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2016年からの開発目標


ミレニアム開発目標後は、貧困と格差の根本原因を見据え




小屋の前で洗濯用の水を運ぶケヴィン・オニャンゴ(18)さん。アフリカ最大のスラムの一つ、ナイロビのキベラにあるコミュニティーセンターでの仕事を終えた後でのもう一つの仕事だ (AFP)

小屋の前で洗濯用の水を運ぶケヴィン・オニャンゴ(18)さん。アフリカ最大のスラムの一つ、ナイロビのキベラにあるコミュニティーセンターでの仕事を終えた後でのもう一つの仕事だ

(AFP)

貧困削減と生活水準の向上を中核とする「ミレニアム開発目標(MDGs)」。達成期限の2015年以降には、新たな開発目標が定められる。それが貧困と格差の根本原因に取り組みつつ環境保護に重点を置くべきだという理由はなぜか、スイスのミハエル・ゲルバー大使に聞いた。

 ゲルバー氏は、ポスト2015開発アジェンダに関するスイスの立場を国内的(下の囲み記事参照)、国際的に調整する役割を担う。賛否両論あったMDGsに代わるものとして構想されているのが「持続可能な開発目標(SDGs)」だ。

swissinfo.ch : MDGsの達成期限まで500日を切りました。MDGsは多くの批判や論争の的になってきましたが、大使の総合的な評価をお願いします。

ゲルバー : MDGsについてさまざまな意見があることは当然だと思う。成功は主に政治の面だ。貧困削減のために世界中の人を動かすことができたし、健康や教育の分野で大きな進歩があった。途上国の人々でもMDGsのことを知っていた。つまりかなりの成功を収めたということだ。

途上国はMDGsを真剣に受け止め、それに基づいて国内の貧困削減に向け戦略を立てた。援助国も同じ姿勢で国際的な協力のための戦略を立てた。 

また結果として、今後どうすればいいか具体的に見えてきた。貧困の半減がMDGsの収めた最大の成功だと言うつもりはない。これは期限の2015年の3年前に達成されたものだし、中国、インド、東南アジアの経済成長によるものだからだ。

しかし同時に、アフリカを含むほぼ全ての地域で貧困を減らすことができた。サハラ以南のアフリカは今も世界で最も貧しいが、この地域の国はMDGsの開始時点での出発点が既に違っていた。同じところからスタートしていない国を同じ指標で比べるのは公平とは言えない。

swissinfo.ch : でも、明るいニュースばかりではありませんでしたね? 

ゲルバー : 2015年までに達成困難な目標もある。例えば健康分野のゴール4、5、6だ。ただ、マラリアやエイズといった一部の分野では大きな進展があった。

しかし、当初設定された健康分野の目標は野心的すぎるものだった。例えば、妊産婦死亡率の4分の3削減を10年や15年で達成するのはかなり難しいからだ。

私たちは、SDGsや新しいグローバルな枠組みを用いて、持続可能な開発の三つの側面に、よりバランスよく取り組んでいこうとしている。MDGsでかなりの成功を収めた社会的な側面だけでなく、経済と環境面の開発も重視するということだ。これらをよりうまく組み入れていく必要がある。経済と環境の側面はMDGsでは軽視されていた。環境面のさまざまな目標を一つのゴール(MDGsのゴール7)にまとめたが、このよう環境を他の目標と区別して考える「縦割り」の手法ではうまくいかなかった。

swissinfo.ch : SDGsは他にどのような点でMDGsと違ってきますか? 

ゲルバー : 考え方を大きく転換し、より全体を見ながら、世界、国内、地域の政治のレベルで目標を設定し、実行していかなければならない。 

またMDGsは、問題の根本原因より、表に出てきている「症状」の解決を目指して設定されていた。世界で妊産婦の死亡がこれほど多いという事実は、開発格差の原因ではなく結果だ。

今度は、貧困と格差の根本原因によりしっかりと取り組まなければならない。それには、縦割りの手法ではいけない。特定の病気に焦点を当てた方が良い結果が得られる場合もあるが、社会、経済、環境の面を考慮したより広い視点で取り組まなければ、再発を防ぐことはできない。

