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第42回ローザンヌ国際バレエコンクール


バレエと健康の密接な関係


ガニア・アダモ


準備運動を行う女子ダンサー (Reuters)

準備運動を行う女子ダンサー

(Reuters)

26日から開催される第42回ローザンヌ国際バレエコンクール。その期間中、若い生徒たちの健康状態には細心の注意が払われる。過度な疲労やけが、体調不良はないか、適切な食事をとっているかなど、コンクールの専属医カルロ・バグッチ氏が注意深く見守っている。

世界最高のバレエコンクールと評される「ローザンヌ国際バレエコンクール」は1973年に創設された。毎年、世界中から若い生徒たちが集まる。彼らにとってこのコンクールは、国際的なバレエダンサーとして輝かしいキャリアを築くための登竜門。この最高レベルのコンクールに出場するには、いくつもの厳しい条件をクリアしなければならない。心身ともに健康であることもその条件の一つだ。15年ほど前からコンクールの専属医を務めるバグッチ氏に話を聞いた。

swissinfo.ch : 毎年、出場者全員の健康調査票に目を通されていますが、ダンサーの身体的故障の中で最も多いのは何ですか。

カルロ・バグッチ : 足首、ひざ、腰などの関節部や背骨に現れる、いわゆる「過剰な負荷が引き起こす故障」が一番多い。踊る際に、技術的に間違った動きをしたり、ダンサーの体型に合わないトレーニングを集中的に繰り返したりしたことが原因で身体が疲弊し、生じることもある。要するに、動きによって関節が過度に圧迫され微小な損傷が生じ、故障を引き起こす。医療面から見て、要求されるコリオグラフィー(振り付け)を演じるのに必要な身体的適性のない生徒を見つけるのが私の仕事だ。

第42回ローザンヌ国際バレエコンクール

コンクールはローザンヌで1973年、ブランシュバイグ夫妻によって創設された。15~18歳の若いダンサーを対象にした世界最高の国際コンクールで、若いダンサーの登竜門とも言われる。

目的は伸びる才能を見出し、その成長を助けることにある。

今年は、2014年1月26日から2月1日まで開催される。

昨年11月のビデオ審査で、世界35カ国から応募した295人(女子224人、男子71人)中、71人が選ばれた。

日本からは、最多の21人(女子16人、男子5人)がコンクールに出場する。

昨年と同様、二つの年齢グループ(15、16歳と17、18歳)に分かれて5日間の練習を行う。

この練習の点数と1月31日に行われる準決勝の点数の合計で2月1日の決勝進出者が約20人選ばれる。

2月1日の決勝では、この20人の中から7~8人の入賞者が選ばれる。入賞者は同額の奨学金を得て、希望するダンススクールかカンパニーで1年間研修する。

swissinfo.ch : 体調を整えるには適切な食事が不可欠だと考えられますが、ダンサーにとって理想的な食事法はありますか?

バグッチ : 周知の通り、このコンクールには世界中から生徒が集まってくる。そのため、食事の内容も実にさまざま。例えばオーストラリア人ダンサーは、競争相手となる韓国人やブラジル人ダンサーと同じ食事を取らないのは明らかで、皆に共通する理想的な食事法というものはない。各個人の理想の食事は、それぞれの文化的習慣に応じてできあがるもの。ただ、ダンサーの食事管理で忘れてはならない点は、食事が激しいトレーニングで消費したエネルギーを補給するためのものだということだ。

もちろん、全てのダンサーに必要な基本的栄養素はある。炭水化物とたんぱく質、脂質だ。これはハイレベルのスポーツ選手全てに言えることだ。バレエといっても他のスポーツと同じで、食事は個人の消費エネルギーに見合っていなければならない。2人のダンサーが同じプログラムを踊っても、その消費エネルギー量は同じではないからだ。

swissinfo.ch : 個人の文化的な違いについて話されましたが、それでは、生徒の出身地に応じて、より重要視しなければならない栄養素はありますか。

バグッチ : 例えば、アジア人は主にコメから、南アメリカ出身者はトウモロコシから炭水化物を摂取する。ここで異なるのは栄養素ではなくどの食品から摂取するかだ。また、食事は習慣にのみ左右されるのではなく、個人の身体的な耐性にもよる。乳製品を受け付けないダンサーは、カルシウムを補給するために何か別の食品をとらなければならない。だから一つの食事法に限定することはできない。

swissinfo.ch : ダンサーの出身地によって特有の疾患や故障のリスクはありますか?

バグッチ : 私の知る限りはない。だが、意欲に関しては違いが見られる。決勝まで行きたいという意欲は、生徒の社会経済的地位にも関係している。恵まれた環境にあったり、バレエに理解のある両親に見守られたりしてきた生徒は、一人で努力を重ねてきた生徒に比べるとプレッシャーが少ない。その分、バレエダンサーとしての長いキャリアを手に入れるチャンスも大きい。このコンクールの目的は若いダンサーの可能性を見極め、将来の長期的な成功に導くことだということを忘れてはならない。

swissinfo.ch : 身体的な限界を無視してトレーニングを重ねるために、男性ダンサーは女性ダンサーよりもけがが多いというのは本当ですか?

バグッチ : それは間違いだ。男性に多いけがはあるかもしれないが。旧ソ連出身のヌレエフは、技術面で男性ダンサーが女性とは異なった表現の仕方をすることを証明した。男性には、高いジャンプなどの女性には求められない運動能力が要求される。そのため、女性ダンサーには少ない、捻挫などのけがをする確率も高くなる。

swissinfo.ch : 一方で女性ダンサーは無理なダイエットによる無月経や摂食障害などの問題を抱えています。

バグッチ : そうとも言える。だが、それはホルモンに関することで、(けがとは)別の問題だ。男性の場合、過度の肉体疲労でも男性ホルモンのテストステロンの分泌が乱れることはない。だが、女性は過度に疲れたりストレスを感じたりすると、女性ホルモンのエストロゲンの分泌が減る可能性がある。その結果、月経が止まったり骨密度が下がったりする。

それから、摂食障害は体重増加への極端な恐怖に起因する精神疾患だ。バレエダンサーは拒食症だと考えるような風潮があるが、それは間違っている。確かに、食事に過度に気をつけたり、極端な摂食行動をとったりする女性ダンサーもいる。だがそれは異常行動であり、医学上「EDNOS(特定不能の摂食障害)」とよばれる、危険なものだ。

swissinfo.ch : ハイレベルのスポーツ選手が短期間で好成績を上げるためにドーピングに頼るという問題がありますが、バレエコンクールにおいても存在しますか?

バグッチ : 私の知る限りはない。バレエや他の芸術的活動において「ドーピング」という言葉が使えるか定かではない。問題はむしろ、「興奮剤を使って芸術的パフォーマンスの向上が図れるか」。私の答えは「ノー」だ。この点においてスポーツとバレエに違いがあると言える。スポーツでは時間や距離などが測定されるが、バレエでは感情表現を要求される。感情表現をするのに薬物など必要ない。

swissinfo.ch : これまでにこのコンクールの専属医としてとらなければならなかった最も厳しい決断は何でしたか?

バグッチ : 厳しい決断を何回かおこなった。例えば、生徒にコンクール出場を断念するように言ったり、コンクール期間中に体調の悪くなった生徒に棄権を勧めたりしなければならなかった。それは毎回、精神的にとてもつらいものだった


(仏語からの翻訳 由比かおり), swissinfo.ch



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