ブログ「もっと知りたい!スイス生活」 トラウマ事件〜車で国境を越える


日本では経験しないことに、車での国境越えがあります。日本人家庭のわが家は、見よう見まね、痛い目にもあいながら、いろんなことを知りました。スイスでも場所によって様子が違うようですが、ティチーノ州とイタリア間の国境の通り方をご紹介します。

スイスとイタリアの国境の町、キアッソの駅。電車やバスなど、公共交通機関もすべて一度この町で停まって国境警察官のチェックを受けます

スイスとイタリアの国境の町、キアッソの駅。電車やバスなど、公共交通機関もすべて一度この町で停まって国境警察官のチェックを受けます

(swissinfo.ch)

 不惑の年を目前に始めたスイス生活ですが、新しく経験することがいろいろとあります。中でもいまだに緊張してしまうのは、車で国境を越えるときです。私たちはスイスとイタリアの国境近くに住んでいるので、買い物に、食事にと、日常的にスイスとイタリアを行き来していますが、日本から来たばかりのころは、シェンゲン協定(協定加盟国内は出入国審査なしで移動できる)内の移動はまったく未知のこと。どうすればよいのかまったく分かりませんでした。

国境の近くは撮影禁止のため遠景ですが、中央に旗が3本立っているところがスイスとイタリアの国境ゲートです

国境の近くは撮影禁止のため遠景ですが、中央に旗が3本立っているところがスイスとイタリアの国境ゲートです

(swissinfo.ch)

 スイスとイタリアの国境にはゲートがあって、数名の国境警察官が立っています。高速道路であっても、ここでは車の速度をできる限り落として警察官の前を1台ずつ通らなくてはいけません。自分の順番がきたら、運転席の窓を開けて警察官に「ボンジョルノ」と挨拶。窓を開けるのは決まりではないと思いますが、開けなかったら怒られたという友人がいるので、開けたほうがよさそうです。顔や車をチェックして問題なしと判断すれば、警察官は無言のまま、行きなさいと手で合図を送ります。合図を確認したら速度を上げてOK。イタリアに出国するときはスイス、イタリアの順、スイスに帰って来るときはイタリア、スイスの順にそれぞれの国のチェックを受けながら国境を通過します。

上の国境のイタリア側からの景色。大きな看板が2つ並んでいるところがゲートです。国境を越えたとたんに、街並みがガラリと変わるのも興味深いです

上の国境のイタリア側からの景色。大きな看板が2つ並んでいるところがゲートです。国境を越えたとたんに、街並みがガラリと変わるのも興味深いです

(swissinfo.ch)

 国境警察は、犯罪者や麻薬などの違法所持を取り締まっていて、彼らの判断で停車の指示が出されることがあります。この時は車を止めて職務質問に答えたり、さらに荷物検査を求められれば、脇の駐車スペースに移動して車内検査を受けたりします。私はパスポートや買い物袋の中身しかチェックされたことはありませんが、座席の下やダッシュボードなど徹底的に検査される人もいます。生活に関係することでいえば、お肉やアルコール類などには持ち込み量の制限があるので、注意しなくてはいけません。物価の安いイタリアで制限を超える買い物をして見つかった友人は、肉代よりも高い罰金を払ったそうです。

国境通過待ちの渋滞。先月起きたベルギーのテロ事件の後はチェックが厳しく、どこの国境も長い列になっていました

国境通過待ちの渋滞。先月起きたベルギーのテロ事件の後はチェックが厳しく、どこの国境も長い列になっていました

(swissinfo.ch)

 スイスの国境警察官は目つきが鋭くて体格のいい人が多く(腕なんて日本人男性の倍はありそう)、車の中を覗き込みながら低い声で質問されると、何も悪いことをしていないのにドキドキしてしまいます。逆にイタリア側はなんともリラックス。たいてい4、5人はその場にいるのですが、みんなで楽しくおしゃべりしながら横目でチェック。車の列に知り合いがいたら、そこでもおしゃべり。後ろの人たちは、ため息をつきながら待つはめになります。でもこれくらいはまだご愛嬌。国境を越えたい車が多くてひどい渋滞になっているのに、2レーンあるチェックゲートを1つしか開けないで楽しくおしゃべりしているのを見ると、さすがに頭にきてしまいます。

国境の駅にはこんな標識があります。駅で乗り継ぎをするときは、標識が示す検査場に必ず入って、警察官のチェックを受けなくてはいけません

国境の駅にはこんな標識があります。駅で乗り継ぎをするときは、標識が示す検査場に必ず入って、警察官のチェックを受けなくてはいけません

(swissinfo.ch)

 数えきれないほど国境を行き来しているというのに、いまだに緊張してしまうのには、実は理由があります。スイスに来てまだ日も浅いころのことです。警察官の前を通過しようとした時、車を止められて何か質問されました。イタリア語がまだよく分からなかったので、曖昧に適当に返事。行ってよしの合図を見て走り出したところ、後ろから大声が聞こえてきました。嫌な予感がして振り返ると、警察官が恐ろしい形相で追いかけてきている! 周囲の人たちもこちらを見ていて、国境ゲートは騒然。心臓が止まりそうなほど驚きました。

 どうやら私たちは、荷物検査をするから駐車スペースに移動しなさいと指示されたのに、手で前を示す動きだけを見て「行ってよし」 と勘違い。警察の指示に従わず国境を突破しようとした、とんでもない車になっていたのでした。慌てて引き返して悪意のないことを必死にアピールしたものの、警察官の顔は最後まで怖いまま。もう頭の中は真っ白、トラウマになるほど怖かったです。海外暮らしに勘違い事件はつきものですが、あんな恐ろしい出来事は二度とごめんだと思います。

奥山久美子

プロフィール:奥山久美子

神奈川県生まれ、福岡県育ち。都内の大学を卒業後、料理や栄養学を扱う出版社に就職。雑誌、書籍の編集業務に携わる。夫の転職に伴い、2012年からイタリア語圏ティチーノ州に住む。日本人の夫、思春期の息子2人の4人家族(+日本から連れてきた猫1匹)。趣味は旅行、読書、美味しいものを見つけること。



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