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クライミング


東京五輪追加種目のスポーツクライミング スイスでも大人気




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スイスでは特に、都会でスポーツとしてクライミングの人気が高まっている (Keystone)

スイスでは特に、都会でスポーツとしてクライミングの人気が高まっている

(Keystone)

美しいスイスアルプスと太陽を楽しめるというのに、どうして室内の壁を登ろうと思うのか?クライミングをたしなまない人にとっては、理解に苦しむところだろう。

 しかし多くの若者が、街中にありアクセスが容易で悪天候にも影響を受けない室内のロックジムでクライミングを学んでいる。そしてこの事実がこのスポーツの将来を方向付けつつある。スポーツクライミングが2020年東京五輪の追加種目に決定した今、人気や競争力がさらに高まり、都会派のスポーツとしての性質が強まることが予想される。

 スイスで最も高い室内クライミングウォールをもつジム「オブロック(O’Bloc)」が昨年、首都ベルン郊外にオープンした。インドア志向のハイテク・シックとアウトドア志向のデザインが絶妙なバランスで共存するこのジムは、スポーツクライミングの向かっている方向を雄弁に物語っている。

 クライマーたちが料金を払うのは、ジムのルートセッターがプラスチックのホールド(突起)やボルトを慎重に設置した、魅力的で切り立った壁に対してだけではない。大きな窓やドアを通して自然光が入り、近隣の農場の緑の牧草地がゆったりと見渡せる。

 この夏スイス・ユース選手権で優勝したサシャ・レーマンさんは、山ではなくジムでクライミングを学ぶことについては「考え方の違いだ」と話す。

 クライミングにも適したカジュアルな普段着でジムに現れた18歳のレーマンさんは、ベルン州ブルクドルフの出身だ。週のほとんどは、便利な室内クライミングを利用しているという。

 「クライミングジムでは、天候は関係ない。登山ではさまざまな要素が影響するが、ジムではそれがない」と言うレーマンさんには、2020年東京オリンピックへの出場チャンスがかなりある。

クライミングは「山岳アクティビティ」?

 登山に関する豊かな歴史がある国々では、各種山岳スポーツへの関心を反映して、アルペンクラブが増加している。関心が広がったことを受けて会員数が増え、人気が復活しているのだ。

 スイスアルペンクラブ(SAC/CAS)の会員数は15万人に達した。スイスに住む約50人に1人の割合だ。ドイツ(会員数100万人)やオーストリア(同50万人)のアルペンクラブと同様、幅広い地域に点在する山小屋を運営している。アメリカアルペンクラブは、過去何十年も一流登山家のみを対象にしていたが、現在は主な登山地域で数カ所の山小屋やキャンプ場を運営し、会員数も1万6千人以上に増えた。

 しかし現在のクライミングの流行により、今後「クライミング」と「山岳のアクティビティ」を自動的に結びつける人が少なくなる可能性がある。8月に国際オリンピック委員会(IOC)がクライミングを2020年オリンピックの追加種目に決定したことは、いつか重要な転換点として振り返られることになるかもしれない。

 「世界的に、スポーツクライミングへのサポートが増えるだろう。選手たちにとっては良いことずくめだ」と、国際スポーツクライミング連盟(IFSC)の広報担当のジョゼフ・ロビンソンさんは話す。

世界的な現象

 IFSCのデータによると、今日クライミング人口は世界で2500万人(世界人口の約300人に1人)に上り、スイスやアメリカにも数千人いる。IFSCは現在5大陸に87の加盟団体を擁し、その約半数がヨーロッパにある。10年前と比べて25%の増加だ。

 「クライミングの人気は今以上に高まるかもしれない。クライマーにももう少しお金が入るようになるかもしれない」とレーマンさん。「もちろん、(クライミングが五輪追加種目に決定して)私はとても興奮した。私たちスポーツクライマーにとって大きな名誉だ。オリンピックの種目になるということは、世界中で多くの人がするスポーツだということだから」

生計を立てる

 1984年のロサンゼルス五輪に体操選手として出場した父を持つレーマンさんは、その若い年齢にもかかわらずすでに10年近くをスポーツクライミングに捧げ、順位を上げてきた。アウトドアを楽しむ一家で育ったレーマンさんは、オリンピック種目決定で注目が集まったことで、キャリアの可能性が広がることを期待している。

 「スポーツクライミング選手として生計を立て、プロとしてやっていくことが可能になるかもしれない。これは良いことだ」とレーマンさんは言う。「今はなかなか難しい。プロとして生計を立てられるクライミング選手はわずかだ」

