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カカオ豆の持続可能な生産


スイスのチョコレートメーカー、持続可能な生産支援の姿勢と現実にギャップ


Paula Dupraz-Dobias, Geneva


「持続可能な生産」の認証は、カカオ生産からチョコレート製造の全過程で、常に行われているわけではない (swissinfo.ch)

「持続可能な生産」の認証は、カカオ生産からチョコレート製造の全過程で、常に行われているわけではない

(swissinfo.ch)

スイスは、チョコレート製造で世界最大手のメーカーなどを抱える国だ。こうしたメーカーは、カカオ豆が生産される地域での児童労働の禁止や、生産農家の生活や農地の持続性を保証する「持続可能な生産」にも、積極的な参加の姿勢を見せる。しかし、こうした姿勢と現実にはかなりのギャップがある。

 ジュネーブの隣町、カルージュで小さなチョコレート店を経営するフィリップ・パスキエさん。高品質とオリジナルな味で評判が高いこの店のチョコレートだが、パスキエさんはこのところ、カカオの生産地はどこか?といった質問を客から受けることが多くなったと言う。

 カカオは、純度の高いものを提供するスイスの会社から購入するというパスキエさんは、ジャングルで有機農法を使って生産するボリビアのカカオなどがこうした会社の中心を占めていると話す。

 ワインなら有機農法を保証する「消費者向け認証(ラベル)」が貼られるものだが、「残念ながら、受け取るカカオの袋にはそうしたラベルがついていない。しかし、生産農家からカカオ販売会社に至るまでの経路に絶対なる信頼を置いている」とパスキエさんは話す。昨年はこうした会社から、生産地を知ってもらうためにと南米の農場に招待された。

宣伝効果

 パスキエさんが買うカカオにラベルはないが、今日、カカオを保証するラベルの数は増加の傾向だ。よく知られた国際フェアトレード認証やUTZ認証、有機農業認証などの他に、多くの生産者が独自にラベルを作ってもいる。

 チューリヒ在住のフードアナリスト、アンドレアス・フォン・アルクスさんは、こうしたラベルに対して、こう言う。「持続可能なカカオ生産を保証する国際フェアトレード認証などのラベルを使うことは、チョコレート生産者にとって宣伝効果を高めることにつながる。なぜなら、消費者はチョコレート製造の過程で起こっていることをよく知っているからだ。カカオ生産に児童労働が関わっていることや、カカオバターが高騰したため、その代わりにヤシ油を混ぜたりしたことなども知っている」

 実際、チューリヒが本社のカカオ供給・チョコレート製造で世界最大のバリーカレボーは、この10月から新しいCEOのポストに、アントワンヌ・ドゥ・サンアフリック氏を迎えるが、彼は持続可能な生産を推進する一般消費財メーカー、ユニリーバの経営者だ。

独自に認証

 だが、フォン・アルクスさんは、カカオの認証はしばしば「混乱状態だ」という。「それぞれの会社が独自のプログラムを作り、宣伝効果を最大限に上げようとしているからだ」

 例えば、チョコレート製造大手のリンツ&シュプリングリーは、自社のガーナのカカオ生産プログラム以外にも、独自に生産者援助プログラムを行っており、以下のようにスイスインフォに対し返答してきた。「我々は、2020年までに『リンツ&シュプリングリー農業生産プログラム』を完成させ、全カカオの供給をこれでまかなうつもりだ。また、カカオ生産からチョコレート製造に至るまでの全過程の認証も独自に行う。こうした認証を、独立した第3者機関に委ねることで、カカオ生産の過程でしばしば起こる児童労働の問題などを厳しくチェックできる」

 一方、バリーカレボーでは、「持続可能な生産」分野の広報担当、イエンス・ルップ氏がこう話す。「我が社は、カカオ生産農家と直接に仕事をし、カカオの生産・ストックの全過程を把握している」。また同社は、認証のラベルを多く使っており、それにはレインフォレスト・アライアンス認証、フェアトレード、UTZ認証、有機カカオ認証などがある。

