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高橋裕則さんの「城」は、上品なデコレーションのケーキとパンでいっぱい (swissinfo.ch)

高橋裕則さんの「城」は、上品なデコレーションのケーキとパンでいっぱい

(swissinfo.ch)

自分のケーキをスイスの店で売ること。高橋裕則さん ( 36歳 ) のそんな夢がスイス人との共同出資という形でかなった。

スイスのホテルの厨房で働きながら、おいしくて奇麗な日本のケーキをここで売りたいと思い続けた心意気が、スイス1号店を開かせる原動力となった。

稼いでなんぼ

 出身は新潟県村上市。上杉氏と戦った戦国武将、庄内氏ゆかりの城下町に明治から操業するパン屋が実家。高橋さんで4代目になる。高橋さんは一人っ子でもあり、家業を継ぐのが当然のような環境にあったが「人とは何か違うことをしたい」と常に思ってきたという。

 18歳で上京し、誠心調理師専門学校でフランス菓子を学んでいる時にテレビ番組「テレビチャンピオン」シリーズの中の「パン通選手権」に出場するよう、学校から命じられた。パンの欠片を食べて銘柄を言い当てるゲームで準優勝したのがきっかけで、卒業後も教員として学校に残ることになった。「成績も良かったですし、この性格ですから ( 評価された ) 」と言う高橋さん。朗らかな上、相手に気配りをしながら、それでいて歯切れ良い話し方をする。

 海外研修のため生徒を引率し、ルツェルンのパン・製菓協会の学校「リッチモント ( Richmont ) 」、パリのホテルリッツの料理学校などを何度か訪ねる機会に恵まれた。

 こうした中「自分が作っているものはヨーロッパのもの。ヨーロッパを知らずして作って良いはずがない」と感じていた高橋さんは、日本からフランス語圏の都市などの高級ホテルに求職の手紙を200通以上書いた。反応はわずか。返事があってもビザの発行はできない、無給でといった条件。唯一、ビザの問題も雇用者が解決し有給だったのはチューリヒのホテルだったという。
「日本からはヨーロッパにパティシエを学びにたくさんの人が来ますが、大抵が研修。ビザ無し、お給料も無いのが普通です。しかし、わたしは生活してなんぼ、という気持ちがありましたから。人と違う道を行きたかったのです」

軽さがヘルシー

 パティシエの技術は、実は日本が最高だと高橋さんは思っている。ヨーロッパのケーキは、切り分けることを念頭とした大きなもので、飾りもおおざっぱ。日本のように芸術作品のように凝ることも少ない。それでもスイスに来た。お菓子ができた歴史的背景や、なぜヨーロッパ人は甘い物を食べるのかといったことも、頭では分かっていた。しかし「実際来てみて、生活してみて分かったことは多かった」。肌身を通して食文化を理解したのだ。

 8年間、チューリヒのホテルではスイス人が好むデザートを作ってきた。ずっしりと重く、1個で満腹感を得られることが、伝統あるホテルの常連客に要求された。高橋さんは、そうした物を売りたいとは思っていない。彼の店に置かれているのは軽く、甘さも控えた日本的なケーキで、スイス人もその味を分かってくれるという自信がある。

 1月6日の開業第1日目。高橋さんを知る人も多く、店には次から次へと客が来た。日本人客の目当ては、あんパン、クリームパン、カレーパン、食パンといった昔ながらの日本らしいパン。スイス人は上品なデコレーションのチョコレートムース、抹茶ムース、モンブランといったケーキを買っていく。
「ケーキをメインにした店です。スイスのパン文化を覆すつもりは毛頭ありません。スイス人は健康指向が強いこともわかりました。軽いケーキでヘルシーさをアピールして売りたい。しかも、見た目が美味しさにつながるので、華やかな物をと思っています」

美味しいと言われたい

 朝8時の開店に間に合うよう、6時から厨房に立つ。冷凍設備もあり、低温発酵も可能になった今、以前のように早朝起きる必要はないとはいう。それでも小麦粉の袋は25キログラム。たっぷり生地が入っているステンレス製の大きなボウルを抱えるには体力が必要だ。ホテルで仕事をしていた時は、休日を使ってスイスに住む日本人のために家でパンを焼きケーキを作ってきた。
「それが仕事だと思っていますから。ここでは、閉店の夕方6時で仕事は終わりますから、日本での仕事と比べたら、大いしたことはないです。美味しかったとお客様におっしゃっていただければ、それでいいかなと」
 スイス人のお年寄りが毎日、来店することも嬉しいと言う。

 曾祖父が、日本のパン発祥時代に創業した三河屋から、暖簾 ( のれん ) 分けを許されたことは、東京の老舗、木村屋の社長から調理師学校時代に初めて聞いた。
「継ぎ方にもいろいろあると思います。新潟の店という『場所』を継ぐのか、父の『思い』をここで継ぐのかという違いだと思います」
 日本の正統派のパンを継承する高橋さんは今、「男なら自分の『城』を構えたい」という夢をスイスでかなえた。
 
佐藤夕美 ( さとうゆうみ ) 、チューリヒ州、アドリスヴィル ( Adliswil ) にて、swissinfo.ch

日本のパン

イースト菌はパンの生地にある糖分を分解し、炭酸ガスとアルコールを出す役割がある。炭酸ガスで生地が膨らみ、アルコールがパンの香りを作る。たんぱく質のグルテンは小麦粉をこねることで生まれるが、グルテンの膜がしっかり張られると炭酸ガスも生地にしっかり閉じ込められ、パンが膨らむ。ヨーロッパのパンは、グルテンの膜が弱い。日本のパンは小麦粉の生地を十分にこねるため、グルテンの膜もしっかり出来上がり、軽く滑らかなパンとなる。

swissinfo.ch



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