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2018年11月25日の国民投票 牛の角とらないで! 動物の福祉尊重を求めて国民投票へ

Vaches dans un champ

スイスでは角のある牛が見れるのはますます稀になっているのが現状

(Keystone)

「牛の除角反対イニシアチブ」の中心にあるのは家畜の福祉だ。イニシアチブ(国民発議)の発起人らは、除角は家畜に無用の痛みを与えると非難する。他方、反対派は、除角することで家畜に最大限動き回る自由を与えることができると主張している。

25日の国民投票ではスイスを象徴する牛について、より正確には牛の角について、国民の意見が問われる。この家畜の除角を反対するイニシアチブが非難するのは、牛やヤギの角が当然のように除角されていることだ。スイスで角を生やしている雌牛は、発起人らによれば全体のたった10%、連邦政府によれば25%だという。

今回の投票は、スイスが発信するイメージと現実とのギャップを問題にする。スイスで角のある牛を見かけることはますます少なくなっているにもかかわらず、広報用のポスター、観光用のパンフレット、板チョコを飾るのは角のある牛だ。しかし、何よりも議論の的になっているのは家畜の福祉だ。群れで飼育する牛の除角の是非が問われている。

農産品に関するイニシアチブについて国民の意見が問われるのは、前回の国民投票に続いて3度目だ。9月には、より持続可能な農業を目指す「公正な食品を求めるイニシアチブ」と、国内の農業生産を強化しようとする「食料主権を求めるイニシアチブ」が反対多数で否決された。牛の角を巡って業界では様々な意見が対立しているが、 今回の投票はむしろスイス農業の細部に関係するものだ。

「牛の除角反対イニシアチブ」の発端となった一人の農夫

すべてはベルン州のジュラ地方に住むグラウビュンデン出身の山岳農家から始まった。アルミン・カポールさんは、ほとんど一人で発議し、必要な10万人分の署名を集め、直接民主制だからこその小さな奇跡を起こした。発議に掛かる費用は、カポールさんの貯蓄の一部を使ったほか、チューリヒ動物保護協会他のサイトへ自由共同体銀行他のサイトへや個人からの寄付で賄った。カポールさんを特に支援するのは、スイスの有機農家連盟ビオ・スイス他のサイトへ、環境保護団体のグリーンピース・スイス他のサイトへスイス動物保護協会他のサイトへ、有機農法の一種であるバイオダイナミック農法他のサイトへを提唱した哲学者ルドルフ・シュタイナー他のサイトへ人智学他のサイトへに賛同する一部の農家や多くの人々だ。秘密結社のアルプス議会他のサイトへは自ら進んで署名の公証に当たった。

「牛の除角反対イニシアチブ」の主張

イニシアチブは、除角の禁止を要求しているのではなく、家畜の角を残すよう農家に奨励することを求めている。正式名称「農業用家畜の尊厳のための」イニシアチブは、成熟した家畜の角を残す場合、「雌牛、種牛、雌ヤギや種付け用のヤギ」の所有者が連邦政府から財政的支援を受けることができるよう、農業について定めるスイス連邦憲法第104条の加筆を提案する。

カポールさんは、農業分野でたえず推し進められてきた工業化に反発し、このイニシアチブを起こした。工業化によって、より狭い場所で雌牛を飼育できるように、圧倒的多数の農家が雌牛の除角をするようになった。しかし、除角は、麻酔や痛みに耐えるための鎮痛剤が必要なほど家畜に負担を伴うとカポールさんは指摘する。子牛や子ヤギは生後3週間までに、熱した鉄ごてで角の根元を焼いて除角する。発議委員会他のサイトへによると、除角した子牛の20%以上が長期間痛みを感じるという。

発起人らによると、角は動物にとって不可欠な血の通った部位だ。雌牛は角によってお互いを認識すると考えられる。また、コミュニ―ケーション、消化、グルーミング、体温調整といった役割を角が果たしているという。家畜がストレスやケガの心配なく動き回れるだけのスペースを確保すれば、フリーストール牛舎(牛が自由に歩き回れる牛舎)でも角のある牛を育てることは十分に可能だと発起人らは主張する。

除角をするかどうかについては、農家の自由な選択が尊重されると発議委員会は強調する。連邦政府からの助成金は、農業関連予算の一部に含めることができるのではないかとも話す。

なぜ連邦政府はイニシアチブの否決を勧めるのか?

このイニシアチブは「結局、動物のためになるどころか有害」であり、逆効果になりかねないと連邦政府他のサイトへは考える。雌牛の角を残し、助成金を受け取った農家は、スペースの確保とケガ防止のために、フリーストール牛舎をやめて、家畜を繋ぎ飼いするかもしれない。家畜の動き回る自由や群れとの接触を制限することは除角すること以上に、家畜の福祉を害すると連邦政府は考える。角は、他の家畜や農家の人々にケガを負わせるリスクを高めることも指摘する。

フリーストール牛舎や家畜を定期的に屋外に出すことに対して、連邦政府は既に助成金を出し、特に家畜の福祉を尊重する飼育法を奨励している。

ベルン・ジュラで牛の福祉を訴えるアルミン・カポールさん

(Manuel Lopez)

また、「牛の除角反対イニシアチブ」は農家の企業家としての責任を制限すると政府は批判する。農家は自分の家畜のことも、自由に使える場所についても分かっているのだから、「家畜を飼育するにあたって除角すべきか否かは農家が決めるのが一番」だ。現行の農業政策も、農家の企業家としての自己決定権を強化しようとしている。

さらに、このイニシアチブを実施する際に掛かる費用は年間1千万(約11億5700万円)~3千万フランに上ると連邦政府は見積もる。その費用を賄うためには、農業関連予算の他の部分を削減しなければならないだろう。また、除角しない家畜の登録には州や連邦に追加的な負担が掛かるであろうことも政府は指摘する。

連邦議会の見解

連邦議会両院は連邦政府の立場に賛同し、圧倒的多数でイニシアチブの否決を勧告する。しかし、そこに至るまでには、多様で感情的な議論があった。緑の党と社会民主党は、除角が家畜に苦痛を与えること、牛の角によって重大な事故が起きることはまれであること、スイスの絵葉書と現実の光景とのギャップを埋めるべきだということを前面に出して、イニシアチブを擁護しようとしたが功を奏しなかった。

それでも、連邦議会での投票結果にはいくつか驚くべき点があった。国民議会(下院)の投票では、棄権が著しく多かった。棄権票に政党の偏りは見られず、保守右派の国民党の棄権票も多くあった。

連邦議会の多くの議員が、カポールさんの行動力と粘り強さに共感したとしても、過半数の議員は、家畜の福祉を促進するためには現行法制で足りると考えている。農家の裁量、ケガの危険性、元来角を持たない種の牛が考慮に入れられていないことも否決を正当化する理由として挙がった。

意見が分かれる農業従事者たち

スイス農業関連諸団体の「牛の除角反対イニシアチブ」に対する立場は一枚岩ではない。スイス農家・酪農家協会(SBV/USP)他のサイトへは、各人の自由な判断に委ねることを決めた。フランス語圏スイスの農業関連団体を取りまとめるAgorA他のサイトへは、イニシアチブを「見当違いの統制経済の一種だ」として否決を呼び掛ける。スイス女性農業者協会他のサイトへも同様の立場だ。他方で、スイス小規模農家組合他のサイトへとビオ・スイスはイニシアチブへの賛同を呼び掛ける。家畜の除角処置を最低限に抑え、家畜の種に合わせた飼育法を促進するためだ。

インフォボックス終わり


(仏語からの翻訳・江藤真理)

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