 また同社のサイトによれば、西アフリカのコートジボワールやカメルーンの共同組合と仕事をし、農家に対しトレーニングを行っているという。そしてルップ氏も次のように説明する。「我々は、消費者に対し我々が行っていることの情報をきちんと提供したい。今はグーグルの時代だ。消費者は、口に入れるものがどこで生産されたのか知りたいと思っている」

ギャップ

 世界のチョコレートメーカーの大手、例えば米国のハーシーやマース、イタリアのフェレロなどは、持続可能な生産を保証する計画「ココア・アクション」の一環として、カカオ供給の認証を2020年までに100%行うつもりだと宣言する。

 ところが、こうしたメーカーにカカオ豆を卸しているバリーカレボーの姿勢は、実際のところは、今ひとつなのだ。「認証のラベルを多く使い、西アフリカの農家に対しトレーニングを行っている」と明言した同社だが、サイトに「こうした認証ラベルがついたカカオは、同社が扱うカカオ全体の13%だ」と明記する。

 また、「カカオの生産からチョコレート製造までの全過程の認証を自社でコントロールする」と宣言したリンツ&シュプリングリーでさえ、「持続可能な生産」の認証がつくカカオ豆の全体に対する割合は、はっきりと示していない。

 持続可能なカカオ生産を支援するNGOを統括する、ココア・バロメーターによれば、レインフォレスト・アライアンス認証、UTZ認証、フェアトレード認証の三つのラベルが認証しているカカオ豆は計140万トンで、市場の30%を占めるという。ところが、「それぞれの認証機関が認証している農家のカカオ豆の量がはっきりしていない。ということは一つの認証機関で認証されたカカオ豆が他の二つの認証機関からも重複して認証されている可能性は高い」

生産農家は蚊帳の外

 こうした状況をみると、スイスのチョコレート製造大手は結局、「持続可能な生産」の目標からは、ほど遠いレベルにいるのではないだろうか?だが、前出のフードアナリストのフォン・アルクスさんはこう言う。「現在起こっていることを見るのではなく、2020~25年にどう変わるかを見なくてはならない」

 ココア・バロメーターが言うように、消費者の「持続可能な生産」に対する認識がさらに高まれば、チョコレートメーカーはもっと真剣に、「持続可能な生産」を支援する努力をするかもしれない。

 一方で、西アフリカなどのココア豆生産農家の状況を見ると、認証を受け取るプロセスを知っている農家は非常に少ない。小規模農家を含むすべてのカカオ生産者を代表する団体、「国際ココア生産農家組織」のサコ・ヴァレンさんによると、カカオ生産の80~90%は、遠隔地で孤立した小規模農家によって行われているという。しかしバイヤーは、こうした農家のうちのほんの僅かな数の農家とのみコンタクトがある。そして、このコンタクトのある農家が、認証を受けている場合が多い。

 ヴァレンさんはこう続ける。「認証は必要だが、現在の認証システムは多くの問題を引き起こし、農家は不満に感じている。他の認証システムが望まれている。一方で、カカオ生産を行い、世界のチョコレート消費の増加を理解している小規模農家の人たちは、今こそさまざまな利害関係者からアドバイスを受ける必要がある」

 しかし、ヴァレンさんの組織は、生産農家の生活の改善をいかに行うかといった、メーカーなど企業側の議論の輪の中には入れられていない。

 カカオ豆の約70%は西アフリカの国々で生産されており、そこでは貧困が蔓延し、児童労働も頻繁に見られる。

 ヴァレンさんはこう結論する。「大手のチョコレートメーカーや、チョコレートの生産と消費が高い国の政府関係者は、カカオ生産農家の組織や組合と手を取り合って、こうした問題を解決していくべきだと思う。今のところ、カカオ生産の9割を担う生産農家の80~90%が、こうした問題解決の議論の輪の中に入れられていないからだ」


(英語からの翻訳・編集 里信邦子), swissinfo.ch

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