もう一つは、国のおざなりなガバナンス(統治)と平和の問題だ。MDGsはこれにも失敗した。ガバナンスは、オープン・ワーキング・グループ(OWG)が提案した新しいSDGsのゴール16に組み込まれている。この16の目標のそれぞれの具体的なターゲットについては、十分な考察がされていないと私たちは感じているが、この目標を設定できたこと自体は大きな進歩だ。例えば、ガバナンスに関してはもっと強化すべきだが、難しい政治的な議論の中で、これが選ばれただけでも素晴らしく、また、腐敗や贈収賄、透明性のある制度の発展、包括性や政治的参加については具体的なターゲットが盛り込まれている。

swissinfo.ch : 新しく提案されたSDGsについては、目標やターゲットの数が多すぎるという批判があります。

ゲルバー : 私たちは目標の数は減らした方がいいと考えている。17の目標、全部で169のターゲットを実行するのは非常に難しいし、一般の人々にわかりやすいよう伝えるのも困難になるからだ。

17の目標の内容そのものは維持しつつ、目標数を17から10〜12にするのが望ましいと思う。潘基文国連事務総長が目標の数を大きく減らす提案をすると予想する声もある。しかし、この17の目標は多くの国が強く支持しているので、潘基文氏がそのような削減を提案すれば政治的なリスクが伴うかもしれない。どうなるかわからないが、難しい議論になる。

swissinfo.ch : MDGsは「富裕国が資金を出し、貧困国が実行する貧困撲滅ターゲット」だと言われましたが、SDGsでは全ての国が2030年の期限までに目標達成を義務づけられることになります。スイスにとってはどのような影響がありますか?

ゲルバー : スイスでは、4年ごとに更新される持続可能な発展に関する国内政策の書き直し作業が並行して行われている。SDGsを国内で実施するのに主に利用される手段がこれだ。このプロセスは連邦環境・運輸・エネルギー・通信省国土開発局(ARE)主導で行われている。

スイスにとって重要性が高く、17のSDGsを反映する分野が、今後具体的に定義される。自然資源に関する分野の例えば農業や生物多様性、消費と生産のパターン、エネルギーと気候政策、移動性と国土開発、保健といった分野になるだろう。しかし、スイスでは例えば新しいエネルギー移行政策や、保健分野の革新が予定されるなど、既に進められている分野もあり、このような分野では持続的開発の方向で軌道に乗っているため、恐らく国内政策を大きく変更する必要はないだろう。

swissinfo.ch : では、提案されている17の目標は理想としての目標を並べたメニューのようなもので、そこから各国が好きなように選べるということですか? 

ゲルバー : 各国が柔軟に選択することになるだろう。それは必要なことだ。もし各国で逐一同じようにしなければならない厳密な枠組みだとすれば、世界規模で合意に達することは不可能だろう。各国の背景によって、それぞれの目標の重要度は異なってくる。

しかし、各国が国内のSDGsの実施状況、どの分野でどんな成果が出ているかといったことを国際的に報告することを義務づける説明責任の仕組みも作られるだろう。効果的な審査、報告の仕組みを確立することが非常に重要だ。

スイスは、(ジュネーブに本部を置く)国連人権理事会が行っている各国の「普遍的・定期的レビュー」に似たものを設けることを目指している。この考えには反対もあるが、私は良い手本になると考えている。

SDGのスケジュール

 MDGsの達成期限の後に向け、新しい持続的開発アジェンダが登場している。さまざまな議論やアイデアの中で、「持続可能な開発目標に関するオープン・ワーキング・グループ」と呼ばれる政府間作業部会がMDGsを引き継ぎ、2030年を達成期限とする169のターゲットからなる17の目標を提案した。 

この提案は国連総会に提出され、今後12カ月にわたり他の作業部会のアイデアとともに議論される。「持続可能な開発目標(SDGs)」を含む新しいポスト2015枠組みは、2015年9月の首脳会議で採択される予定。スイスはOWGに、フランスとドイツとに一議席を共有して参加している。

スイスのプロセス

 新しいSDGsは、貧困国に限らず全ての国が参加する世界的なものとして構想されている。スイスでは、連邦外務省開発協力局(DEZA/DDC)の主導で、2015年以降について幅広く全国的に協議する会合も開かれ、一般の人々と市民社会、民間企業、学界の代表が参加した。

 スイスの2015年以降の立場は2014年6月25日に内閣の承認を受け、その後連邦議会を経て最終案が決定された。

 スイスは大まかに16の主要分野を設定している。水の安全保障、保健、持続可能な平和、包括的な社会、ジェンダー平等、女性の権利、女性と少女の社会的地位向上などの分野での目標に特に注力する。同時に、移民と開発、災害リスク削減、持続可能な消費と生産のような問題も重視するよう働きかける予定だ。


(英語からの翻訳・西田英恵 編集・スイスインフォ), swissinfo.ch

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