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直接民主制 住民投票に目覚めた台湾、背景にはスイスの支援

台湾で同性婚の合法化を求めて行われたデモ

台湾の民主主義はカラフルだ。同性婚の合法化を求めて行われたデモの様子(2017年10月)

(Sam Yeh/AFP)

台湾では24日、統一地方選挙に加えて10件もの住民投票が行われる。台湾で直接民主制が強化された背景には、地球半周分も離れたスイスの支援があった。 

本稿筆者のブルーノ・カウフマン氏は、スイス連邦外務省が企画した台湾からのスイス視察ツアーに同行した。2019年に台中市で開かれる「現代直接民主制グローバルフォーラム」の主催者の一人でもある

(Zvg)

最後の数メートルが一番きつい。足は鉛のように重く、呼吸はゼイゼイする。しかし尤美女(ユウメイヌ)氏はとうとう山頂に到達した。「まるで故郷のようです」。台湾の立法院(国会)議員は疲れた表情を見せながらも嬉しそうに話した。 

美しい秋晴れの日、尤氏はスイス中央部のリギにいた。「山の女王」と呼ばれる山だ。「山頂から国が一望できるほどの山が台湾にもあるんですよ」と尤氏は熱っぽく語った。 

テレビの生番組を見学

台湾からの視察団がリギを訪れたのは、スイスで前回の国民投票が行われた今年9月23日の午後だった。政治家、官庁代表者、研究者、記者から成るこの一団はリギを登頂する前、チューリヒ中央駅に設置された投票所を訪問。その後は投票用紙の開票作業を見学した。 

そして一団はチューリヒにあるスイス公共放送(SRF)の投票番組のスタジオに赴き、ゲスト参加した。そこで彼らは政治専門家が投票結果を生中継で分析したりコメントしたりする様子を間近で見守った。 

スイス公共放送(SRF)の投票番組のスタジオを訪れた台湾の視察団

スイス公共放送(SRF)の投票番組のスタジオを訪れた台湾の視察団。直接民主制の現場を目の当たりにした(2018年9月23日)

(Bruno Kaufmann)

「スイスから学ぶところは多い」

視察団はその前の3日間で、スイスで現在採用されている民主主義制度の手続きや実例について多くを学んだ。日程にはベルンにある連邦議事堂の訪問が組まれたほか、ルツェルンでは、国民投票や住民投票で賛成または反対キャンペーンを路上や広場で行う活動家たちとの対談も行われた。 

「スイスで見たこと全てに深く感銘を受けました」と語るのは、台湾通信社(CNA)他のサイトへの陳ジェンジェイ編集長だ。「台湾の民主主義はまだ新しく流動的ですが、スイスの民主主義は歴史が長く、学ぶところが非常に多くあります。特に住民投票で負けた側も結果を素直に受け止められる点は大いに参考になるでしょう」 

台湾の参政権強化を支援するスイス

今回の視察はスイス連邦外務省が企画、資金援助をした。「民主主義の促進はスイスの憲法で委託されています」と、この視察に同行した台北のスイス代表機関、スイス産業貿易事務所のロルフ・フライ代表は話す。「アジアでこれほど直接参政権が発展しているのは台湾だけです」

知識を伝える

台湾で直接参政権が強化された背景にはスイスとの関わりがある。立法院で2003年に初の「公民投票法」が可決されてからというもの、スイスと台湾の間で活発な意見交換が行われた。

Karte mit Taiwan, China und Hong Kong
(swissinfo.ch)

スイスが持つ民主主義に関する豊富な知識が台湾へと伝わった結果、台湾では住民投票の実施基準が緩和された。こうして03年以降、台湾では有権者1900万人の1.5%に相当する28万人の署名を集めれば住民投票が請求できるようになった。

