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第44回ローザンヌ国際バレエコンクール2016


ローザンヌバレエ、「ローザンヌでの経験は、将来絶対にダンス人生を支えてくれる」




2008年から8年間、ボランティアでローザンヌバレエのコーチを務めるパトリック・アルマンさん (Carlo Pisani)

2008年から8年間、ボランティアでローザンヌバレエのコーチを務めるパトリック・アルマンさん

(Carlo Pisani)

ローザンヌバレエに行くと必ずこの人がいて、主催側から男子のクラシックの指導を完全に任されているコーチがいる。それがパトリック・アルマンさんだ。ここ8年、日本から参加した男子は全員彼のお世話になった。2年前に入賞した二山治雄さんも、昨年入賞した伊藤充さんもだ。ローザンヌバレエについて、またクラシックのダンサーになる態度などについて聞いた。

 「80年にローザンヌで優勝したから私の今がある。だからお返しをしたい。特に創設者フィリップ・ブランシュバイグ氏には恩がある」と、2008年からボランティアでクラシックのコーチを務めるアルマンさん。

 若いダンサーたちの育成に人生を捧げたブランシュバイグ夫妻の意志をついで行くには、このローザンヌの「自分を成長させていく場」という意味を再確認していくことだと話す。

swissinfo.ch: コンテンポラリーと違い、ある意味、参加者は自国でクラシックをかなりやってここに来ます。ここでは何を学ぶと言えるのでしょうか?

パトリック・アルマン: もちろん、各国のバレエ学校の先生がクラシックはきちんと教えている。僕もそうした教師の1人だ。しかし、僕は僕のスタイルを教えている。ローザンヌがユニークなのは、(彼らが知らない)僕のスタイルを吸収するために、「頭を働かせて」直ちに理解させようとする点だ。ここに来ているダンサーは、何時間も同じ練習をして鍛えられてきたダンサーたち。それぞれの学校の動きが深く身体の中に入っている。そこで、僕が違う動き方を教えると、戸惑い、自分を見失う。

そのとき、いかに頭を切りかえ新しいスタイルに対応できるかが、問われる。ここの1週間は、柔軟性と吸収力を養う場所でもある。違う教師、違うテクニック、それにコンクールもあるという、こうしたストレスにどう耐えていくかが試される場でもある。

実際、ここのストレスに耐えられなくて、「これは自分が進む世界ではない」とダンスを諦めたダンサーも多く知っている。反対に、ここにきて、これこそ自分の道だと目覚めてぐんと成長し、その後もキャリアを伸ばしていくダンサーもいる。本当に試練の場だ。

swissinfo.ch: 先ほど日本人の男子が、テクニックの細かい点、手の伸ばし方とか、足の入れ方を実際に目の前で教えてくれるので、多くのことを学べたと言っていました。

アルマン: ああ、それはよかった。僕はダンスが大好きで、教えるのが大好き。だから、若い子が直ちに吸収してくれる姿を見ると、本当にうれしい。彼らの成長を助けたいと心から思う。

swissinfo.ch: ところで、クラシックの美しさとは?結局何を表現したときに美しいのでしょうか?

アルマン: 自分を表現するときだ。音楽やバリエーションや役を通じて、自分らしい表現を見せることだ。(体操と違うのは)ダンサーにとってジャンプするといったテクニックは単なる表現のための「道具」に過ぎないということだ。

自分を表現すると言ったが、特にコンテンポラリーの抽象的な動きでは、ダンサーの性格や個性が直接に出てくるし、クラシックでは、テクニックを道具として使って「話」を語っていく中で自分らしさが出てくる。ダンスは(オペラとは違い)言葉を使えないので、身体で話を語る。「パ(ステップ)」は表現のための、どのような色を付けていくかという際の、道具になる。 

swissinfo.ch: 8年間コーチを務められて、男子のクラシックのレベルは伸びていると感じますか?

アルマン: うーん。伸びていると感じることもあるが、「年によって違う」と言う方が正確だろう。ワインのようなもので、その年によっていい年と悪い年がある(笑)。

でも、確かなことは、毎年1週間で驚くほど全員が成長することだ。

swissinfo.ch: インターネットの時代なので、生徒たちは色々な動きをネットでも習得し、昔に比べてレベルが高くなっているのではないかと思いましたが。

アルマン: 僕は反対にダンスに対する知識は、今のほうが劣っていると思う。と言うのも、インターネットの時代では、今の動きだけを知って、以前にあったとても大切な動きを知らないからだ。

でもダンスは、さっと(動きの)知識を詰め込むという風にはいかない。ダンスの習得には時間がかかる。ネットは、プロモーションのために、きれいなダンスの写真だけを見せる。では実際に踊れるかというとそうではない。

それに、インターネットのせいで、ダンスや劇を見に行かなくなっている。PCの前に座って、それだけをやっている。

ダンスは生の芸術だ。目や身体で感じ、会場の雰囲気にのめり込む必要がある。そのためには、出かける必要がある。

swissinfo.ch: 日本では、若いダンサーたちが学校の後に4時間も5時間も練習しているとよく聞きます。それをどう思いますか?

アルマン: そんなことをしても、意味がない。そんなことを続けていたらバーンアウトしてしまう。夜の11時までダンスの練習をさせるなんてばかげている。4年もすればやり過ぎで、もう何もしたくなくなるだろう。

もちろん、本人が夜遅くまでやりたいというのであれば、それは別だ。本人が向上したいからというのであれば、頭も身体もそのために準備ができているので長時間の練習がたまにはあってもいい。だが、教師が強制することはいけない。人生にはバランスが大切だ。

バランスとは、ダンスだけではなく、他のことをやることも意味している。人生の他のことも発見しなくては。ダンスとは表現なのだから、人生体験がなければ、表現ができない。16歳でも17歳でも、練習場から出て演劇を見に行ったり、美術館に行ったり、読書したり、いろいろなことを吸収して、表現力を高めなくては。

と言うのも、テクニックだけに頼っていたら行き詰まる。自分より高く飛べたり、ピルエット(つま先を軸として回転する技術)がもっとうまくできたりする人は次々と現れてくる。そこで生き抜くには、ダンサーの人格や舞台での表現力が必要になってくる。そこで、もし人生の経験がなかったら、何を表現しようというのか…。

もちろん、毎日の練習は大切だ。ダンスというのは、ほんのわずかな時間に最大限の力を出す芸術。特にクラシックの踊りは、20分間ノンストップで踊ることもある。だからスタミナもいる。だが、4時間も5時間も同じ練習を続ける必要はない。

swissinfo.ch 最後に一言、ローザンヌに臨む態度について助言をください。

アルマン: ここは、コスチュームを着て、踊って終わる場ではない。1週間、新しい振りや新しい仲間やスタッフに出会い、出会いと発見と仕事の場だ。もちろん、勝つに越したことはないが、勝たなくても、多くの学校やカンパニーからディレクターなどが来て見ている。学校に来るようにと招待も受ける。

だから、特にアジアの国、日本や韓国の若いダンサーには、自分たちの存在を知ってもらうまたとない機会。素晴らしいチャンスだ。

だからこそ、オープンな態度で臨むことだ。1週間、目と耳を全開にして、全てのことを吸収するようにすることだ。そうすればこの1週間の経験は、将来絶対にダンサーとしての人生を支えてくれる。

swissinfo.ch

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