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移民危機 国際機関の取り組み スイス、リビアのアフリカ系難民受け入れ開始

収容所の難民たち

危険を冒してリビアまでやってきたものの、収容所送りになる難民や移民が多い

(Keystone)

スイスは今月初め、北アフリカ・リビアから初めて難民を受け入れた。女性や未成年者など社会的に特に弱い立場にある人々が中心で、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の要請に応じた形だ。リビアにおけるアフリカ系移民・難民の危機に対する国際機関の取り組みを取材した。

 昨年末、米CNNがリビアで犯罪組織に拘束されたアフリカ系移民が奴隷として売買されている様子を報道し、世界中に衝撃が走った。この報道を機に、欧州連合(EU)や国際移住機関(IOM)はリビアから移民を避難させる措置に出た。IOM西・中央アフリカ担当広報官のフロランス・キム氏は「EUとアフリカ連合(AU)は、2万人もの移民をリビアの収容所に放置することなどできないと決議した」と話す。

 また、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)もリビアの収容所から何千人もの人々を避難させる緊急措置を取っている。スイスは昨年12月、その受け入れ先として名乗りを上げ、社会的に特に弱い立場にある難民最大80人の引き受けを決めた。スイスのシモネッタ・ソマルーガ司法相は、この決定は「人道上の緊急措置」であり、リビアの壊滅的な状況に照らして正当だと説明した。

 連邦移民事務局(SEM)は、受け入れ難民の第1弾として40人が4日スイスに飛行機で到着したと発表した。大人が34人、子供が4人、赤ちゃんが2人だ。その大半は、子連れや保護者のいない未成年者など「社会的弱者」と分類された女性たちだ。まずニジェールで保護され、その後スイスに移送された。

 スイスの他、ヨーロッパの数カ国がUNHCRの計画の一環として難民の受け入れに合意している。UNHCR地中海難民問題担当特使のヴァンサン・コシュテル氏によると、これまでに1300人以上がリビアから避難し、第三国定住プログラムの下、そのうち312人はイタリアに、数人はルーマニアに行き、その他の人々はニジェールに残った。

拷問と虐待

 産油国リビアはアフリカ大陸の中では比較的豊かな国で移民の雇用機会も比較的多かった。しかし、2011年のカダフィ政権崩壊後は内戦状態が続き国境警備が手薄になったことに加えて、シリア難民の急増など国外の要因もあり、ここ数年の間に、何十万人もの難民・移民が危険を冒してアフリカ諸国からリビアへ集まった。中には、リビアに定住するつもりで来た人もいるが、ヨーロッパへの移住を希望する人が多い。

 昨年12月に公表された国際人権NGO(非政府組織)アムネスティ・インターナショナルの報告書は、「過去3年間に約50万人が地中海を渡ろうとし、1万人以上がその途中で亡くなった」と指摘した。「さらに50万人かそれ以上が現在リビアで拘束されている」とも警告した。

 同報告書によると、リビアに拘束されている難民・移民のうち昨年末時点で2万人が、リビア内務省の不法移民対処局(DCIM)が移民の流入に対処すべく設置した収容所にいた。さらに、数千人以上が民兵や犯罪組織の管理下にある非正規の収容所に入れられていたとみられる。いずれの収容所でも、難民・移民は「非人間的な環境で違法に拘束され、拷問や性暴力を含むその他残酷で非人間的で、人間性を貶める扱いや処罰を受けている」。リビアと協力して密入国を取り締まるEU諸国の政府は、人権侵害を助長しかねないとアムネスティは非難した。

 IOMによれば、昨年末にEUとの合同作戦が規模を拡大してから、1万7千人がリビアの収容所を出た。そのうち、1万1千人は自分の意志で出身国に帰った。DCIMの収容所に残っているのは約3500人とみられる。IOMのキム氏は、民兵に捕らわれている人々がもっといることは間違いないが、拘束されている場所に辿り着くことができないと話す。

難民か移民か

 リビアの収容所で重要となるのは、拘束されている人々が経済的移民とみなされるか、難民とみなされるかだ。難民審査はUNHCRが行い、自発的な本国への送還プログラムはIOMが担っている。

 UNHCRの難民の認定基準についてたずねたところ、コシュテル特使は「拷問の被害者、健康上の問題を抱えた人、独身女性、保護者のいない未成年、障害のある人」を含むと答えた。一方、「リビアの現状では、ほぼ全員が社会的弱者だと言わざるを得ず、社会的に弱い立場にあるかどうかだけが基準ではない」とも指摘。「彼らが難民なのか移民なのかを見極めなくてはならない。難民ならば強制的に出身国に返してはならない。迫害や危険にさらされることになるからだ」と強調する。

 IOMによる本国への帰還プログラムで、本当に当事者の自発的な意思に基づいているかどのように確認するのかをたずねると、キム氏は移民が「選択肢があると知っていること、移民になんらの心理的なプレッシャーもないこと」をIOMは保証していると答えた。「IOMは(本国帰還が)彼らの命を救う唯一の手段であることも理解している」とも語った。

 出身国に帰還した人々の約80%はリビアの収容所に拘束されていたとキム氏は話す。その大半はナイジェリア、ガンビア、ギニア、コートジボワールといった西アフリカ諸国の出身者だ。男女比は出身国によって異なるという。「例えば、コートジボワール出身者の70~80%が18~30歳の男性で、そのほとんどは読み書きができる。一方、ナイジェリア出身者は他の国の出身者に比べて女性の割合が非常に高く、おそらくその80~90%が人身売買の被害者だ」とキム氏はスイスインフォに語った。保護者のいない未成年者も多いという。

 自発的な帰還プログラムの革新的な点は、IOMが移民個人に対してだけではなく、出身地のコミュニティーとも協力して、帰還者の社会復帰を支援することだ。キム氏はいつも帰還者にこう話す。「あなたは帰還者だ。社会復帰にあたって、我々はあなたを一人にはしない。他の人々と協力してあなたを出身地のコミュニティーに戻す」それは帰還者と出身地のコミュニティーとの間に緊張を生まないためでもあるという。

さらなる難民受け入れの要請

 SEMの報道官はスイスインフォに、連邦政府は各州と難民の受け入れについて交渉中だと話した。これまでのスイスの慣行では、難民が連邦政府の保護を受けるのは数日のみで、すぐに予め合意された配分に従って定住先の州に移送されるという。

 スイスは、ニジェールの一時保護施設からさらに難民を受け入れる見込みだ。すでにSEMは代表団を派遣し独自の審査を実施した。一方、UNHCRはさらなる難民の受け入れ国を探している。コシュテル特使はスイスインフォに「我々はスイスにもその他の欧州諸国にも欧州以外の国々にも、より多くの難民を受け入れるよう要請している。我々はニジェールから少しでも多くの人々を確実に避難させなければならないからだ」と語った。


(英語からの翻訳・江藤真理)

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