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福島第一原発事故、避難指示圏を半径40キロに拡張を!


里信邦子 ( さとのぶ くにこ)


福島県会津若松市の避難所に4月3日到着した、福島第一原発から20キロ圏内に位置する大熊町の住民たち。彼らは「住んでいた住居から家財道具さえ、放射能のせいで取り出せないのではないか」とヴィルディ 氏は言う (Keystone)

福島県会津若松市の避難所に4月3日到着した、福島第一原発から20キロ圏内に位置する大熊町の住民たち。彼らは「住んでいた住居から家財道具さえ、放射能のせいで取り出せないのではないか」とヴィルディ 氏は言う

(Keystone)

「原発に絶対の安全は存在しない」と、スイス政府の原子力安全委員会長を5年間務めたジュネーブ大学研究所長ヴァルター・ヴィルディ教授は主張する。

また、福島第一原発事故の経過を研究した上で、半径40キロ圏内でも高い放射能が場所によって確認される現在、「なぜ日本政府は半径30キロ圏内を、責任を回避する形の自主避難要請にしたのか理解に苦しむ。半径40キロを避難指示圏にすべきだ」と話す。

swissinfo.ch : 福島原発事故で、原発の存在そのものが問われています。スイスの原子力安全委員会長の経験からどう思われますか?

ヴィルディ : 原発は廃止すべきだと思う。一つのエネルギー源として極端に高額だからだ。建設費そのもの、安全性の確保、監視、特にテロの攻撃回避の監視などに、巨額の資金がかかる。

また、原発に「絶対の安全」は存在しない。今回スイスでもなぜこんなに騒いだのかというと、この安全性が問題になったからだ。福島で冷却装置が止まったとき、非常用ディーゼル発電も作動しなかった。実はスイスでも安全性のテストを行うと、しばしばこのディーゼル発電が作動しない。作動したとしても直後に停止したりと不安定。つまりこの非常用発電が原発の最大の弱点で、そのため原発に信頼が置けない。

2006年にスウェーデンで炉心の溶融をギリギリ免れた事故があった。事故で通常の冷却装置が止まったとき、4機の非常用ディーゼル発電のうち1機だけが作動した。もう1機は作動したが直ぐに止まり、作業員が20分後にたまたま原因を突き止め、2機が作動したお陰で危機は免れた。

使用済み燃料棒のプールの水循環用に非常用の発電機が日本にはなかったが、それはスイスでも同様だ。こうしたことから、原発には絶対の安全はないといえる。

それでも原発を認めるということは、今の日本のように、自分の国の一部を失う、つまりその地域の人が荒廃した土地を後にして再び故郷に戻れないようなリスクを受け入れるということだ。

swissinfo.ch : 今後どの地域が放射能で汚染されるか、またそうした地域に人は住めなくなるのでしょうか?

ヴィルディ : 今後放射能濃度が高くなる地域は、風と雨に大いに影響される。現在、汚染地域は、福島第一原発から内陸に向かって水平に細長く広がり、さらに北西と南西に広がる傾向を見せている。では東京はどうかというと、現在の状況からは何とも言えない。

わたしの考えでは現在、半径40キロ圏内が、場所によるばらつきはあるが汚染されている。今後この土地に再び住めるかどうかだが、地表から深さ20~40 センチメートルまでの土を取り除き、これを放射能が出ないような形でどこかの場所に保存するという計画も検討中だと聞いた。しかし、それはとてつもない量の土で難しいだろう。風景も完全に変わるだろう。

チェルノブイリでは、およそ半径30~40キロ圏の汚染地域から人を完全に転居させた。25年たった現在、政府当局は数百人の高齢者にのみ再入居を許可した。というのも、放射能を今後何年間か蓄積してがんになるとしても高齢者にとっては ( 寿命と ) 同じだからだ。

こうしたゾーンをはっきりと確定するには、とにかく土地の放射能濃度を広範囲に、詳細かつ正確に測定することが望まれる。

ところで、つい先日半径40キロ圏内のある地点で高い濃度の放射能が観測された。正確な各地の数値が関係当局から出ないので、グリーンピースがこれを行ったのだが、( 日本の当局が ) 原発を持ちながらこうした測定の体制を整えていないことにはただ唖然とした。技術的には非常に単純なことだ。これは政治の姿勢の問題というか、文化の違いというか、われわれには信じられない。

swissinfo.ch : 今後福島原発はどうなっていくのか、あなたの意見を聞かせて下さい。

ヴィルディ : 恐らく今後数カ月間は1~3号機の炉心の冷却を続ける必要がある。その後、炉心が少し低温になったところで、コンクリートで固めるか、砂で固めるか、とにかく放射能漏出を遮断することになるだろう。