ちなみにスイスでは提案を国民投票にかけるには有権者の約2%に当たる10万人の署名が必要だ。

0件から一気に10件へ

そして台湾の市民は住民投票をスムーズに実現できている。ここ数カ月ですでに10件もの有効な署名簿が提出されているのだ。

こうして24日に実施される住民投票では同性婚、原子力、福島原発事故に伴う食品の輸入規制の継続についての是非が問われることになった。また、東京五輪に「中華台北」ではなく「台湾」の名義で参加することへの賛否も問われる。

政治議論の場はオフィス、タクシー、路上

舞台を台北に移そう。前出の尤氏は先日、立法院の公聴会に召喚された。台湾とスイスにおける直接民主制の違いについて話すためだ。また視察団の他のメンバーがスイスで受けた印象について報告したり、発議者の代表者が各々のキャンペーンに関する感想を伝えたりした。

台湾とスイスの直接民主制で違う点は、台湾では政治と民主主義は食卓よりも路上、職場、バスやタクシーの中で語られることが多いところだ。そして投票日は1日しかなく、投票所に赴かなければ投票ができない。郵便投票は行われていないためだ。

さらに開票時は作業員が投票用紙を1枚ずつ高く掲げてから、用紙に書かれた賛否が記録される。選挙管理人が様々な角度から集計作業を直接監視できるようにするためだ。

スイス人の冷静さを学べるか

24日の住民投票に向けた論戦はスイスよりも熱い。いたるところで住民投票について話し、意見を戦わせている。「いくらか落ち着いて投票に臨むという心構えはスイスから必ず学べることです」とスイスへの視察に参加したNGO「台湾開放民主守望協会他のサイトへ」の廖達琪(リャオダーチー)氏は言う。「しかしそれには時間がかかり、投票回数を多くこなす必要もあるでしょう」

展示と国際会議

スイスと台湾は来年、直接民主制の可能性や限界について対話をさらに進める方向だ。その一環として連邦外務省主催の展示「Modern Direct Democracy(現代の直接民主制)他のサイトへ」が台湾各地で開催予定だ。

さらに来年の秋には、多数のスイスの諸機関が共同主催する「現代直接民主制グローバルフォーラム他のサイトへ」が台湾第二の都市、台中市で開かれる。2009年のソウル以降、アジアでは2回目の開催となる。

世界で類を見ないほど直接参政権を強化した台湾は、強権政治への回帰が近年目立つ周辺諸国に新たな可能性を示している。そして世界の流れに逆らう台湾の挑戦はまだ始まったばかりだ。

中国の圧力

民主国家、台湾の歴史は比較的浅い。1949年、国民党(中華民国軍)は国共内戦後、台湾へ退避した。その後は軍事独裁体制が敷かれたが、この体制は一党制の廃止と共に87年に廃止された。

96年に初の普通選挙が行われ、2000年には初の民主的な政権交代が実現した。日本や中国にルーツを持つ人たちや16の原住民族が暮らす。

台湾が民主化への道を進む一方、国共内戦の勝者だった国民党はいまだ強い影響力を持つ。1971年に台湾に代わって国連の中国代表となった北京の中華人民共和国政府は、台湾を「反逆的な省」と呼び、必要であれば武力行使をもって支配する可能性もあるとしている。

スイスも含めた国際社会は現在、「一つの中国」政策を尊重している。

台湾の急速な民主化は中国政府にとって好ましくないようだ。今回の選挙戦や住民投票キャンペーンでは、中国側がソーシャルメディアのフェイクアカウントを使って政治介入しているとして、台湾当局が対応措置を取らなければならないことが再三あった。

その一方、台湾は各種の民主主義ランキングで世界トップに入っており、中国の圧力に対抗する台湾を国際社会が後押ししているとみる。

台湾とスイスの関係はというと、世界の国内総生産(GDP)ランキングでは台湾は第22位、スイスは第20位と順位が似ているなどの共通点がある。スイスにとって台湾はアジアで7番目に重要な輸出市場だ。スイス企業は台湾で約1万8千人を雇用している。

インフォボックス終わり


(独語からの翻訳・鹿島田芙美)

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