 クライミングに熟達するには身体的、精神的に何年もトレーニングを積む必要がある。クライミングの本質は、集中し忘我の境地に至ることであり、身体を意識することであり、プロブレム・ソルビング(課題を解く)という知的な挑戦だ。クライマーは筋肉で思考し、どの体勢をとれば良いか瞬時に理解することを学ぶ。

クライミングの都会化

 クライミングを東京五輪の追加種目に決定するにあたって、IOCは二つの重要な流れに言及した。一つはオリンピックをより若者が親しめるものにすること。もう一つはスポーツの都会化を反映することだ。

 東京五輪開催時、レーマンさんは22歳だ。オリンピック出場枠は男女合わせて40人のみ。すでにスイスのチャンピオンであるレーマンさんが20人しかない男子のオリンピック出場枠に入るには、ヨーロッパのチャンピオンになる必要があるかもしれない。女子の出場枠も20人だ。

 優勝するには、3種類のクライミングをマスターしなければならない。レーマンさんがすでに強いのは「リード」という種目だ。これは「スポーツクライミング」とも呼ばれ、腰につけたロープをボルトに通しながら登っていき、落下したら負けというものだ。2つ目は「スピード」種目で、トップロープで安全を確保した上で、どれだけ速く上まで登れるかを競う。3つ目は「ボルダリング」で、わずか数メートルの高さのルートを、何回の挑戦で完登できたかを競う。

種目分けへの疑問

 アメリカの有名なスポーツクライマーであるサーシャ・ディジュリアンさんは、東京五輪の女子出場枠20人に入りたいと願っている。ディジュリアンさんは最近雑誌に寄稿した文章の中で、オリンピックレベルで競技をするという子どものころからの夢を叶えるチャンスを得た気持ちと、クライミング人気の高まりがこの流れを作ったことを述べている。

 「クライミングは基本的にアウトドアスポーツだが、変化と発展を遂げている。クライミングは最近5年間で信じられないほど盛んになり、クライミングジムの会員数は急増した」と、アメリカのアウトドア雑誌「アウトサイドマガジン」に8月に掲載された記事でディジュリアンさんは書いている。「世界最大の舞台であるオリンピックに参加する機会が得られることで、競技クライミングはさらに進化するだろう」

 ただしディジュリアンさんは、IOCがクライミングの本質を本当に理解しているか疑問を呈し、クライミングを「リード(スポーツクライミング)」、「スピード」、「ボルダリング」の3種類に凝縮しようとしていることに対し、「競技クライミングの不自然で人工的な形態」だと表現している。

ジムの発展

 クライミングが盛んになることは、山岳ガイドとコーチを務めるクリスチャン・チュディさんのような熟練クライマーにとっても朗報だ。チュディさんは、クライミングへの情熱が高じて室内クライミング施設「オブロック」を開いた。ハイクオリティの室内クライミング施設はスイスに数十カ所あり、さらに増えつつあるが、その中でも最も高い19.5メートルの壁がある。ベルンの別のクライミングジムで、高さ14メートルの壁をもつ「マグネット」は1993年のオープン以来、クライミング人気の盛り上がりに重要な役割を果たしてきた。

 「これまで20年間、クライミングの人気は着実に上昇してきた。単なる流行ではない」と、レーマンさんの指導を手伝うチュディさんは言う。「クライミングは人と一緒に行う競技で、この点もとても良い。ここベルンでも私たちは小さな家族のようなもので、誰もが知り合いだ」

 若いクライマーの多くは、動き方や、安全確保のためのロープやハーネスの使い方を学んだ後でも、アルプスのようにより大きなものに挑戦しようと思わないかもしれない。ジムや岩山で、運動や競技として訓練を続ける方を好む傾向が強まっている。

 「クライミングは都会のスポーツとして人気を集めている。だからスイスの大きな都市には必ずクライミングジムがある」とチュディさん。

 「これまでもこれからも、2種類のタイプの人が来ると思う。ジムでのクライミングしかしない人と、外へ出て行ってアウトドアクライミングをする人だ。それは各自の生活や好みの問題で、クライミングというスポーツにとっては何の問題もないと思う。この二つの世界は共存できる。皆、お互いから学べることがある」

室内クライミングブーム

スポーツクライミングには3種類ある。「リード」、「ボルダリング」、そしてあらかじめ上に設置したロープを体に結んで行う「スピード」だ。

国際スポーツクライミング連盟(IFSC)のデータでは、昨年の時点で、選手資格をもつクライマーは2千人(そのうち女性が700人以上)で、62カ国を代表している。年齢中央値は19歳だが、熱心なクライマーのほとんどが60歳を超えてもクライミングを続ける。

IFSCは2016年に20以上の国際クライミング競技会を開催する予定。競技会はインターネットで生中継され、何万人もが観戦すると見込まれている。


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(英語からの翻訳・西田英恵 編集・スイスインフォ)

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