しているわけではありません。

(英語からの翻訳&編集・江藤真理)

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