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2020年のスイス スイスは再び外国人規制を強化するか?

政治

スイスでは異文化や外国人の受け入れに関する議論は最近、影を潜めている。だが2020年は状況が変わり、外国人に対する新たな壁が作られるかもしれない。区別と排除、アイデンティティーと差異に関する議論が再燃しそうだ。

今年の展望の第2部である本記事は政治に焦点を当てる。第1部は経済をテーマにしている(記事の末尾を参照)。

EUへの更なる歩み寄り

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今年は合意するのか、しないのか―。スイスと欧州連合(EU)の枠組み協定交渉は4年を超えたが、いまだ合意に至っていない。それどころか、両者の態度は硬直している。

昨年の交渉はこう着状態に陥っていた。EUは再交渉しない立場を明確にした。スイスでは、現行の提案が連邦議会で過半数の支持を得ていない。

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今年も不安定な状況が続くだろう。新欧州委員長にウルズラ・フォンデアライエン氏が就任したが、同氏の元でもEUが新たな対応を示すことはほぼないと観測筋は予測する。委員長の裁量が限定的だからだ。フォンデアライエン氏と複数のスイス連邦閣僚は、今月の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で初めて非公式に対面する予定だ。スイスが同氏とEUに伝えるメッセージは次のような趣旨になるだろう。「スイスではこれから、ある案件に関する国民投票キャンペーンが始まるため、どうか今は挑発しないでいただきたい」

スイスでは5月に国民党主導の通称「制限イニシアチブ(国民発議)」が国民投票にかけられる。これはEUとの「人の自由な移動」に関する協定の破棄を求めた提案。国民投票で可決されれば、スイスはEUと原則的に離別することになる。

だが否決される可能性は高い。スイスの有権者がEUと秩序ある関係を支持するという結果になれば、交渉がリセットされることはないにせよ、EUと今後の交渉を進めていく上で良い出発点となるだろう。

対中関係に試練

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世界状況を踏まえると、スイスにとって米国、中国、ロシアといった大国との関係は重要性を増していく。そのため今後4年間の外交戦略ではこうした状況が顧慮されるだろう。

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スイス外交の目標は、強権化が進む世界の中で、今まで以上に首尾一貫した対外姿勢を打ち出すことだ。

だがそれと同時に、中立国スイスは今まで以上に立場を明確にする必要に迫られるだろう。例えば米中貿易摩擦が激化した場合だ。立場を表明せざるを得なくなれば、スイスは米国との関係を損なうよりも、対中貿易協定を反故(ほご)にすると考えられる。その最大の理由は国民からの圧力だ。中国政府がウイグル族を組織的に迫害および抑留していることを示す機密文書が公表されたことで、スイスでは中国に対する猜疑心(さいぎしん)が強まっている。

「穏健な移民政策」で規制強化

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だが確かなことがある。それは、制限イニシアチブをきっかけにスイスでここ数年影を潜めていた議論が再燃することだ。アイデンティティーと差異、固有のものと異国のもの、内国人と外国人に関する議論が再び紛糾するだろう。区別と境界についてもしかりだ。国民党の「穏健な移民政策」というイニシアチブは人の自由な移動に終止符を打つだけでなく、スイス独自の移民規制を掲げているからだ。

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政府は同案に反対の立場だ。政府の想定では、スイスは今後、人口動向や高齢化に伴い、国民党の主張とは逆の問題に直面することになる。それは、スイス移住を希望する労働者を、スイス自らが探さなくてはならないという問題だ。

連邦議会は政府同様、国民には同案に反対票を投じるよう勧奨している。

難民への対応を厳格化

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スイスでは難民分野でも締めつけが厳しくなりそうだ。連邦政府は難民申請者、暫定滞在許可の取得者、要保護人物に対し、難民申請手続きまたは帰還手続きで必要な場合を除き、国外旅行を禁じる方針だ。難民援助団体は「この計画は基本権に抵触し、移動の自由を侵害する」として反対。また、当事者にとっては国外旅行がしばしば家族や友人とつながる唯一の手段である点も指摘している。

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連邦政府のこの提案は、今年中に連邦議会で審議される見込みだ。

そして別の締め付けも予定されている。今後は難民申請者が所有するパソコンや携帯電話が没収対象になるかもしれない。難民申請者の身分が他の手段で確認できなかった場合に難民当局の捜査権限を拡大する法案が、連邦議会で提出される見込みだからだ。同時に、スイスの難民申請件数はさらに減少することが予想される。難民申請件数は15年をピークに年々減っている。連邦移民事務局が受理した件数は15年で3万9千件だったが、現在は1万3千件強だ。

恐れという幻影を巡る大議論

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ブルカやニカブの着用はスイス全国で禁止されるのだろうか?今年の連邦議会では、公共の場で顔を覆い隠すことを禁じる「覆面禁止イニシアチブ」と、連邦内閣が出した対案を議論する。

同イニシアチブの発起人であるエーガーキンガー委員会は、10年前にミナレット建設禁止イニシアチブを提案したことで名をはせた。当時の提案の動機は、スイスにすでにあるミナレット4塔に加え、さらに1塔が建設されることへの恐れだった。ミナレットの新規建設を一切禁止する同案は、国民投票で賛成53.4%で可決された。

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(Keystone / Gian Ehrenzeller)

主に保守系右派の国民党員から成る同委員会は17年、イニシアチブを当局に提出。同案の対象となるのはスイスで女性数十人。発起人は、自分たちはイスラム教の敵ではないとし、この提案にはデモで過激な暴力行為に出る覆面のデモ参加者も含まれると主張する。

連邦政府は同案を行き過ぎと見なし、身分確認でのルールを厳格化する対案を提出した。そのため連邦議会で対案の是非についての採決が必須となり、イニシアチブが国民投票にかけられるまでのプロセスに遅れが生じている。国民投票にかけられるのは、おそらく21年になる見込み。

州レベルではティチーノ州とザンクト・ガレン州で、公共の場でのブルカやニカブの着用を禁ずる法律が施行された。

2020年のスイス 富裕国スイスに問われるモラル問題

スイスは2020年も好調が続きそうだ。安定した経済、低い失業率に加え、市場急落の可能性も低い。だがこれほど好調であれば、見返りも求められる。新たな年を迎えたスイスには、責任や透明性などモラルの問題が突きつけられるだろう。


(独語からの翻訳・鹿島田芙美)

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