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統計で分析


若者の失業 解決策は大学進学だけにあらず





 (Keystone)
(Keystone)

 大学教育(高等教育)がエリート層のものだった時代はとうに過ぎ去り、今や世界的な大衆市場となった。大学教育を受けた成人の数は、経済協力開発機構(OECD)諸国では2000年から11年にかけて1割以上増えた。

 教育、雇用、収入。この三つが密接にかかわっているとの前提で、各国政府は近年、政策を進めてきた。市民が大学教育を受けられる機会を増やそうとするため、大学への資金援助を行ったり、欧州連合(EU)はボローニャ制度を設立し、加盟国間で学位制度の統一化を図ったりしている。

 このような政策には切実な理由がある。失業率は11年、OECD加盟国平均で大卒の4.8%、最終学歴が中学(前期中等教育)あるいは高校(後期中等教育)の人では12.6%に及んだからだ。収入にいたっては、低学歴と高学歴の人の間では平均75%の開きがあった(OECD統計2008年)。

限界はあるのか

 つまり、教育レベルが上がれば、個人の収入は増え、結果的に国の財政にもプラスとなるというのが一般的な考えだ。だが、高学歴の若者が増えすぎれば、彼らのスキルと労働市場との間にミスマッチが起こる可能性が出てくる。そうなると、大卒者は仕事が見つけづらくなり、大卒の資格が必要のない仕事につくことになるかもしれない。

 国際労働機関(ILO)によると、仕事で求められている資格よりも高い資格を持つ「過剰資格」の人の割合は10年、先進国平均では10.1%で、08年から1.6ポイント上昇した。さらに、大学教育の需要増加を背景に、学費の負担が公的負担から個人負担へと移行しつつあり、学生が財政難に陥りやすくなっている。

 特に、ヨーロッパでは08年の金融危機以降、大卒者の数が増加している一方、若者の失業者も増加している(スペイン、ギリシャは5割以上)。

 若者の失業率が顕著なのはギリシャ、スペイン、ポルトガルだ。一方、スイスやドイツではこれはあまり問題にはなっていない。なぜか?一番の違いは国民経済だ。前者のグループはユーロ危機で深刻な打撃を受けた。

 しかし、欧州には例えばスペインのようにユーロ危機前から若者の失業率が高かった国があり、経済成長だけが若者の失業問題の解決策にはならない。また、スイスとドイツは職業訓練制度がかなり普及していることは言及に値する。

学歴と失業率との関係

 では、学歴が高いほど就職できるチャンスが増えるという定説は、国別にみても通用するのだろうか?定説通りにいけば、大卒の数が多ければ多いほど、その国の若者の失業率は低くなるはずだ。しかし、OECDが11年に発表した統計をみると、大卒の若者の数と若者の失業率全体にはあまり相関性がないことがわかる。さらに、定説とは逆に、ドイツとオーストリアは欧州内では大卒の若者の数が一番少ないが、若者の失業率はかなり低い。

 つまり、カギを握るのは職業訓練制度なのだろうか?若者の失業率が比較的少ないドイツ、オーストリア、スイスでは、この制度がもっとも発達している。

 下の図を見てみよう。後期中等教育(職業訓練、または高校など高等教育に備えた教育課程全般)と若者の失業率には、若干の相関性があることが分かる。オーストリア、ドイツ、スイスでは、若者の半数またはほぼ全体がこのレベルの教育を受けている。だが、同じく後期中等教育が普及しているイタリアとギリシャでは、若者の失業率は依然高い。

 このデータでは、職業訓練と高校の二つを分けて比べることはできない。だが、09年のOECDデータによると、スイスとオーストリアでは後期中等教育後、大学ではなく職業訓練に進んだ若者の数は全体の4分の3に及んだ。ギリシャでもその数は若者の全体の3割だった。一方、米国ではほぼ0%に近い。これらの国の労働市場では、オーストリア、ドイツ、スイスに比べて職業訓練制度への評価が低い。

 ただし、後期中等教育を受けていない若者の割合と若者の失業率には相関性がある。ここでもスイス、ドイツ、オーストリアが目立っており、欧州諸国の中で義務教育しか受けていない若者の数は欧州諸国の中で最低だ。

 結果的に、若者にどんな形であれ継続教育と、義務教育以上の教育を受けさせることが、若者の失業対策には欠かせないようだ。特に、高等教育がここ数十年で大衆市場となった今、職業訓練は大学に代わる選択肢となっている。例えば、EUは若者の失業問題に取り組むために、職業訓練に関する一連の政策を立ち上げた。具体的には、加盟国に職業訓練や見習いの制度改革を求めたり、EU域内ならどこでも実習できるよう調整を進めたりしている。

 世界銀行も職業訓練の重要性を説いている。同行による各国比較調査では、オーストリア、デンマーク、ドイツ、スイスなど職業訓練と大学教育が併存する教育制度では、学校から就職への移行がスムースにいくことが分かった。また、これらの国々では若者の失業率は低く、失業を繰り返す人の割合も他国の平均に比べ低かった。

 こうした中、スイスの職業訓練制度をまねる国もいくつか出てきた。しかし、そんなスイスでも大学人気は高まっている。スイスを含め世界中で大卒の数が増えていることを背景に、職業訓練の人気は技術分野を中心に下降している。また、スイスで職業訓練を受ける若者の数は1986年以降増加していない。

教育レベル

国際基準に基づき、成人教育は以下の3グループに分類される。

「前期中等教育」:義務教育を修了。

「後期中等教育」:義務教育後の教育。開始時は通常15、6歳。職業訓練や、大学入学準備のための教育(英国ではAレベル、スイスではバカロレア)。

「高等教育」:大学、カレッジ、応用科学大学。

今回の分析について

若者の失業率と若者の教育レベルは年齢グループごとに調べた。若者の失業率は年によって大きく変化があるが、若者の教育レベルはあまり変化がなかった。

図に表記されている国以外のOECD加盟国も分析の対象に含まれているが、読みやすさを考え、一部の国だけを紹介した。

教育レベルは3グループに分類されるが、各グループに進むための要件や方策は国によって異なる(特に職業訓練)。


(英語からの翻訳・編集 鹿島田芙美), swissinfo.ch

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