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言葉の壁 スイス社会に溶け込みたい 日本語話者を悩ますスイスドイツ語

「日本語で聴くスイスドイツ語」講座の様子

ベルンドイツ語の根底には、ベルンの宗教や歴史が深く刻まれている――。ベルン出身のペーテル・アッケルマンさんは、流暢な日本語でそう解説した

(swissinfo.ch)

スイスのドイツ語圏で暮らす日本人を悩ませるスイスドイツ語。いち方言と侮るべからず、本当の意味でスイス社会に溶け込むためにはスイスドイツ語の習得が欠かせない。だがどれだけ長く住んでも、ネイティブでない限りスイス人と同じように使いこなすのは至難の業。耳から覚えるのが不得手な日本人は、辞書や教科書もろくにないこの言語にどう向き合っているのか。

 「ベルンの人間が自分の気持ちを本当に表せる言葉は、ベルンドイツ語だけ」。6月のある金曜日。ベルン駅の裏手にあるセミナールームで、ベルン出身のペーテル・アッケルマンさんがこう解説すると、熱心にメモを取っていた日本人たちは深くうなずいた。

 人々が耳を傾けていたのは「日本語で聴くベルンドイツ語」講座。講師のアッケルマンさんはドイツのエアランゲン・ニュルンベルク大学で日本文化学の教授をしていた。日本にも留学経験があり、日本語は流暢だ。

 だがベルンドイツ語の文法や会話を習う講座ではない。「言語は単なる『言葉』でなく、そこに暮らす人の歴史やメンタリティそのもの。ベルンの歴史・ベルン人のメンタリティを知れば、ベルンドイツ語にもっと興味が持てるのでは」。企画したヴァルティなぎささんは講座の狙いをこう話す。アプリやオンラインで気軽に言語を学べる時代だからこそ、言語の背景にある国民性をベルン人に説明してもらう機会が欲しいと考えた。昨年6月に第1回を開催し、今回は3回目だ。

 ベルンは1528年に改革派教会が勢力を強め、市民に十戒を守るよう説いた。それが何百年も続き、ベルン市民の精神や言語に強い影響を与えたという。そのコミュニケーションの特徴は禁欲的で飾り気がなく、冗談で人の気を引くのも苦手だ。またベルン近郊には裕福な農村が多かったことから、ゆっくりとした丁寧な話し方が根付いた。

長く住んでも尽きない悩み

 講座の参加者は平日午前とあって大半が女性だったが、年齢層やスイス在住歴はばらばら。しかしスイスドイツ語との付き合い方については、誰もが悩みを抱えている。

 スイス在住歴40年になる女性は、アッペンツェル地方に住んでいた頃、夫婦で夢だったレストランを経営した。朝から晩まで地元のお客さんと会話し、ようやくスイスドイツ語が分かるように。「そのくらいコミュニケーションしないと、スイスの方言は覚えられない」と振り返る。今こそスイスドイツ語を自由に操るが、「最初は(「存在する」の過去形)gewesenをgsiiと言うのも、すごく勇気が要った。なんだか恥ずかしい、田舎者のような気がして」と打ち明けた。

 アッケルマンさんは「方言を地元の人以外が使うと不自然な感じがするのは、世界で共通する問題。それをどうやって乗り越えるかは大切な課題」と応じた。「だから無理にベルンドイツ語を話すことは勧めません。(日本人同士で)意見交換することしかできない」

 山崎瑤子さんは留学先のスウェーデンで出会ったスイス人男性と結婚し、昨年7月にベルン市街に移り住んだばかり。チューリヒ出身の夫とは英語で話す。まずは標準ドイツ語が先決と、スイスドイツ語は後回しにしている。だが夫が家族や友人と話すときはチューリヒドイツ語になり、寂しさはぬぐえない。

 「グリュッツィ(Grüezi)と言えばいいのか、グリュッサ(grüess-ech)がいいのか」。「こんにちは」を意味する挨拶一つとっても、地域が違えば違う単語になる。夫はベルンで人とすれ違うときもチューリヒ版の「グリュッツィ」と言うが、それも地元愛が強いからこそ。外国人である自分はどちらに寄るべきか、挨拶するたびにモヤモヤとする。

 ベルン郊外に住むスルツベルゲル・三木佐和子さんはスイス在住歴42年。ベルンドイツ語の先生は子供やママ友たちだった。子供が就学し標準ドイツ語を学ぶ前、家に遊びにくる友達は三木さんを「話が通じない」と役立たず扱い。それが悔しくて、ある日近所のお母さんに「これからはスイスドイツ語で話して」と宣言した。「公共の場で初めてベルンドイツ語で会話できたときは、『外国人』というフィルター無く自然に接してもらえて本当に嬉しかった」

 三木さんがスイスドイツ語を理解できると知って初めてリラックスして話してくれるスイス人は多い。だが未だに家族に変な喋り方を笑われたり、集団で話すと視界に入れてもらえなかったり。育児を終え日本語教師の仕事から退いた今、改めてスイスドイツ語を系統的に学ぼうと「学習」方法を模索している。

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