しかし、それまでに炉心の溶融した燃料棒の表面は高温のため水が直ちに水蒸気となり、高濃度の放射能を含んだまま外に排出される。大量の汚染水もだが、大気中に排出され続けるこの高濃度の放射能が問題だ。

半径20キロ圏内の住民は避難したが、40キロの地域でも高い濃度が観測されたことから今後20キロから40キロ圏内の人々のがんにかかる可能性は高まっていく。ヨードやセシウムだけに限らず、重いために遠くまで飛散はしないが非常に危険なプルトニウムでさえ、この圏内には存在しうる。第3号機にプルトニウム・ウラン混合酸化物燃料MOXが使用されているからだ。

こうした状況でなぜ日本政府は半径30キロ圏内を 責任を回避する形での自主避難要請にしたのか理解に苦しむ。30キロではなく、40キロ圏内をただちに避難指示圏にすべきだ。

予測できるのは、補償金の問題だ。今回福島原発事故の損害額の見積もりは4兆フラン( 約366兆円 ) 。同じことがスイスで起これば、電力会社が避難した人などへの補償金として保険から1.8億フラン( 約165億円 ) を払い、差額は政府が受け持つ。日本では、恐らく東京電力は支払えないだろうから政府の負担になるのだろうが、それが巨額なため自主避難要請にしたのではないかと推測する。避難しようとしまいとそれは個人の責任だということだ。

もう一度言うが、こうした事故での補償を含め、原発はとにかく巨額な支出になる。

しかし、原発はいつも安全だと宣伝されてきた。スリーマイル島でも、チェルノブイリでもこれらの事故は例外的に起こったのだと。特にチェルノブイリはロシアで、しかも古い型だったから起こったのだと宣伝されてきた。

swissinfo.ch : 福島原発事故も津波のせいだというのではないでしょうか?

ヴィルディ : 今回は津波のせいだけではない。地震、津波の想定値が低かった。設備の安全性のレベルが低かった。直ぐに冷却しなかった。情報が直ぐに伝わらなかったなど、明らかにこうしたさまざまな要素の総合で起きたのであって、津波だけだとは言えない。

もし理由が一つならそれを修正すればすむ。しかし、今回はすべてが悪かった。ではどうするのかということだ。

swissinfo.ch : 汚染水が海に流れ込んでいますが、今後の影響は?

ヴィルディ : 放射能の、特にヨード131とセシウム137が近海の魚貝類の中に蓄積されていく。中でも重いセシウムがたまっていく。従って、恐らく福島第一原発近海では今後4、50年は漁業ができないだろう。

近辺のアジアの国や太平洋の島などが、海流の関係で汚染される可能性があるかもしれないが、汚染がアメリカまで達するとは考えられない。海は巨大で放射能が拡散されるからだ。

結論として、今後数週間は高濃度の放射能が排出されるだろう。従って信頼できる測定システムを使い、正しい情報を半径40キロ圏やそれ以上の放射能濃度の高い地域の人々に知らせ、避難させることが緊急課題だ。その上で長期的な視点に立った解決策を探ることが重要だと思う。

ヴァルター・ヴィルディ ( Walter Wildi ) 氏略歴

1969年、連邦工科大学チューリヒ校 ( ETHZ/EPFZ ) で自然科学の博士号取得後、地質学の専門家として核燃料廃棄物の貯蔵計画に加わる。

1970~1994年、アルプス地域などの地質の沈殿作用研究に従事。

1995年から現在まで、ジュネーブ大学の地質学教授として「フォレル研究所 ( Institut F.A.Forel ) 」の研究所長を務める。

1997~2007年、上記の職務の傍ら、スイス政府の原子力安全委員会のメンバーとなり、2002~2007年の5年間、同委員会の会長を務めた。

政府の原子力安全委員会は、原子力産業関係者以外の専門家による安全監視機関。1997年から2007年の10年間、監視が行われた。

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